「中小企業の8割が知らない!勤務時間管理システム導入で残業代ゼロ申告・36協定違反を一気に解決する方法」

タイムカードでの管理がそろそろ限界だとは感じているが、システムを入れるほどではないかもしれない」「クラウドの勤怠システムを検討しているが、何を基準に選べばよいかわからない」——中小企業の経営者や人事担当者から、こうした声を聞く機会が増えています。

近年、働き方改革関連法の施行や労働安全衛生法に基づく労働時間把握義務の強化により、勤務時間管理システムの導入は「あれば便利なツール」から「法令対応のための必要インフラ」へと位置づけが変わってきました。にもかかわらず、中小企業では担当者の不足やコスト面の不安から、導入に踏み切れないケースが少なくありません。

本記事では、勤務時間管理システムの導入を検討している中小企業の経営者・人事担当者に向けて、法令上の要件を整理したうえで、システム選定から日常運用まで実務的な視点で解説します。

目次

なぜ今、勤務時間管理システムの導入が求められるのか

まず、勤務時間管理の法令上の位置づけを確認しておきましょう。

労働安全衛生法第66条の8の3は、使用者に対し、客観的な方法による労働時間の把握を義務づけています。具体的には、タイムカード・ICカード・パソコンのログ記録などによる記録が求められており、本人の自己申告のみによる管理は原則として認められていません。

また、厚生労働省が2017年に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも、始業・終業時刻の確認と記録を使用者が責任を持って実施することが明記されています。紙の出勤簿への自己記入や、Excel上での本人入力だけでは、このガイドラインの要件を満たすことが難しい状況です。

さらに、労働基準法第109条では、賃金台帳・出勤簿などの労働関係書類について5年間の保存義務が定められています(当面の間は3年間の経過措置あり)。管理が属人化していたり、データが分散していたりすると、この保存義務を果たすことも困難になります。

こうした法的背景を踏まえると、勤務時間管理システムの導入は、企業規模を問わず対応が求められる課題です。

中小企業が直面する勤務時間管理の具体的な課題

中小企業において、勤務時間管理が適切に機能していない場面には、いくつかの共通したパターンがあります。

管理方法の混在と情報の分散

本社はタイムカード、営業部門はExcel、パート・アルバイトは紙の出勤簿——このように複数の管理方法が混在しているケースは珍しくありません。情報が分散していると、月末の集計作業に多大な工数がかかるうえ、転記ミスや集計漏れのリスクも高まります。給与計算システムとの連携ができていなければ、二重入力の手間も発生します。

多様な働き方への対応不足

テレワーク・直行直帰・外勤が一般化した現在、オフィスでのタイムカード打刻を前提とした管理では実態を正確に把握できません。「在宅勤務の開始・終了時刻をどう記録するか」「直行した場合の打刻はどうするか」といった運用ルールが整備されていないと、労働時間の把握そのものが曖昧になってしまいます。

残業時間の上限規制への対応漏れ

労働基準法第36条(いわゆる36協定)では、時間外労働の上限について、原則として月45時間・年360時間、特別条項を設けた場合でも年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内という上限が罰則付きで定められています。しかし、勤怠データをリアルタイムで把握できていないと、上限に近づいている従業員を見落とすリスクがあります。

また、2023年4月からは中小企業においても、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられています(それ以下は25%以上)。割増賃金の計算を正確に行うためにも、労働時間データの正確な管理が不可欠です。

年次有給休暇の管理漏れ

労働基準法第39条に基づき、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、使用者が年5日以上の有給休暇を取得させる義務があります(2019年4月施行)。この義務を果たしているかどうかを把握するためには、個人別の取得状況を継続的に管理する仕組みが必要です。Excel管理では見落としが生じやすく、義務違反のリスクが高まります。

勤務時間管理システムの選び方——中小企業が重視すべきポイント

市場にはさまざまな勤務時間管理システムが存在します。機能や価格帯も幅広いため、自社の状況に合ったシステムを選ぶことが重要です。以下に、中小企業が特に重視すべき選定基準を整理します。

自社の勤務形態との適合性

固定時間制・フレックスタイム制・変形労働時間制・シフト制など、自社が採用している勤務形態すべてに対応しているかを確認することが最優先事項です。テレワークが含まれる場合は、スマートフォンからのモバイル打刻やGPS連動機能の有無も確認しておきましょう。

