「2025年最新】無期転換制度、対応しないと罰則も?中小企業が今すぐ確認すべき7つのチェックリスト

「うちの会社には関係ない」と思っていた有期雇用の無期転換制度が、気づけば自社の足元に迫っている——そんな状況に直面している中小企業の経営者・人事担当者は少なくありません。パート、アルバイト、契約社員など複数の雇用形態が混在する職場では、誰がいつ申し込み権を得るのかの把握だけでも一苦労です。

加えて、無期転換を避けようと安易に雇い止めをすれば法的リスクを招き、転換後の処遇設計を誤れば同一労働同一賃金の問題が浮上する。経営者・人事担当者にとって、この制度への対応は「知っているだけで終わらせてはいけない実務課題」です。

本記事では、労働契約法第18条に基づく無期転換制度の基本から、中小企業が押さえるべき実務対応まで、順を追って解説します。

目次

無期転換制度とは何か:基本ルールの整理

無期転換制度は、2013年4月1日に施行された労働契約法第18条に基づくルールです。一言で言えば、「同じ会社で有期労働契約を通算5年超続けた労働者は、本人が申し込めば無期雇用に転換できる」というものです。

ポイントをまとめると以下のとおりです。

  • 発生要件:同一の使用者(会社)との有期労働契約が通算5年を超えること
  • 申込権の発生:5年を超えた契約期間中に、労働者が申し込むことができる
  • 効力:申し込みがあれば、使用者は拒否できない
  • 転換後の条件:別段の定めがない限り、転換直前の契約と同一条件が継続される

通算期間のカウントは、2013年4月1日以降に締結・更新した契約から始まります。また、契約と契約の間に一定の空白(クーリング期間)があるとカウントがリセットされる仕組みもあります。クーリング期間の長さは、直前の有期契約期間が1年以上の場合は6か月以上、1年未満の場合は「契約期間×2分の1以上」が基準となっています。ただし、クーリング期間の意図的な活用は法的リスクを伴うため、後述のとおり慎重な判断が必要です。

なお、一部の場面では例外規定(特例制度)も設けられています。年収1,075万円以上で高度な専門知識を持つ「高度専門職」や、定年後に引き続き雇用される「定年後再雇用者」については、都道府県労働局長への計画認定申請を経ることで、無期転換ルールの適用外とすることが可能です。この特例を活用する場合は、申請手続きを事前に確認してください。

中小企業が見落としがちな「対象者管理」の落とし穴

制度の概要を理解していても、「自社に何人の対象者がいるか」「いつ申込権が発生するか」を把握できていない企業は多くあります。特に、パート・アルバイト・契約社員・定年後再雇用者が混在する職場では、個別の契約状況を一元管理するだけでも手間がかかります。

管理台帳の整備が最初の一歩

まず着手すべきは、全有期雇用者の「契約開始日・更新歴・通算期間」を一覧化した管理台帳の作成です。高度なシステムは必須ではなく、Excelで管理している企業も少なくありません。重要なのは以下の項目を把握することです。

  • 最初の有期契約の開始日(2013年4月1日以降のもの)
  • 更新回数と各契約の期間
  • 通算契約期間の合計
  • 5年到達の見込み時期

5年到達の見込み時期をあらかじめ把握しておき、半年前・1年前などにアラートが上がる仕組みを作っておくと、対応の属人化を防ぐことができます。

派遣社員の扱いに注意

派遣社員については、無期転換ルールの対応主体は派遣元企業であり、派遣先企業である自社が直接関与するケースは限られます。ただし、派遣社員を直接雇用に切り替える場合は、その時点から有期雇用者として改めて通算期間がカウントされる点に留意が必要です。

無期転換後の処遇設計:「別区分」を設けることは可能か

無期転換制度への対応を検討する際、多くの経営者が最初に疑問に思うのが「転換後の処遇をどうするか」という点です。結論からいえば、「無期転換社員」という独自の区分を設けることは法律上認められており、正社員と同一処遇にする必要はありません。

