「2024年改正で何が変わった?中小企業が今すぐ確認すべき次世代育成支援対策推進法の対応義務と罰則リスク」

「次世代育成支援対策推進法は大企業向けの法律」「うちは100人以下だから関係ない」——そう思っていませんか?2024年(令和6年)の改正により、この法律は中小企業にとっても無視できない存在となりました。有効期限が2035年3月31日まで延長され、くるみん認定の基準も引き上げられるなど、実務への影響は少なくありません。

少子化が加速する日本において、企業が子育て支援に取り組むことは法的義務であるとともに、採用競争力や従業員エンゲージメントを高める経営戦略でもあります。本記事では、2024年改正の主要な変更点を整理したうえで、中小企業の経営者・人事担当者が今すぐ着手すべき実践的な対応策をわかりやすく解説します。

目次

次世代育成支援対策推進法とは何か——基本をおさえる

次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)は、少子化に対応するため、企業や地方公共団体が子育て支援のための行動計画を策定・実施することを義務付けた法律です。2003年に制定された当初は10年間の時限立法でしたが、その後も延長が繰り返されてきました。

よく混同されるのが育児・介護休業法との違いです。育児・介護休業法は「育児休業や介護休業を取得する権利」そのものを定めているのに対し、次世代法は「企業が子育て支援に向けた計画を作り、実行する仕組み」を定めるものです。目的も義務の内容も異なる別々の法律ですので、「育児・介護休業法への対応は済んでいるから大丈夫」という認識は誤りです。次世代法固有の行動計画策定・届出義務があることをまず理解してください。

なお、次世代法に基づいて一定の基準を満たした企業に与えられるのが「くるみん認定」および「プラチナくるみん認定」です。いわゆる「子育てサポート企業」として厚生労働大臣から認定を受けると、ロゴマークを名刺・製品・求人広告などに使用できるほか、税制優遇や助成金の活用など具体的なメリットを得ることができます。

2024年改正の主な変更点——何が変わったのか

① 有効期限が2035年3月31日まで10年延長

2024年改正で最も注目すべき点の一つが、法律そのものの有効期限延長です。従来は2025年3月31日までの時限立法でしたが、政府が少子化対策の継続的推進を不可欠と判断し、2035年3月31日まで10年間延長されました。

これは単なる「期限の先送り」ではありません。政府が今後10年にわたって企業の子育て支援取り組みを継続的に求め続けるという意思表明です。「しばらくすれば義務がなくなる」という期待は持てないと理解し、中長期的な体制整備を進めることが重要です。

② 行動計画策定義務の対象と努力義務

現在、常時雇用する労働者が101人以上の企業には、行動計画の策定・届出・公表が義務付けられています。この基準自体は2024年改正でも変更はありませんが、今後の政省令によって要件が変更される可能性があるため、動向を継続的に確認することが必要です。

一方、100人以下の中小企業には努力義務が課されています。「努力義務だから対応しなくていい」と考えるのは早計です。後述するくるみん認定は企業規模を問わず申請できますし、採用市場では子育て支援への取り組み姿勢が求職者の選択基準になりつつあります。規模が小さいからこそ、積極的な取り組みが差別化につながります。

また、常時雇用301人以上の企業には、育児休業取得率などの情報を公表する義務が課されています。厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」への登録・公表がこれに該当し、101人以上の企業にも行動計画の公表義務があります。

③ くるみん認定基準の引き上げ——男性育休取得率の要件が強化

2024年改正でとくに注意が必要なのが、くるみん認定の取得基準の見直しです。とりわけ男性の育児休業取得率の要件が引き上げられました。

  • くるみん認定:男性育休取得率 10%以上(改正前は7%)
  • プラチナくるみん認定:男性育休取得率 30%以上(改正前は13%)

「改正前の基準でくるみん認定を目指していた」という企業は、計画をあらためて見直す必要があります。また、女性の育休復帰率・継続就業に関する指標の追加・見直しも行われているため、男性育休だけに目を向けていると思わぬ落とし穴にはまるおそれがあります。

なお、不妊治療と仕事の両立を支援する企業を認定する「くるみんプラス」制度も引き続き継続・拡充されています。不妊治療中の従業員への配慮は、採用・定着の観点からも今後ますます重要になるテーマです。

④ 行動計画の内容充実化——数値目標の明確化が事実上必須に

行動計画の計画期間(2〜5年)自体に変更はありませんが、内容面では数値目標の明確化男性育休取得に関する目標設定が実質的に求められるようになっています。「育児に関する研修を実施する」といった抽象的な記載だけでは不十分とみなされる可能性があります。

行動計画を「提出すれば終わり」の書類と捉えている企業は少なくありませんが、計画期間終了後には次期計画を新たに策定・届出する義務があります。空白期間が生じると法律違反となるため、計画の更新スケジュールをあらかじめ社内で共有しておくことが大切です。

くるみん認定のメリット——中小企業こそ活用すべき理由

「くるみん認定は大企業が取るもの」というイメージを持っている方も多いのですが、実際には中小企業にこそ積極的に活用してほしい制度です。その理由を整理します。

採用・定着への効果

就職活動中の求職者、とりわけ子育て世代や子育てを見据えた若い世代は、企業の子育て支援体制を重視して会社を選ぶ傾向が強まっています。くるみんマークを取得することで、求人票・会社ホームページ・採用パンフレットに「子育てサポート企業」として明示でき、大企業との採用競争において差別化が図れます。

