【2025年改正】育児短時間勤務が小学校就学前まで延長!中小企業が今すぐやるべき就業規則・人員配置の実務対応まとめ

「うちの会社、3歳になったら時短は終わりだよね?」——そう思い込んでいる経営者・人事担当者は少なくありません。しかし2025年の育児・介護休業法改正により、その認識はすでに過去のものになっています。

2025年4月1日を境に、育児中の社員への柔軟な働き方の提供義務が小学校就学前(6歳)まで拡大されました。しかも単純に「時短期間が延びた」というわけではなく、複数の選択肢を用意して本人に選ばせる仕組みへの転換が求められています。制度の構造そのものが変わったと言っても過言ではありません。

「うちは小さい会社だから、代わりの人を確保するのも難しい」「就業規則をどこまで直せばいいのかわからない」——中小企業の現場からはこうした声が絶えません。本記事では、改正の正確な内容を整理したうえで、規模の小さな会社でも実践できる具体的な対応策をわかりやすく解説します。

目次

2025年改正のポイント:「3歳まで」から「就学前まで」へ、そして「選択制」へ

今回の改正でまず押さえておきたいのは、「短時間勤務制度の期間がただ延びた」というわけではないという点です。法律の構造が変わっています。

従来の育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する労働者に対して、事業主は短時間勤務(1日6時間)を提供する義務がありました。3歳を過ぎると、この義務は原則として消滅していました。

2025年4月施行の改正では、この枠組みが大きく転換しました。3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対して、事業主は「柔軟な働き方の選択肢」を複数整備し、本人が選べる仕組みを用意する義務が新設されたのです。

具体的に整備すべき選択肢のメニューは以下の6つです。

  • ① 短時間勤務制度(時短)
  • ② フレックスタイム制度(コアタイムなしも含む)
  • ③ 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
  • ④ テレワーク(在宅勤務など)
  • ⑤ 保育施設の設置・運営その他これに準ずる便宜の供与
  • ⑥ 新たな休暇制度(子の看護休暇の拡充等)

事業主はこのうち少なくとも2つ以上を選択肢として整備し、対象の労働者が自分の状況に合わせて選べるようにしなければなりません。

この「選択制」という設計は非常に重要です。「選択肢を2つ用意すれば義務を果たした」と形式的に捉えるのは誤りです。労働者が実際に利用できる内容・手続きが整っていて初めて制度整備と言えます。名ばかりの選択肢を並べてお茶を濁すことは、行政指導の対象になりうる点に注意が必要です。

また、同改正では以下の制度も同時に拡充されています。

  • 所定外労働(残業)の免除制度:従来の「3歳まで」から「小学校就学前まで」に延長
  • 子の看護休暇:対象年齢が「小学校就学前」から「小学校3年生(9歳)修了まで」に拡大。取得事由に感染症に伴う学級閉鎖・入学式・卒業式等への参加も追加
  • テレワークの努力義務:3歳未満の子を養育する労働者へのテレワーク導入が努力義務化
  • 育児休業取得状況の公表義務:対象が従業員1,000人超から300人超の企業へ拡大

改正内容は多岐にわたるため、自社にどの要件が適用されるかを一つひとつ確認していくことが重要です。施行時期については主要部分が2025年4月1日ですが、一部は2025年10月施行予定の事項もありますので、厚生労働省の最新通達・官報で最終確認を行ってください。

中小企業が直面する3つの実務課題とその考え方

課題① 人員配置と業務分担の見直し

中小企業において最も切実な悩みが、「短時間勤務・残業免除の対象者が増えることで、他の社員の負担が増す」という問題です。特に数人規模のチームや、一人ひとりの担当領域が明確な職場では、一人の勤務時間が変わるだけで業務フローに大きな影響が出ます。

この課題に対処するうえで有効なのが、業務の棚卸しと再設計です。まず現在その社員が担っている業務を書き出し、「時間帯に依存する業務」と「時間帯に依存しない業務」に分類します。顧客対応やミーティングの一部は時間帯の融通がきかないこともありますが、書類作成・データ入力・社内調整などはタイミングをずらしても成立することが多いはずです。