ただし、「別区分を設けてよい」ということと「どんな処遇格差でも許容される」ということは別です。パートタイム・有期雇用労働法(2021年4月から中小企業にも全面適用)により、不合理な待遇差は法律違反となります。

処遇設計の3つの選択肢

実務上、転換後の労働条件の設計には主に次の3パターンが考えられます。

  • 現状維持型:転換前と同一の条件(賃金・労働時間など)のままで無期雇用とする
  • 正社員登用型:転換を機に正社員と同等の処遇へ引き上げる
  • 限定正社員型:職務・勤務地・労働時間を限定した「無期雇用」として区分を新設する

どのパターンを選ぶにせよ、転換後の労働条件を就業規則に明記することが不可欠です。就業規則への記載が「別段の定め」として機能し、転換後の条件を明確化します。就業規則の整備が不十分な場合、転換前の契約条件がそのまま引き継がれるだけでなく、後から労使間のトラブルに発展するリスクがあります。

また、同一労働同一賃金の観点から、基本給・賞与・手当・福利厚生など各処遇について「正社員との差がなぜ生じているか」を説明できる根拠を整理しておくことが重要です。説明が困難な格差は早急に是正を検討してください。

「雇い止め」は解決策にならない:法的リスクを正しく理解する

無期転換を回避したいという気持ちから、「5年に到達する前に契約を更新しない(雇い止めにする)」という対応を考える経営者もいます。しかし、この方法は法的リスクが非常に高く、得策とは言えません。

労働契約法第19条(雇い止め法理)は、反復更新によって「この会社に雇用され続ける合理的な期待」が生じている場合、客観的・合理的な理由のない雇い止めを無効とする規定です。長期にわたって更新を繰り返してきた労働者に対して、無期転換を避けることだけを目的に雇い止めをした場合、裁判や労働審判で「雇い止めは無効」と判断されるリスクが極めて高くなります。

さらに言えば、無期転換回避を目的とした雇い止めは、労働者の権利を侵害する行為として行政指導の対象にもなりうります。問題が表面化した際の企業イメージへの影響も無視できません。

雇い止めリスクとの向き合い方は、「避けること」ではなく、「適切な処遇設計と制度整備を通じて、無期転換を円滑に受け入れる体制を整えること」です。

2024年4月以降の明示義務:見落としがちな書類整備のポイント

2024年4月の労働基準法施行規則の改正により、有期雇用労働者への契約締結・更新時における明示事項が拡充されました。中小企業の人事担当者は特に注意が必要な項目です。

新たに義務化された明示内容

  • 通算契約期間または更新回数の上限(設ける場合)
  • 無期転換申込権が発生する旨
  • 転換後の労働条件

これらは口頭での説明だけでは不十分であり、雇用契約書や労働条件通知書に明記することが実務上の基本です。また、契約更新の有無についても「更新しない」「更新する場合がある」「更新する」のいずれかを明確に記載する必要があります。あいまいな記載は後々のトラブルの温床になります。

就業規則の整備も同時に進める

雇用契約書の整備と並行して、有期雇用労働者向けの就業規則(または別規程)を整えることも欠かせません。具体的には、以下の内容を就業規則に盛り込むことが求められます。

  • 有期雇用労働者に適用される賃金・労働時間・更新基準
  • 無期転換申し込みに関する手続き規定
  • 転換後の「無期転換社員」に適用される労働条件

就業規則が整備されていない場合、申し込みがあった際に担当者が判断に迷うだけでなく、「別段の定め」が存在しないとして転換前条件がそのまま引き継がれることになります。

実践ポイント:申し込みがあった場合の対応フロー

制度整備が整ったら、実際に申し込みが来たときの対応フローを社内で明確にしておくことが重要です。窓口が不明確なまま放置すると、対応遅延が後のトラブルにつながります。

申し込み受領から転換完了までのステップ

  • ステップ1:労働者から無期転換の申し込みを受領する(書面が望ましいが口頭でも成立)
  • ステップ2:転換後の労働条件を明示した労働条件通知書・雇用契約書を交付する
  • ステップ3:就業規則に定めた「無期転換社員」区分の適用規程を案内する
  • ステップ4:社会保険・給与システムへの反映を行う

