外国人を採用したい中小企業必読!在留資格の確認から給与計算まで、受け入れ手続きと労務管理を徹底解説

少子高齢化が進む日本では、外国人労働者の受け入れが多くの中小企業にとって現実的な経営課題となっています。厚生労働省の調査によると、外国人労働者数は年々増加しており、その雇用の場は大企業だけでなく中小企業にも広がっています。しかし、「どの在留資格が自社の業務に合っているのかわからない」「在留カードの確認方法が不安」「外国人社員への労務管理をどう進めればよいか」という声は後を絶ちません。

手続きのミスや管理体制の不備は、最悪の場合、不法就労助長罪として企業が刑事罰を受けるリスクにもつながります。本記事では、中小企業の経営者・人事担当者の方々が外国人労働者を適切に受け入れるための手続きと労務管理の基本を、法令の要点を踏まえながら解説します。

目次

在留資格の基本:採用前に必ず確認すべきこと

外国人労働者を雇用する際、最初に押さえておくべきなのが在留資格(ビザの種類)です。在留資格とは、外国人が日本に滞在し、行うことができる活動の範囲を定めたもので、現在30種類以上が設けられています。重要なのは、在留資格によって「どのような仕事ができるか」が厳格に決まっているという点です。

中小企業が特に関わる機会の多い在留資格には、以下のものがあります。

  • 技術・人文知識・国際業務:IT、翻訳・通訳、貿易、経営企画など、いわゆるホワイトカラー系の専門職。大学や専門学校での専攻と業務内容の関連性が審査される。
  • 特定技能1号・2号:製造業、飲食料品製造、介護など人手不足が深刻な分野を対象とした制度。技能試験と日本語試験の合格が原則必要。
  • 育成就労(新制度):これまでの技能実習制度は2024年に廃止が決まり、2027年を目途に育成就労制度へ移行予定。転籍制限が緩和される見込みで、労働者側の権利保護が強化される。
  • 永住者・定住者・日本人の配偶者等:就労制限がなく、どのような職種でもフルタイムで働ける。採用企業にとっては手続き上の制約が少なく、扱いやすい在留資格といえる。

採用候補者がいる場合、まずその方の在留カードに記載されている在留資格と、「就労可」「就労不可」「資格外活動許可」の区分を確認してください。「就労不可」と記載がある場合は原則として働かせることができず、資格外活動許可がある場合(留学生など)は週28時間以内という上限が設けられています。この上限を超えると、雇用した企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。

在留カードの確認と雇用時の書類手続き

採用が決まった後、最初の実務作業が在留カードの真正性確認と各種届出です。在留カードは外国人の在留資格・期限・就労可否を証明する公的書類ですが、偽造カードが流通しているケースも報告されています。

在留カードの確認方法

出入国在留管理庁(入管)が提供するスマートフォンアプリ「在留カード等読取アプリケーション」を活用すると、在留カードのICチップを読み取り、記載情報と照合することができます。目視での確認と合わせてアプリを利用することで、偽造カードのリスクを大きく減らすことができます。確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 在留資格の種類と有効期限
  • 就労制限の有無(カード裏面に記載)
  • 資格外活動許可のスタンプの有無
  • ICチップの読み取り結果と表面記載内容の一致

ハローワークへの届出義務

外国人を雇い入れた場合、および離職させた場合には、外国人雇用状況届出制度に基づきハローワークへの届出が義務付けられています(雇用保険被保険者の場合は雇用保険の取得・喪失手続きが届出を兼ねる)。届出期限は雇入れまたは離職の翌月末日までです。未届・虚偽の届出には30万円以下の罰金が科される場合があるため、入社・退社の手続きと合わせて必ず対応してください。

労働条件通知書の多言語対応

労働基準法第3条は「国籍を理由とした差別的取扱いの禁止」を定めており、外国人労働者にも日本人と同等の労働条件が保障されなければなりません。労働条件通知書(雇用契約書)は、外国人労働者が内容を正しく理解できるよう、母国語または理解できる言語での提供が望ましいとされています。厚生労働省のウェブサイトでは、英語・中国語・ポルトガル語など複数言語の労働条件通知書テンプレートが無償公開されていますので、積極的に活用しましょう。

特定技能制度を活用する際の受入機関の義務

製造業・飲食料品製造・介護などの分野で人手不足が課題となっている中小企業にとって、特定技能制度は有力な選択肢です。ただし、特定技能外国人を受け入れる企業(受入機関)には、通常の雇用とは異なる支援義務が課せられています。これを正しく理解しておかないと、制度の利用自体ができなくなったり、後から大きな負担が生じたりする可能性があります。

受入機関が実施すべき主な支援内容

  • 生活オリエンテーション:日本の法律、生活習慣、公共交通機関の利用方法などを入国後に説明する。
  • 住居確保・銀行口座開設支援:来日直後の外国人が生活基盤を整えられるよう企業がサポートする義務がある。
  • 定期面談(3ヶ月に1回以上):就労状況や生活環境に問題がないかを定期的に確認し、行政機関に報告する。
  • 相談・苦情対応体制の整備:外国人労働者が困ったことを相談できる窓口を設ける。
  • 転職支援:企業側の都合による離職が発生した場合、次の就職先探しをサポートする。

これらの支援業務を自社で担うことが難しい場合、登録支援機関(入管から登録を受けた民間機関)に委託することが認められています。費用は機関によって異なりますが、1人あたり月額2万〜5万円程度が相場とされています。コストはかかりますが、担当者が異動・退職した際の引き継ぎリスクを軽減できるメリットもあります。