また、業務のデジタル化・ツール活用によって、物理的な在席時間に依存しない仕組みを整えることが中長期的な解決策になります。チャットツールや業務管理システムの導入は、単に短時間勤務対応だけでなく、会社全体の生産性向上にもつながります。

課題② 社員間の不公平感への対処

育児中の社員だけが特別扱いされているように見える状況は、職場内のモチベーション低下や人間関係の悪化につながることがあります。この不公平感の問題は、制度の設計と「見せ方」の両面から取り組む必要があります。

まず制度面では、育児・介護だけでなく、通院・学習・介護予防など他の理由でも柔軟な働き方ができる仕組みをあわせて検討することが有効です。「育児中の人だけが優遇されている」ではなく、「働き方の多様性を会社全体で支える文化」として位置づけることで、社員全体の受け止め方が変わります。

また、評価基準の見直しも不可欠です。「時間が短いから評価が下がる」という暗黙のルールが残ったままでは、短時間勤務を選んだ社員が肩身の狭い思いをするだけでなく、他の社員も「制度はあっても使えない」と感じてしまいます。成果・役割・貢献度を軸にした評価への移行を、この機に検討することをお勧めします。

課題③ 就業規則・労使協定の整備

法的な義務対応として避けて通れないのが、就業規則および育児・介護休業規程の改定です。改正法の内容を踏まえて、以下の事項を規程に明文化する必要があります。

  • 対象となる措置の種類(2つ以上の選択肢)とその内容
  • 申請手続きの方法・タイミング・様式
  • 適用条件(勤続年数・雇用形態など、法令の範囲内で設定可能なもの)
  • 子の看護休暇に関する改正後の取扱い

改定した就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法第89条)。10人未満の事業場であっても、労働者への周知は義務となります。

また、一定の条件のもとで制度の対象外とする労働者(週2日以下の勤務者など)を設ける場合は、労使協定(労働者の過半数を代表する者との書面による協定)の締結が必要です。既存の労使協定が旧法ベースの内容になっている場合は、内容の見直しを忘れずに行ってください。

対象社員への周知・コミュニケーションの進め方

制度をどれだけ丁寧に整備しても、社員に正しく伝わらなければ意味がありません。特に注意が必要なのは、「3歳になったら時短は終わり」と誤って理解している社員に対して、改正内容を正確に伝えることです。

周知の方法としては、以下のような段階的なアプローチが効果的です。

  • 全体周知:社内掲示板・イントラネット・社内メール等で改正内容と自社の対応措置を案内する
  • 個別周知:3歳以上小学校就学前の子を持つ社員を特定し、個別に書面または面談で内容を説明する
  • 申請フローの案内:「選択肢があっても自動的に適用されるわけではなく、申請が必要」であることを明確に伝え、申請様式と手順を案内する

個別面談の場では、社員が現在どのような状況にあるかをヒアリングしつつ、どの選択肢が本人の生活スタイルに合うかを一緒に考える姿勢が大切です。会社が制度を一方的に与えるのではなく、社員が自律的に働き方を選べるよう支援するという姿勢が、信頼関係の構築にもつながります。

なお、育児中の社員が仕事と家庭の両立に悩んでいる場合、専門的なサポートが有効なことがあります。外部のメンタルカウンセリング(EAP)を活用することで、管理職や人事担当者だけでは対応が難しい心理的なサポートを提供することができます。

コスト面の不安に応える:助成金の活用と費用対効果の考え方

「制度整備にかかるコストをどう賄うか」は、中小企業にとって非常に現実的な懸念です。就業規則の改定費用、代替要員の確保、業務効率化ツールの導入……積み重なればそれなりの出費になります。

こうした費用を補填する手段として、両立支援等助成金の活用が考えられます。厚生労働省が設けているこの助成金には複数のコースがあり、育児休業からの職場復帰支援や、職場環境整備のための取り組みに対して支給されるものが含まれています。2025年度からは新設・拡充されたメニューもありますので、厚生労働省や都道府県労働局の公式サイトで最新情報を確認してください。

申請手続きが複雑に感じる場合は、社会保険労務士や商工会議所・商工会に相談することで、要件の確認や書類作成のサポートを受けることができます。費用対効果の試算を一緒に行ってもらえるケースも多く、「まず相談してみる」という一歩が重要です。

