「2025年改正対応は済んでいますか?中小企業が今すぐ確認すべき育休・介護休暇制度の整備ポイント」

少子高齢化が進む日本では、育児や介護を理由とした離職は企業にとって深刻な損失です。特に中小企業では、一人の従業員の離職が事業継続に直結するケースも少なくありません。「制度はあるが使われていない」「法改正についていけない」「代わりの人員が見つからない」——そんな悩みを抱える経営者・人事担当者は多いのではないでしょうか。

育児・介護休業法(以下「育介法」)は2022年に大幅改正が施行され、2025年にもさらなる改正対応が求められています。制度を正しく整備・運用することは、法令遵守にとどまらず、優秀な人材の確保・定着、企業ブランド向上にも直結します。本記事では、中小企業の経営者・人事担当者が押さえるべき法律の要点から、実際の職場運営における実践ポイントまでを体系的に解説します。

目次

育児・介護休業法の最新改正ポイントを整理する

育介法は頻繁に改正が重なっており、「以前確認した内容がすでに古くなっている」というケースが多く見られます。まず現時点で押さえるべき法改正の要点を整理しましょう。

2022年改正で変わった主な内容

2022年10月に施行された改正育介法では、特に以下の点が実務に大きな影響を与えています。

  • 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設:子どもの出生後8週間以内に、最大4週間の育休を取得できる制度です。通常の育休とは別枠で取得でき、2回に分けて取ることも可能です。休業中に一定の条件のもとで就業できる点も特徴です。
  • 育休の分割取得:これまで原則1回だった育休が、2回に分けて取得できるようになりました。夫婦で交互に取得するなど、より柔軟な活用が可能になっています。
  • 個別周知・意向確認の義務化:従業員またはその配偶者が妊娠・出産を申し出た際、会社は育休制度の内容を個別に説明し、取得の意向を確認することが義務付けられました。全社一斉の周知だけでは法令要件を満たしません。
  • 有期雇用労働者の要件緩和:「引き続き1年以上雇用されていること」という取得要件が廃止され、パートや契約社員も原則として育休を取得できるようになりました。

2025年改正で対応が必要になること

2025年の改正では、さらに企業の対応範囲が広がる見込みです。主な注目点は以下の通りです。

  • 従業員300人超の企業への数値目標設定・公表義務:育休取得状況について数値目標を設定し、公表することが義務化される予定です。中小企業の中でも規模が大きい企業は早めの対応準備が必要です。
  • 育休取得の「原則化」の方向性:これまでの「申し出」ベースから、取得を前提とした制度設計へのシフトが方向性として示されています。
  • 介護における情報提供の義務化:従業員から介護の申し出があった際、両立支援制度を個別に周知することが義務化される方向です。育休と同様、介護においても「個別対応」が求められる時代になっています。
  • 介護目的のテレワーク努力義務化:介護離職防止の観点から、テレワーク環境の整備が努力義務として求められます。

就業規則の育児・介護休業規程が古いままになっている企業は、早急に現行法令との照合を行ってください。特に有期雇用・パートタイム労働者を対象に含める旨の明記、産後パパ育休への対応、申出様式の整備などが未対応のケースが多く見受けられます。

給付金・助成金を正しく理解して活用する

「助成金の種類が多すぎてどれを使えばいいかわからない」という声は中小企業の人事担当者から非常によく聞かれます。ここでは代表的な給付・助成の仕組みを整理します。

育児・介護に関する主な給付金

育児休業給付金は、雇用保険から支給される給付で、育休開始から180日間は賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。産後パパ育休(出生時育児休業)の期間中も、出生時育児休業給付金として67%が支給されます。受給要件として、雇用保険に加入していることが前提となります。

介護休業給付金は、介護休業を取得した場合に、対象家族1人につき通算93日を上限として、賃金の67%が支給されます。93日という日数は一見少なく感じるかもしれませんが、制度の趣旨は「介護の体制を整える期間」であり、長期的な就業継続のための準備期間として位置づけられています。

中小企業が活用できる助成金

両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は、中小企業が育休取得者を出した際や職場復帰を支援した際に活用できる助成金です。育休取得時と職場復帰時にそれぞれ支給要件があり、支給額は取得者の状況によって異なります。詳細な要件は厚生労働省のウェブサイトや最寄りの労働局で確認することをお勧めします。