既存システムとの連携

勤怠管理で収集したデータを給与計算システムや会計ソフトに自動連携できるかどうかは、導入後の運用効率に直結します。連携ができない場合、毎月の給与計算時に手動での転記作業が発生し、ミスのリスクも高まります。自社が現在使用しているソフトとの連携実績を事前に確認してください。

クラウド型を基本に検討する

システムには大きく「クラウド型」と「オンプレミス型(自社サーバーにインストールするタイプ)」があります。中小企業においては、初期費用が低く抑えられ、法令改正への対応も自動アップデートで行われるクラウド型が現実的な選択肢です。月額費用は従業員数に応じた課金形式が多く、数百円〜数千円/人程度の製品が一般的です。

サポート体制の充実度

IT専任担当者が不在の中小企業では、導入後に操作上の疑問が生じた際に相談できる窓口があるかどうかが重要です。電話・メール・チャットなど複数の問い合わせ手段があるか、対応時間帯は自社の業務時間と合っているかを確認しておきましょう。

無料トライアルで現場の声を確認する

機能仕様の比較だけではなく、実際に現場の担当者や従業員が使いやすいかどうかを検証することが不可欠です。多くのクラウド型システムは無料トライアルを提供しています。経営者・人事担当者だけでなく、実際に打刻する一般従業員や、勤怠データを確認する管理職にも試用してもらい、使いやすさを評価したうえで判断することをお勧めします。

導入時に失敗しないための準備と進め方

システムを選定・契約しても、導入プロセスを誤ると現場での定着に失敗するケースがあります。スムーズな導入のために、以下の準備と手順を参考にしてください。

就業規則・運用ルールの棚卸しを先に行う

システム導入の前に、現在の就業規則や雇用契約書と実際の運用状況の間にズレがないかを確認してください。たとえば、「就業規則では8時半始業とされているが、実態は8時から業務を開始している」といった乖離があると、システムで正確な労働時間を記録した瞬間に法令違反が顕在化することがあります。システム導入をきっかけに、労務実態の整備を行うことが重要です。

段階的な導入でリスクを最小化する

全社一斉への切り替えは、操作習熟が追いつかず混乱を招く可能性があります。まず特定の部署や拠点でパイロット運用を行い、課題を洗い出してから全社展開する段階的アプローチが望ましいといえます。

従業員への丁寧な説明と研修

勤怠管理システムの導入に対して、従業員が「会社に監視されるのではないか」という不安を感じるケースがあります。導入の目的が「正確な労働時間の把握による適切な賃金支払いと健康管理にある」ことを丁寧に説明し、ネガティブな印象を払拭することが定着への近道です。また、研修内容は管理職向けと一般従業員向けで分けて実施することで、それぞれの役割に応じた理解を促しやすくなります。

日常運用で押さえておきたい実践ポイント

システムを導入しただけでは、法令対応は完結しません。適切な日常運用を継続することが、法的リスクの回避と従業員の健康保護につながります。

アラート機能を積極的に活用する

多くの勤務時間管理システムには、残業時間が設定した閾値(しきいち)を超えた際に管理職や人事担当者へ自動通知する機能が備わっています。たとえば「月の残業時間が40時間に達したら警告」「80時間を超えたら人事担当者にも通知」といった設定を行うことで、36協定の上限規制への違反リスクを早期に把握できます。有給休暇の取得日数が少ない従業員へのリマインド機能も活用しましょう。

打刻忘れの申請・承認フローを整備する

どのシステムを使っても、打刻忘れをゼロにすることは困難です。打刻を忘れた場合の修正申請方法と承認フローを明確に定め、就業規則または内規に記載しておくことが重要です。また、修正申請が多発している従業員や時間帯がある場合は、操作方法の再確認や業務フローの見直しが必要なサインである可能性があります。

管理職の役割を明確に定義する

勤怠データはシステムが自動集計しますが、そのデータを確認して適切な対応を取るのは人間の役割です。週次・月次での勤怠データ確認を管理職の業務として明確に位置づけ、異常値が確認された場合には速やかに対応する体制を整えてください。「システムを入れたから問題ない」という認識は誤りであり、データを活用した管理職の積極的な関与が不可欠です。