また、費用の問題を考えるうえで視野に入れておきたいのが、制度を整備しないことのリスクです。法令違反として行政指導を受けるリスクはもちろんですが、「この会社では長く働けない」と感じた育児中の社員が離職すれば、採用・育成コストのほうがはるかに大きくなります。制度整備への投資は、人材定着のための投資でもあるという視点が必要です。

今すぐ取り組む実践ポイント:優先順位をつけた対応手順

改正への対応は、優先順位をつけて段階的に進めることが重要です。以下に、取り組みやすい順序を整理します。

ステップ1 現状確認(すぐに取り組む)

  • 現在、3歳以上小学校就学前の子を養育している社員を把握する
  • 現行の就業規則・育児介護休業規程が旧法ベースになっていないか確認する
  • 現存する労使協定の内容を確認し、改定が必要かどうか整理する

ステップ2 規程整備と届出(速やかに)

  • 育児・介護休業規程に選択肢メニューと申請フローを明記する
  • 必要に応じて労使協定を締結または改定する
  • 就業規則の変更届を労働基準監督署に提出する(常時10人以上の事業場)

ステップ3 社員への周知(規程整備と並行して)

  • 全社員への周知と、対象社員への個別案内を実施する
  • 申請様式と手順を整備し、社員がすぐに動けるようにする

ステップ4 人事管理の見直し(中期的に取り組む)

  • 業務の棚卸しを行い、短時間勤務者が担う業務の範囲を再設計する
  • 評価基準を成果・役割ベースへ移行する検討を始める
  • 業務のデジタル化・効率化に取り組む

制度設計や評価制度の見直しと並行して、職場環境全体のメンタルヘルスケアを強化しておくことも重要です。育児と仕事の両立に悩む社員だけでなく、業務負担が増加した他の社員のフォローも含めて、産業医サービスを活用した継続的な健康管理体制を整えることが、組織全体の安定につながります。

まとめ

2025年の育児・介護休業法改正は、「短時間勤務が3歳以降も続く」という単純な話ではなく、小学校就学前まで複数の柔軟な働き方の選択肢を用意する義務という、制度の構造そのものの転換です。

中小企業にとって負担感が大きいことは確かですが、対応を後回しにするほどリスクは蓄積されます。まずは自社の現状を確認し、就業規則の整備・社員への周知・人事管理の見直しを段階的に進めていくことが、最も現実的な対応策です。

法改正への対応を、単なるコンプライアンス(法令遵守)のためだけでなく、社員が長く安心して働ける職場づくりの機会として捉えることができれば、会社の採用力・定着率の向上にもつながっていきます。一人で抱え込まず、社会保険労務士や各種支援機関を積極的に活用しながら、着実に対応を進めていきましょう。

Q. 2025年の改正で、3歳になったら短時間勤務は終了になるのですか?

いいえ、2025年4月の改正以降は、3歳を過ぎても小学校就学前(6歳)まで、事業主は複数の柔軟な働き方の選択肢(短時間勤務・フレックス・テレワーク等)を少なくとも2つ以上整備し、労働者が選べる仕組みを提供する義務があります。「3歳になったら自動的に制度が終わる」という取り扱いは、改正後は法令違反にあたるおそれがあります。

Q. 従業員が10人以下の小さな会社でも、就業規則の改定や届出は必要ですか?

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の変更後に労働基準監督署への届出が義務となります(労働基準法第89条)。10人未満の事業場でも届出義務は生じませんが、労働者への周知義務は規模を問わず存在します。また、育児・介護休業規程の内容が実態に合っていない場合は、労働トラブルの原因になりますので、規模にかかわらず規程の見直しを行うことをお勧めします。

Q. 子の看護休暇はどのように変わりましたか?

2025年の改正により、子の看護休暇の対象年齢が「小学校就学前」から「小学校3年生(9歳)修了まで」に拡大されました。また、取得できる事由も広がり、従来の病気・けがの看護に加えて、感染症に伴う学級閉鎖への対応や、入学式・卒業式等の行事への参加も対象に追加されています。就業規則・育児介護休業規程に反映できているかどうか、今一度確認してください。

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