キャリアアップ助成金との組み合わせにより、有期雇用労働者の処遇改善を図りながら両立支援を進めることで、費用負担を軽減できる場合もあります。助成金の活用は申請手続きの手間がかかるものの、特に人件費の余裕が限られる中小企業ほど積極的に活用を検討すべきでしょう。

「形骸化した制度」を実際に使われる制度に変える方法

制度が整備されていても「言い出しにくい雰囲気」が残っている職場では、実質的に制度が機能していません。この問題を解消するには、ルールの整備と職場文化の両面からアプローチする必要があります。

個別周知・意向確認を仕組みとして定着させる

法律上の義務である個別周知・意向確認は、担当者が変わっても対応が漏れないよう、チェックリストや標準様式として仕組み化することが重要です。妊娠・出産の申し出を受けたら、できれば2週間以内を目安に書面またはメールで制度説明を行い、取得意向を確認した記録を保管する流れを標準化してください。

ただし、意向確認は「取得を強要する」ものであってはなりません。取得を強制することも、ハラスメント(パタハラ・マタハラ)の一形態となりえます。あくまでも選択肢を丁寧に伝え、従業員が自分の意思で判断できる環境を整えることが目的です。

男性育休取得を促進する具体的なアプローチ

男性の育休取得率は近年上昇傾向にあるものの、中小企業では依然として低い水準にとどまっているケースが多く見られます。「上司が取っていないから言い出せない」「職場に悪いと思って遠慮している」という声は、制度の問題ではなく職場文化の問題です。

有効なアプローチとして、管理職・経営者自身が育休への理解を明示することが挙げられます。社内メッセージや会議での一言が、従業員の心理的ハードルを大きく下げることがあります。また、育休取得者の体験談を社内で共有することも、「自分も取れる」という雰囲気の醸成に役立ちます。

就業規則のハラスメント防止規程には、マタハラ(マタニティハラスメント)・パタハラ(パタニティハラスメント)・ケアハラ(ケアハラスメント)を明示することで、制度利用を妨げる言動が許容されないという組織の意思を明確に示すことができます。

中小企業が直面しやすい「業務継続」の問題を解決する

中小企業にとって最も切実な課題のひとつが、育休・介護休業取得者が出た際の業務継続です。「人手が足りなくて、正直なところ休まれると困る」という本音は多くの経営者が持っています。しかし、この問題を放置すると、制度が形骸化するだけでなく、残った従業員への負担増加、職場の不満蓄積、さらには離職連鎖という悪循環に陥るリスクがあります。

業務の棚卸しと引継ぎ計画の標準化

休業が決まった段階で、担当業務の棚卸しと引継ぎ計画を作成することを、会社として標準的なプロセスにしましょう。個人の善意や努力に依存するのではなく、「育休・介護休業が決まったら、まずこのシートを使って業務整理を行う」という手順を確立することで、誰が担当者になっても一定の品質で引継ぎが行えます。

また、復職前には職場復帰支援面談を行うことを標準化してください。長期休業後の従業員が戸惑わずに業務に戻れるよう、復帰時点の業務状況や職場の変化を事前に共有する場を設けることが重要です。

代替要員の確保策を複数パターン想定する

代替要員の確保方法は、あらかじめ複数のパターンを検討しておくことが現実的です。主な選択肢としては、派遣社員の活用、退職したOB・OGへの声がけ、業務の再配分、外部委託の一部拡大などが考えられます。どの方法がベストかは業種・職種・規模によって異なりますが、「その都度考える」ではなく「選択肢を事前に持っておく」姿勢が業務継続のカギです。

加えて、フォローに回った他の従業員への配慮も欠かせません。追加の手当や評価への反映など、負担に見合った処遇を設計しなければ、支援する側の不満が蓄積し、職場全体の雰囲気が悪化します。「育休を取りやすい職場」は「サポートした人も報われる職場」であることが前提です。

「ダブルケア」への対応も視野に入れる

近年注目されている課題として、育児と介護を同時に担う「ダブルケア」状態の従業員への対応があります。30代後半から40代の従業員は、育児をしながら親の介護が始まるという状況に直面するケースが増えています。育休と介護休業が重なる可能性も想定した上で、制度設計と個別対応の準備を進めておくことが求められます。