外国人労働者の日常的な労務管理と文化的配慮

採用・入社後の労務管理では、日本人社員と同じルールを適用するだけでなく、言語・文化・宗教の違いへの配慮が求められます。この点への対応が不足していると、コミュニケーション不全やハラスメントトラブル、そして早期離職につながりやすくなります。

言語コミュニケーションへの対応

業務上の指示が正確に伝わらないことで生じるミスや事故は、外国人労働者の受け入れで最もよく発生するトラブルの一つです。対策として以下のような取り組みが有効です。

  • 作業手順書やマニュアルをやさしい日本語(平易な表現・短文)または多言語で作成する
  • 重要な連絡事項は口頭だけでなく文字(テキスト・掲示物)でも伝える
  • 自治体や国が提供する多言語コールセンターを緊急時の連絡手段として共有しておく
  • 安全教育は労働安全衛生法の趣旨に基づき、母国語等で実施することが推奨されている

宗教・文化的な配慮

イスラム教を信仰する労働者であれば、1日5回の礼拝時間の確保やハラール(イスラム法に則った食事)への配慮が必要になる場合があります。また、国や宗教によって祝祭日が異なることもあります。すべての要望に応えることが難しい場合でも、「配慮する姿勢を見せること」が信頼関係の構築につながります。採用前に「どのような配慮が必要か」を丁寧にヒアリングし、企業として対応可能な範囲を明確にしておくとよいでしょう。

給与・社会保険・税金の説明

外国人労働者から「給与から何が引かれているかわからない」という声はよく聞かれます。最低賃金法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金保険法は、国籍・在留資格にかかわらず原則として日本人と同様に適用されます(一部の国とは社会保障協定が結ばれており、保険料の二重払い免除措置があります)。給与明細の項目を多言語で説明する資料を用意したり、社会保険の仕組みを図解したりすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

メンタルヘルスと孤立への対応

異国での生活は、言語の壁・生活習慣の違い・家族との距離などから、精神的な負荷が大きくなりがちです。孤立が深刻化すると失踪・突然の退職につながることもあります。定期的な面談を形式的にこなすだけでなく、「困ったことはないか」という声かけを日常的に行うことが、早期発見・早期対応のカギとなります。地域の外国人相談窓口や多文化共生センターの情報を事前に把握しておくことも有効です。

受け入れ体制を整えるための実践ポイント

ここまでの内容を踏まえ、中小企業が今日から着手できる実践的な取り組みをまとめます。

1. 在留資格・在留期限の管理台帳を整備する

在留カードの有効期限を一覧で管理できる台帳(ExcelやGoogleスプレッドシートで十分)を作成し、期限の3ヶ月前にアラートが上がる仕組みを設けましょう。担当者が異動・退職しても引き継ぎができるよう、管理ルールを文書化しておくことが重要です。

2. 入社時のチェックリストを標準化する

外国人労働者の入社時に確認・対応すべき事項(在留カードの確認、ハローワーク届出、社会保険加入、住民票確認、雇用契約書の交付など)をチェックリスト化し、抜け漏れを防ぎます。厚生労働省や出入国在留管理庁のウェブサイトには活用できる資料が多数公開されています。

3. 登録支援機関・専門家との連携を検討する

特定技能制度を活用する場合は登録支援機関への委託を検討し、在留資格の申請・更新については行政書士、労務管理については社会保険労務士への相談を視野に入れましょう。自社だけで対応しようとすると、担当者への負担が集中するリスクがあります。

4. 日本人社員への理解促進も忘れない

外国人労働者を迎える際、日本人社員への説明・教育も不可欠です。文化・宗教の違いについての基本的な説明、コミュニケーションの工夫などを共有することで、職場内の摩擦を減らし、お互いが働きやすい環境をつくることができます。

まとめ

外国人労働者の受け入れは、在留資格の正確な理解・各種届出の徹底・継続的な労務管理という三つの柱で成り立っています。どれか一つが欠けても、法的リスクや離職トラブルに発展する可能性があります。

一方で、適切な受け入れ体制を整えれば、外国人労働者は中小企業にとって貴重な戦力となり、企業の成長を支える存在になります。最初から完璧な体制を目指す必要はありません。まずは在留カードの確認方法を習得し、管理台帳を作成し、ハローワーク届出のルールを社内に徹底するという基本的なステップから始めてください。

制度は頻繁に改正されます。技能実習から育成就労への移行のように、大きな制度変更も控えています。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式ウェブサイトや、専門家(行政書士・社会保険労務士)を通じて定期的に確認することをお勧めします。外国人労働者と企業が互いに信頼し合える職場環境づくりが、長期的な人材定着と企業発展への近道です。

よくある質問

Q1: 在留カードに「資格外活動許可」と書かれている場合、その外国人をフルタイムで雇用することはできますか?

いいえ、できません。資格外活動許可がある場合(留学生など)は週28時間以内という上限が設けられており、この上限を超えると雇用した企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。

Q2: 在留カードが偽造されている可能性があるという話ですが、偽造を見分けるにはどうすればよいですか?

出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」を利用してICチップを読み取り、記載情報と照合することが有効です。目視での確認と合わせてアプリを使用することで、偽造カードのリスクを大きく減らすことができます。

Q3: 外国人労働者を採用した場合、必ずハローワークに届け出る必要がありますか?

はい、必ず届け出る必要があります。外国人雇用状況届出制度に基づき、雇用保険被保険者でない場合は別途届出が義務付けられており、期限は雇入れ翌月末日までです。未届や虚偽の届出には30万円以下の罰金が科される場合があります。

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