「障害者雇用促進法2025年版:法定雇用率2.5%の計算方法から助成金・合理的配慮の具体例まで中小企業が今すぐ使える完全ガイド」

障害者を雇用したいと思ってはいるものの、「具体的に何をすればよいのかわからない」「法律の要件を正確に把握できていない」という声は、中小企業の経営者・人事担当者の方から非常によく聞かれます。障害者雇用促進法の改正が相次ぎ、2024年4月には法定雇用率の引き上げや合理的配慮の義務化といった重要な変更が行われました。知らなかったでは済まされない法的リスクが生じている一方で、適切に取り組めば助成金や外部支援機関を活用しながら着実に体制を整えることも可能です。

この記事では、障害者雇用に関する法的要件の基本から、採用・定着のための実践的なポイントまでをわかりやすく解説します。専任担当者を置く余裕がない中小企業でも、一歩ずつ取り組める内容を心がけていますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

障害者雇用促進法の基本:法定雇用率と対象企業

障害者雇用の根拠となる法律が、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)です。この法律は、障害者が職業を通じて社会参加できるよう、事業主に一定の割合で障害者を雇用することを義務づけています。この義務の指標となるのが「法定雇用率」です。

2024年4月の改正により、民間企業に適用される法定雇用率は2.3%から2.5%へ引き上げられました。さらに2026年7月以降は2.7%になることが予定されています。段階的な引き上げが続いているため、現時点での対応だけでなく、近い将来の変化も視野に入れた準備が必要です。

雇用義務が生じる企業規模については、2024年4月以降は常時雇用する労働者が40人以上の企業が対象となっています。2026年7月以降はこの基準が37.5人以上に変更される予定です。「うちはまだ関係ない」と判断する前に、自社の従業員数を今一度確認してください。

雇用率の計算方法を理解する

法定雇用率を満たしているかどうかを確認するには、「障害者の雇用義務数」を正確に計算する必要があります。計算の基本式は「常時雇用する労働者数×法定雇用率」ですが、カウントのルールにはいくつかの注意点があります。

  • 対象となる障害者:身体障害者・知的障害者・精神障害者で、いずれも障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)を所持している方が対象です。
  • 重度障害者はダブルカウント:重度の身体障害者または知的障害者は、1人雇用すると2人分としてカウントできます。
  • 労働時間によるカウント方法の違い:週30時間以上勤務する方は1人分、週20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人分としてカウントします。ただし、精神障害者の短時間雇用については、当面の間は特例として1人分としてカウントできます。

「精神障害者は雇用率にカウントできない」と誤解されている方もいますが、2018年4月から精神障害者も雇用義務の対象に加わり、カウントできるようになっています。発達障害のある方も、精神障害者保健福祉手帳を取得している場合は対象となります。

雇用率未達成の場合のリスクと報告義務

法定雇用率を達成できていない場合、企業規模に応じてペナルティや行政対応が発生します。制度の仕組みを正確に把握しておくことが大切です。

障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度とは、法定雇用率を下回っている企業から不足人数に応じて一定額を徴収し、率を超えて雇用している企業に調整金を支給する制度です。雇用促進に向けた経済的なインセンティブを設けることで、社会全体での障害者雇用を促進する仕組みです。

納付金の対象となるのは、常時雇用する労働者が100人を超える企業です。不足1人につき月額5万円を納付します。一方、法定雇用率を超えて雇用している企業には、超過1人につき月額2.7万円の調整金が支給されます。

常時雇用労働者が100人以下の中小企業は、納付金の支払い義務はありません。しかし、報告義務および行政指導の対象にはなります。「100人以下だから大丈夫」ではなく、雇用率を達成していない場合はハローワークから指導を受ける可能性があることを理解しておく必要があります。

毎年6月の報告義務を忘れずに

雇用義務の対象となる企業は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワーク(公共職業安定所)に報告する義務があります(障害者雇用状況報告書の提出)。未報告・虚偽報告に対しては30万円以下の過料が科される可能性があります。毎年5〜6月を迎えたら、手続きを忘れず行うようにしましょう。

2024年4月から義務化された合理的配慮の提供

合理的配慮とは、障害のある方が職場で働くにあたって生じる障壁を取り除くために、事業主が提供する個別の調整や変更のことです。2024年4月の障害者差別解消法改正により、民間企業においても合理的配慮の提供が義務となりました(改正前は努力義務でした)。

ただし、「過重な負担にならない範囲」という条件がついており、すべての配慮を無制限に求められるわけではありません。企業の規模や体力に応じた現実的な対応が求められています。

合理的配慮の具体例

  • 通院への配慮:定期的な通院が必要な方に対し、通院のための休暇取得や勤務時間の調整を行う。
  • 業務手順の明確化:発達障害のある方に対して、口頭での指示だけでなく、文字や図を使った作業手順書・チェックリストを作成する。
  • 物理的な環境整備:車いす利用者のために段差を解消する、利用しやすいトイレを整備するなど。
  • コミュニケーション方法の調整:聴覚障害のある方に対し、筆談や文字ベースでのやりとりを基本とする。
  • 柔軟なシフト設計:体調の波がある精神障害者に対し、短時間勤務からスタートする、体調に応じた業務量の調整を行うなど。

重要なのは、「障害者から申し出があった際に対話しながら検討する」というプロセスです。最初から完璧な体制を整える必要はありません。本人と率直に話し合い、双方にとって無理のない形を模索することが基本姿勢となります。

採用から定着まで:中小企業でもできる実践的アプローチ

採用・定着の難しさを感じている企業は少なくありませんが、外部の支援機関や制度を上手に活用することで、専任担当者がいない中小企業でも着実に体制を整えることができます。

