「2025年4月から中小企業も対象」男性育休の義務化、今すぐ確認すべき実務対応と書式・助成金まとめ

「うちの会社は小さいから、男性の育休なんてまだ先の話だろう」——そう思っている経営者・人事担当者の方は、少なくないかもしれません。しかし、育児・介護休業法はすでに段階的な改正が進んでおり、従業員規模にかかわらず対応が必要な義務がいくつも生じています。対応が遅れると行政指導の対象になるリスクもあり、「知らなかった」では済まされない時代に入っています。

本記事では、男性育休の取得促進に関する法的義務の全体像を整理したうえで、中小企業が実務として取り組むべき具体的な対応策をわかりやすく解説します。制度の複雑さや人手不足への不安、職場風土の問題など、現場でよく聞かれる課題にも触れながら、一つひとつ丁寧に説明していきます。

目次

まず押さえたい「義務」と「努力義務」の違い

育児・介護休業法の改正内容を調べると、「義務」と「努力義務」が混在していて混乱しやすい構造になっています。最初に、この区別を明確にしておくことが重要です。

すべての企業に課せられている「義務」として、2022年4月から施行された以下の2点があります。

  • 個別周知・意向確認の義務:妊娠・出産の申し出をした従業員(本人および配偶者が対象)に対し、育児休業制度の内容などを個別に説明し、取得の意向を確認する
  • 雇用環境整備の義務:育児休業を取りやすい職場環境を整えるための取り組みを、少なくとも1つ以上実施する

これらは従業員1名でも雇っている企業であれば対応が必要です。「中小企業だから免除される」という規定はありません。

一方、公表義務や数値目標の設定は規模要件があります。2023年4月から従業員1,000人超の企業に課されていた育児休業取得状況の公表義務は、2025年4月施行の改正によって対象が拡大されました。従業員300人超の企業には公表義務が、従業員100人超の企業には取得率などに関する数値目標の設定と公表が義務付けられています。自社の従業員規模と照らし合わせて、どの義務が適用されるかを確認することが出発点になります。

「産後パパ育休」とは何か——制度名の整理

多くの担当者が頭を抱えるのが、制度名の複雑さです。「産後パパ育休」「出生時育児休業」「育児休業」など、似たような言葉が並んでいます。ここでシンプルに整理します。

2022年10月から新設された「産後パパ育休(正式名称:出生時育児休業)」は、子どもが生まれてから8週間以内に、最大4週間(28日)取得できる制度です。従来の育児休業とは別に取得できるうえ、2回に分割することも可能です。また、労使協定を結んでいる場合は、育休中に一定の範囲で就業することも認められています。

これとは別に、従来からある「育児休業」も、2022年10月の改正により2回に分割して取得できるようになりました。つまり、男性の場合、産後パパ育休を2回+育児休業を2回と、合計最大4回に分けて休業を取得できる仕組みになっています。

実務上、特に注意が必要なのは申出のタイミングです。産後パパ育休は、原則として休業開始の2週間前までに申し出る必要があります(従来の育児休業は1か月前)。フローが通常の育児休業と異なるため、申請手続きを別途整理しておく必要があります。

個別周知・意向確認を実務でどう進めるか

義務の中でも特に実務的な対応が求められるのが、個別周知と意向確認です。やっているつもりでも、後日トラブルになった際に「実施した証拠がない」という事態は避けなければなりません。

周知すべき4つの事項

法律では、以下の4点を個別に伝えることが定められています。

  • 育児休業・産後パパ育休の制度内容
  • 申し出先となる窓口(社内の担当部署・担当者)
  • 育児休業給付金に関する事項
  • 育児休業期間中の社会保険料免除に関する事項

伝達方法は、面談・書面交付・FAX・電子メールのいずれかとされています。社内のイントラネットに掲載しているだけでは「個別周知」とは認められないため、注意が必要です。

実施するタイミングと記録の残し方

妊娠・出産の申し出があった後、速やかに(目安として2週間以内)対応することが求められます。見落とされがちなのが「配偶者(妻)が出産した男性従業員も対象」という点です。妻の妊娠・出産を報告してきた男性社員に対しても、同様に個別周知と意向確認を行う必要があります。

記録の残し方としては、面談を行った場合は日時・内容・参加者を記録した面談記録を作成する、書面を交付した場合は本人の受領確認サインを取る、メールで対応した場合は送受信記録を保存するなどの方法が有効です。

もう一つ重要な点として、意向確認は「取得することを強制する」ものではありません。「取得しない」という回答も本人の意思として尊重されます。意向確認の結果を理由に不利益な扱いをすることは、法律で禁止されています。意向確認とは、あくまでも「制度を知ったうえで、自分の意思を表明する機会を与えること」です。

コスト面の誤解を解く——給付金と社会保険料免除の仕組み

「男性に育休を取らせると、会社の負担が増えるのでは」という不安をお持ちの経営者は多いですが、実際には給付金や社会保険料免除によって、手取りの減少を一定程度カバーできる仕組みが整っています。

育児休業給付金の水準

育児休業給付金は雇用保険から支給されます。支給額は、休業開始から180日間は賃金の67%、以降は50%となっています。社会保険料が免除されることと、育児休業給付金が非課税であることを考慮すると、手取りベースでは実質的に休業前の80%程度が維持されると試算されることもあります(個別の収入・保険料水準によって異なります)。