勤怠データを健康管理・業務改善に活用する

勤怠データは、給与計算だけでなく、従業員の健康管理や組織改善にも活用できます。残業時間が慢性的に多い部署や個人を特定することで、業務量の偏りや人員不足を早期に発見できます。月80時間を超える時間外労働が続いている従業員は、過重労働による健康障害のリスクが高まるとされています。このようなケースでは、産業医サービスと連携し、産業医による面接指導(労働安全衛生法に基づく義務)を適切に実施することが重要です。

また、有給消化率の可視化により、計画的な休暇取得を促進できます。メンタルヘルス不調の兆候として、有給休暇の急激な増加や欠勤の増加が現れることがあります。勤怠データの変化を早期に察知し、メンタルカウンセリング(EAP)などの支援につなげる仕組みを整えることも、現代の労務管理において重要な視点です。

定期的なデータ監査を実施する

システムに記録されているデータと実態の間に乖離がないかを定期的に確認する「労務監査」の仕組みを設けることをお勧めします。たとえば、終業打刻後にパソコンのログが長時間残っているケースや、深夜の電気使用記録と退社時刻が大きくずれているケースは、「サービス残業(賃金不払い残業)」が発生している可能性を示唆します。複数のデータを照合する習慣が、法令違反の未然防止につながります。

まとめ

勤務時間管理システムの導入は、コストや手間がかかるという印象から後回しにされがちです。しかし、労働安全衛生法・労働基準法・働き方改革関連法が求める客観的な労働時間管理の義務は、企業規模にかかわらず適用されます。紙・タイムカード・Excelによる管理では、法令の要求水準を満たすことが難しくなってきているのが現状です。

システム選定においては、自社の勤務形態への適合性・既存システムとの連携・サポート体制を優先的に確認し、無料トライアルで現場の声を確かめてから判断することが大切です。また、導入前には就業規則と実態のズレを整理し、従業員への丁寧な説明と研修を行うことで、定着率を高めることができます。

そして最も重要なのは、システムはあくまでツールであり、データを活用して管理職が適切に関与することで初めて実効性が生まれるという点です。勤怠データを通じた健康管理・業務改善の取り組みを、人事・産業保健の視点と組み合わせながら継続的に推進していくことが、持続可能な職場環境の構築につながります。

よくある質問(FAQ)

勤務時間管理システムを導入しなくても法令違反にはならないのでしょうか?

労働安全衛生法第66条の8の3では、使用者にタイムカードやICカード、PCログなど客観的な方法による労働時間の把握が義務づけられています。本人の自己申告のみによる管理は原則として認められておらず、システムの導入に関わらず、客観的な記録手段を用意することが法的に求められます。紙のタイムカードや打刻機を適切に運用しているのであれば直ちに違法とはなりませんが、管理の正確性・保存義務への対応・給与計算との連携を考慮すると、クラウド型のシステム導入が現実的な対応策といえます。

勤怠データはどのくらいの期間、保存する義務がありますか?

労働基準法第109条では、賃金台帳・出勤簿などの労働関係書類について5年間の保存義務が定められています。ただし、現時点では当面の間3年間の経過措置が設けられています。クラウド型の勤怠管理システムを利用している場合、データはシステム上に自動保存されますが、契約解除や事業者の倒産などに備えて、定期的なデータバックアップや自社での保管手段を確保しておくことをお勧めします。

テレワーク中の労働時間管理はどのように行えばよいですか?

テレワーク中も、客観的な方法による労働時間の把握義務は変わりません。スマートフォンやパソコンからアクセスできるクラウド型の勤怠システムを活用することで、在宅勤務時の始業・終業打刻が可能になります。加えて、パソコンのログイン・ログオフ記録を補完的な記録として活用し、打刻時刻との大きな乖離がないかを定期的に確認することが望ましいとされています。また、テレワーク時の労働時間管理に関するルールを就業規則またはテレワーク規程として明文化しておくことも重要です。

監修・運営:INTERMIND株式会社

産業医紹介・EAPサービス(外部メンタルカウンセリング)を提供する産業保健の専門会社。精神科専門医・心理士・保健師からなるスペシャリストチームが、中小企業の職場メンタルヘルス課題を支援しています。

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