申し込みの窓口を人事担当者に一本化し、対応マニュアルを作成しておくことで、担当者が変わっても一定水準の対応が維持できます。

定年後再雇用者の特例活用も検討を

定年後に再雇用している従業員が多い企業では、第二種計画認定(都道府県労働局長への申請)を取得することで、定年後再雇用者への無期転換ルールの適用を除外することが可能です。シニア人材の活用方針に応じて、この特例制度の活用も選択肢に入れてください。申請には所定の書類と「高年齢者雇用推進者の選任」などの条件が必要ですので、所轄の労働局に事前に確認することをお勧めします。

また、雇用環境の整備と並行して、従業員のメンタルヘルス面のサポート体制を整えることも重要です。雇用形態の変化は労働者にとってもストレスになることがあります。メンタルカウンセリング(EAP)の導入は、労働者が職場の変化に安心して対応できる環境づくりの一助になります。

まとめ

有期雇用の無期転換制度への対応は、「いつか考えればいい問題」ではありません。気づいたときには5年のカウントが迫っており、書類も処遇も整備が間に合わないという状況は、中小企業でよく起きている現実です。

対応の優先順位は次のとおりです。

  • まず:全有期雇用者の通算期間を一覧化し、5年到達時期を把握する
  • 次に:転換後の処遇区分を設計し、就業規則・雇用契約書に反映させる
  • 並行して:2024年4月以降の明示義務に沿った書類の見直しを行う
  • 備える:申し込みがあった場合の社内フローを整備し、担当者を明確にする

「雇い止めで回避する」という発想は法的リスクが高く、長期的に見ても企業の信頼を損ないます。制度を正面から受け入れ、適切な体制を整えることが、安定した労務管理と職場環境の維持につながります。

社内の体制整備と合わせて、従業員の健康管理や職場のメンタルヘルス対応についても早めに検討されることをお勧めします。産業医サービスの活用は、雇用形態にかかわらず従業員の健康を組織的にサポートする基盤となります。労務管理の整備とともに、働きやすい職場環境の構築を進めていただければ幸いです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 通算5年のカウントはいつから始まりますか?

2013年4月1日以降に締結・更新した有期労働契約から通算が始まります。それ以前の契約期間はカウントに含まれません。たとえば2010年から勤務していても、カウント対象は2013年4月1日以降の契約期間のみです。5年の通算を超えた時点で、その契約期間中に申込権が発生します。

Q2. 無期転換後も正社員と同じ待遇にしなければいけませんか?

必ずしも正社員と同一処遇にする必要はありません。「無期転換社員」という独自の区分を設けることは法律上認められており、職務内容や責任範囲に応じた別の処遇設計が可能です。ただし、パートタイム・有期雇用労働法に基づき、不合理な待遇差は認められませんので、格差が生じる場合は合理的な説明ができる根拠を整理しておくことが重要です。

Q3. 無期転換を避けるために5年未満で雇い止めをしてもいいですか?

無期転換回避を目的とした雇い止めは、法的リスクが非常に高く、お勧めできません。労働契約法第19条(雇い止め法理)により、反復更新で雇用継続への合理的な期待がある場合、客観的理由のない雇い止めは無効と判断される可能性があります。無期転換の申し込みを回避することよりも、転換後の処遇を適切に設計することが、企業にとっても長期的に安定した対応となります。個別のケースについては、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

Q4. 定年後に再雇用した従業員にも無期転換は適用されますか?

原則として適用されますが、都道府県労働局長への「第二種計画認定」申請を行うことで、定年後再雇用者については無期転換ルールの適用を除外することが可能です。この特例を利用するには、申請書類の提出や高年齢者雇用推進者の選任などの要件を満たす必要があります。詳細は所轄の都道府県労働局にお問い合わせください。

監修・運営:INTERMIND株式会社

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