社会保険料の免除

育児休業期間中は、従業員本人の負担分だけでなく、会社の負担分(事業主負担分)も社会保険料が免除されます。これは月末時点で育児休業中であることが条件です。2022年10月の改正により、賞与に係る社会保険料については「1か月超の育児休業取得」が免除の条件に変更されました。短期の取得での賞与月の保険料免除は廃止されましたが、一定期間の取得であれば会社の社会保険料負担も軽減されます。

両立支援等助成金の活用

さらに、代替要員の確保や業務整理に取り組んだ企業が活用できる「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)」が厚生労働省から設けられています。申請要件や助成額は年度ごとに変更されることがあるため、最新の情報は厚生労働省または最寄りの都道府県労働局・ハローワークで確認することをお勧めします。

人手不足と職場風土——中小企業特有の課題への対応

「制度の話はわかった。でも実際に誰かが休んだら業務が回らない」——これが中小企業で最もよく聞かれる本音です。この問題は、制度面の整備だけでは解決しません。業務体制と職場風土の両方にアプローチする必要があります。

業務の属人化を防ぐ仕組みをつくる

育休取得の有無にかかわらず、業務が特定の人に依存している状態は、病気や突然の退職でも同じリスクをはらんでいます。普段から業務のマニュアル化・標準化を進めておくことが、育休対応の基盤になります。「誰かが休む前提」で業務フローを整えることが、組織の安定性を高めることにもつながります。

代替要員については、派遣社員の活用や業務委託の利用も有力な選択肢です。ただし、派遣社員は紹介から就業までに一定の期間がかかるため、育休開始の見通しが立ち次第、早めに準備を始めることが重要です。

「取りにくい空気」を変える職場環境整備

法律では、雇用環境整備として以下の4つのうち1つ以上を実施することが義務とされています。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 相談窓口の設置
  • 自社の育児休業取得事例の収集・提供
  • 育児休業取得促進に関する方針の周知

1つだけ選べばよいとされていますが、実効性を高めるためには複数を組み合わせることが望まれます。特に、経営者・管理職が「取ってよい」というメッセージを明確に発信することが、職場風土を変えるうえで最も効果的です。管理職自身が制度を理解しておらず、部下からの相談に対応できないケースも多いため、管理職向けの研修は優先的に実施する価値があります。

実践ポイント:今すぐ着手すべき5つのステップ

ここまでの内容を踏まえ、実務として取り組む順番を整理します。

  • ステップ1:育児介護休業規程の見直し
    産後パパ育休・分割取得の規定が含まれているかを確認し、未対応の場合は改訂します。改訂していない場合は行政指導の対象となりうるため、優先度を高くしてください。社会保険労務士への相談が確実です。
  • ステップ2:個別周知・意向確認のフローと書式を作成する
    誰が・いつ・どのように対応するかを決め、使用する書面のひな型を用意します。厚生労働省がひな型を公開しているため、活用することができます。
  • ステップ3:申請フローをマニュアル化する
    産後パパ育休と通常の育児休業では申出期限が異なります。担当者が変わっても対応できるよう、フロー図を作成して社内に共有してください。
  • ステップ4:給付・費用面の情報を整理しておく
    育児休業給付金・社会保険料免除・活用できる助成金の情報を、担当者が説明できる状態に整えます。コスト面の誤解を解くことが、上司や経営層の理解を得るためにも重要です。
  • ステップ5:管理職への周知と研修を実施する
    制度の内容と、意向確認が強制ではないこと、不利益扱いが禁止されていることを管理職に伝えます。現場でのハラスメント(パタニティハラスメント)を防止するためにも必要な取り組みです。

まとめ

男性育休の取得促進は、特定の大企業だけに求められる話ではなくなっています。個別周知・意向確認の義務はすでにすべての企業に適用されており、2025年4月施行の改正では公表義務や数値目標の設定義務が中規模企業にも広がっています。

「うちには関係ない」と後回しにしている間に、法的な対応の遅れが蓄積されていきます。また、働き手の価値観が変わるなかで、男性育休への対応が採用競争力や従業員満足度に影響するケースも増えています。

まずは自社の育児介護休業規程が現行法に対応しているかを確認することから始めてください。そのうえで、個別周知のフローと書式を整備し、管理職への周知を行うという順序で進めることが、着実な対応につながります。わからない点は、社会保険労務士や都道府県労働局の相談窓口を積極的に活用することをお勧めします。

よくある質問

Q1: うちの会社は従業員が10名の小さな企業ですが、男性育休への対応は必要ですか?

はい、必要です。個別周知・意向確認と雇用環境整備の義務は、従業員規模にかかわらずすべての企業に課せられています。「中小企業だから免除される」という規定はないため、従業員1名でも対応が必要になります。

Q2: 「産後パパ育休」と「育児休業」は何が違うのですか?

産後パパ育休(出生時育児休業)は、子どもが生まれてから8週間以内に最大4週間取得でき、従来の育児休業とは別に取得できます。男性は産後パパ育休を2回+育児休業を2回と、合計最大4回に分けて休業を取得できるようになりました。

Q3: 個別周知・意向確認は、社内イントラネットに情報を掲載するだけで足りますか?

いいえ、足りません。個別周知とは面談・書面交付・FAX・メールのいずれかの方法で直接伝えることが定められており、イントラネット掲載だけでは認められません。また、実施した証拠として面談記録や受領確認サインなどを残す必要があります。

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