採用チャネルと「トライアル雇用」の活用

障害者の採用経路として、まず活用したいのがハローワークの専門援助部門です。障害者雇用に特化した担当者が、求人票の作成から候補者のマッチングまで無料でサポートしてくれます。そのほか、障害者就業・生活支援センター就労移行支援事業所と連携することで、支援機関側がすでに把握している利用者の特性や強みを事前に確認したうえで採用を検討できます。

採用に不安を感じる方には、障害者トライアル雇用制度の活用をおすすめします。これは原則3か月間、試験的に雇用してお互いの適性を確認できる制度で、この期間中は月額最大4万円の「障害者トライアル雇用助成金」が支給されます。いきなり長期雇用に踏み切るのが難しいと感じる場合の、現実的な入口として機能します。

定着を支える職場環境づくり

採用後に最も大切なのが「定着」です。障害者雇用においては、入社後のサポート体制が不十分なために早期離職に至るケースが多く見られます。定着率を高めるための主なポイントを以下に示します。

  • 相談窓口となる担当者を明確にする:専任である必要はありませんが、「困ったときにまず誰に話しかければよいか」を本人が明確にわかるようにすることが重要です。
  • 業務の見える化:手順書やチェックリストを整備し、「何をどこまでやればよいか」が本人自身で確認できる状態にします。これは障害の有無にかかわらず業務品質の向上にもつながります。
  • 定期的な個別面談:体調・業務量・人間関係などについて定期的に確認し、問題が深刻化する前に対処できる仕組みをつくります。
  • ジョブコーチ(職場適応援助者)の活用:外部の専門家が職場に出向き、本人と職場の双方に対して支援を行うジョブコーチ支援事業は無料で利用できます。地域障害者職業センターが窓口となります。

活用できる主な助成金

障害者雇用に取り組む企業を支援するための助成金は複数あります。制度は毎年変更される場合があるため、最新情報はハローワークや厚生労働省のウェブサイトで確認することをおすすめしますが、代表的なものを以下に示します。

  • 特定求職者雇用開発助成金(障害者コース):障害者を雇い入れた際に支給される助成金。障害の種類や重度区分、企業規模によって異なりますが、最大240万円程度が支給されるケースもあります。
  • 障害者雇用安定助成金(職場適応援助者助成金):ジョブコーチを活用する際の費用の一部を助成する制度です。
  • 障害者作業施設設置等助成金:障害者が働きやすい施設・設備の整備にかかる費用を助成します。

実践ポイント:今日から始める障害者雇用への第一歩

「何から手をつければよいかわからない」という方のために、優先度の高い実践ポイントを整理します。

  • まず自社の雇用率を確認する:常時雇用する労働者数と現在の障害者雇用人数を確認し、現状を把握することが出発点です。6月の報告義務に向けて、年に一度は必ず確認する仕組みをつくりましょう。
  • ハローワークの専門援助部門に相談する:採用を検討していなくても、制度の説明や雇用率の計算方法についての相談に応じてもらえます。無料ですので気軽に活用してください。
  • 既存社員への理解促進を並行して進める:障害者雇用を成功させるには、受け入れる側の準備も不可欠です。障害の特性について簡単な社内勉強会を実施したり、担当者が事前に情報を収集したりするだけでも、職場の雰囲気は変わります。
  • 「できること」を起点に業務を設計する:障害特性を「できないこと」の視点だけで捉えるのではなく、「この業務はこの方の強みを活かせる」という発想で役割を設計することが、定着率の向上につながります。
  • 支援機関との関係を早めに築く:採用してから慌てて連絡するのではなく、採用前から地域の支援機関との接点を持っておくと、いざというときにスムーズに連携できます。

まとめ

障害者雇用は、法的な義務への対応という側面はもちろんですが、多様な人材の力を組織に取り込む機会でもあります。2024年4月には法定雇用率が2.5%に引き上げられ、合理的配慮の提供が民間企業にも義務化されました。2026年7月には雇用率がさらに2.7%に上がる予定もあり、早めに対応を始めることが企業にとってのリスク管理にもなります。

中小企業だからこそ難しいという面があるのも事実ですが、ハローワーク・地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センターなどの支援機関はいずれも無料で利用でき、各種助成金制度も整備されています。「一人で抱え込まず、使える仕組みを積極的に活用する」ことが、障害者雇用を継続的に進めていくうえでの最も現実的なアプローチです。

まずは自社の現状把握と、最寄りのハローワークへの相談から始めてみてください。小さな一歩が、企業と働く人双方にとっての大きな変化につながります。

よくある質問

Q1: うちの会社は従業員が35人ですが、障害者雇用に対応する必要がありますか?

現在(2024年4月時点)は40人以上が対象のため対応義務はありませんが、2026年7月以降は37.5人以上が対象に変わる予定です。近い将来に要件を満たす可能性があるため、今から準備を始めることをお勧めします。

Q2: 精神障害者を雇用した場合、法定雇用率にカウントされますか?

はい、2018年4月から精神障害者は雇用義務の対象に加わり、カウントできるようになっています。精神障害者保健福祉手帳を所持していることが条件で、発達障害のある方も対象となります。

Q3: 従業員が90人で法定雇用率を達成できていない場合、罰金を払う必要はありますか?

納付金の支払い義務は常時雇用労働者が100人を超える企業が対象のため、90人では納付金は不要です。しかし報告義務と行政指導の対象にはなるため、ハローワークの指導を受ける可能性があります。

労働法改正への対応や安全衛生管理体制の整備には、INTERMINDの産業医サービスが力になります。専門家による継続的なサポートで法令対応を進められます。

産業医・メンタルヘルスのご相談はお気軽に

まずは資料請求・無料相談から。専任担当がサポートします。

目次