このような複合的なストレスを抱える従業員のメンタルケアには、専門的なサポートが有効です。社内に相談窓口を設けるだけでなく、外部の専門機関による継続的なカウンセリング支援としてメンタルカウンセリング(EAP)の導入を検討することも、従業員の就業継続を支える選択肢のひとつです。

制度整備・運用の実践ポイントまとめ

ここまでの内容を踏まえ、中小企業が育休・介護休暇制度を実際に機能させるための実践ポイントを整理します。

  • 就業規則の定期的な見直しを行う:育児・介護休業規程は別規程として整備し、法改正のたびに更新する仕組みを持つことが重要です。有期雇用・パートタイム労働者を対象に含める旨の明記、産後パパ育休・分割取得への対応、ハラスメント防止規程の整備が現時点での主な確認ポイントです。
  • 個別周知・意向確認を標準化する:妊娠・出産・介護の申し出を受けたら、標準化されたチェックリストと様式を使って迅速に対応し、確認記録を保管する。担当者の異動があっても対応が途切れない体制を作ることが大切です。
  • 給付金・助成金を積極的に活用する:育児休業給付金、介護休業給付金、両立支援等助成金などの制度を把握し、要件を確認した上で申請を行うことで、会社・従業員双方の経済的負担を軽減できます。
  • 業務継続のプロセスを事前に設計する:引継ぎ計画・代替要員確保・復職支援の流れを標準化し、育休・介護休業が「例外的な対応」ではなく「想定された通常の出来事」として処理できる体制を整えます。
  • 職場文化の改善を継続的に行う:制度の整備だけでは不十分です。管理職の理解促進、ハラスメント防止の明文化、取得者の体験共有など、「使いやすい雰囲気」を作る取り組みを継続してください。

健康・メンタル面での支援体制についても、制度と並行して整備することをお勧めします。育休・介護休業に関わる従業員は、身体的・精神的に負荷がかかりやすい状況にあります。産業医サービスを活用することで、休業前後の健康管理や職場復帰支援を専門的な視点からサポートする体制を構築できます。

まとめ

育休・介護休暇制度の整備と運用は、法令遵守の問題であると同時に、人材の確保・定着・生産性向上に直結する経営課題です。中小企業だからこそ、一人ひとりの従業員が長く活躍できる環境を作ることの価値は大きく、制度への投資は将来的な採用コストや離職コストの削減につながります。

「制度はあるが使われていない」状態を放置せず、就業規則の見直し、給付・助成金の活用、業務継続の仕組み化、職場文化の改善という4つの軸から、段階的に取り組みを進めてください。2025年改正への対応も控えている中、今が制度を根本から見直す好機です。

よくある質問(FAQ)

産後パパ育休と通常の育休はどう違うのですか?

産後パパ育休(出生時育児休業)は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間取得できる制度で、2022年10月に新設されました。通常の育児休業とは別枠で取得でき、2回に分けて取ることも可能です。また、労使協定を締結すれば休業中に一定の就業もできます。通常の育休(子が原則1歳まで)と組み合わせて利用できるため、男性が育児に関わる期間を柔軟に設計できる制度として注目されています。

中小企業でも育休取得率の公表は義務ですか?

現時点(2024年)では、育休取得率の公表義務は従業員1,000人超の企業に課されています。ただし、2025年の改正により従業員300人超の企業にも数値目標の設定と公表が義務化される方向で検討が進んでいます。中小企業の多くは現時点では義務対象外ですが、法改正の動向を注視しつつ、自社の取得実績を把握・改善しておくことが将来的な対応に備えるためにも有効です。

介護休業の93日間では足りない場合はどうすればよいですか?

介護休業の93日間は、「長期介護のために仕事を休む」ためではなく、「介護体制を整えるための準備期間」として設計されています。93日を超えた継続的な対応のためには、介護休暇(年5日・時間単位取得可)、所定外労働の制限、時短勤務などの制度を組み合わせて活用することが現実的です。また、ダブルケアなど複合的な事情を抱える従業員には、個別面談を通じた柔軟な対応と、EAP(従業員支援プログラム)などの外部支援の活用も検討してください。

監修・運営:INTERMIND株式会社

産業医紹介・EAPサービス(外部メンタルカウンセリング)を提供する産業保健の専門会社。精神科専門医・心理士・保健師からなるスペシャリストチームが、中小企業の職場メンタルヘルス課題を支援しています。

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