税制優遇・助成金との連携

くるみん認定を取得した企業は、税制上の優遇措置(法人税額控除等)を受けられる場合があります。また、厚生労働省の「両立支援等助成金(出生時両立支援コース等)」と組み合わせることで、男性育休取得を促進しながら助成金を活用することも可能です。助成金の要件・金額は変更されることがあるため、申請前に管轄の都道府県労働局またはハローワークへの確認を推奨します。

公共調達での加点

国や地方公共団体が発注する公共工事・業務委託の入札において、くるみん認定取得が評価加点の対象となるケースがあります。建設・IT・サービス業など、官公庁との取引がある中小企業にとっては、直接的なビジネス上のメリットにもなりえます。

行動計画の作り方——策定から届出・運用までのステップ

行動計画の策定は「何を書けばいいかわからない」と感じる担当者が多いテーマです。ここでは実務上のステップを簡潔に整理します。

ステップ1:現状分析

まず自社の現状を数字で把握します。確認すべき主な指標は以下のとおりです。

  • 男女別の育児休業取得率
  • 育休取得後の職場復帰率
  • 平均残業時間・有給休暇取得率
  • 育休取得者数(過去の実績)

データがない場合はこの機会に集計の仕組みを整えましょう。現状が把握できていないと、実効性ある目標を立てることができません。

ステップ2:課題の抽出と目標設定

現状分析の結果をもとに、自社が取り組むべき課題を特定します。たとえば「男性育休取得率が0%」であれば、まず取得率10%を目指す数値目標を設定し、そのための具体的な取り組みを計画に盛り込みます。目標は数値で示すことが重要です。

ステップ3:取り組み内容の設定と周知

設定した目標を達成するための具体的な施策を記載します。「育児休業制度の周知研修を年1回実施」「上司向けのマネジメント研修を実施」「男性育休取得者へのハンドブック作成」など、実施可能な内容を選びましょう。計画策定後は従業員への周知が義務付けられています。社内イントラや掲示板を活用してください。

ステップ4:届出と公表

行動計画は都道府県労働局への届出が必要です(電子申請も可)。また、101人以上の企業は「両立支援のひろば」への公表が義務付けられています。届出・公表の手続きを失念しないよう、担当者間でチェックリストを作成しておくと安心です。

ステップ5:進捗管理と次期計画の準備

計画は作って終わりではありません。定期的に進捗を確認し、目標の達成度を評価します。計画期間終了後は速やかに次期計画を策定・届出する必要があります。空白期間を生じさせないよう、次期計画の策定スケジュールを計画期間中に設定しておきましょう。

従業員のメンタルヘルスや仕事と育児の両立に悩む社員へのサポートには、メンタルカウンセリング(EAP)の導入も効果的です。行動計画と組み合わせることで、より実効性の高い職場環境整備が実現します。

よくある誤解と失敗を防ぐための実践ポイント

最後に、現場でありがちな誤解と対策をまとめます。

  • 「100人以下なので無関係」→ 努力義務あり。くるみん認定は規模を問わず申請可能。採用力強化のために積極活用を
  • 「届け出れば対応完了」→ 目標達成に向けた実施・進捗管理が法の趣旨。形式的な計画では本来の効果が得られない
  • 「育児・介護休業法への対応で十分」→ 次世代法は別法律。行動計画の策定・届出は次世代法固有の義務
  • 「男性育休は現場の反発が強い」→ 管理職向け研修や社内制度の整備を通じた意識改革が必要。くるみん認定要件でもあり避けられないテーマ
  • 「改正前の基準でくるみんを目指している」→ 2024年改正で基準が引き上げられているため、要件を再確認のうえ計画を修正する
  • 「一度作れば更新不要」→ 計画期間終了ごとに新計画の策定・届出が必要。空白は法律違反

なお、産業医の関与により職場環境の改善や両立支援の取り組みが加速するケースもあります。産業医サービスの活用を行動計画と併せて検討することで、従業員の健康管理と子育て支援を一体的に推進することが可能です。

まとめ

2024年改正により、次世代育成支援対策推進法は2035年3月31日まで延長され、くるみん認定の要件引き上げや行動計画の内容充実化が求められるようになりました。中小企業にとって無関係な法律ではなく、採用・定着・企業ブランドに直結する経営テーマです。

まずは以下の3点を確認することをお勧めします。

  • 自社の従業員規模と行動計画の策定義務・努力義務の確認
  • 現在の行動計画の計画期間と更新スケジュールの確認
  • 男性・女性の育児休業取得率など現状データの把握

政省令レベルでの細部変更が続く可能性もあるため、厚生労働省の公式情報を定期的に確認する習慣を社内で定着させることも重要です。法令対応を「コスト」と捉えるのではなく、職場環境改善と人材確保の「投資」と位置づけて取り組むことが、これからの中小企業経営には欠かせない視点といえるでしょう。

よくある質問(FAQ)

次世代育成支援対策推進法の行動計画は、何年ごとに更新する必要がありますか?

行動計画の計画期間は2〜5年の範囲で企業が設定します。計画期間が終了したら、空白期間を生じさせないよう速やかに次期計画を策定し、都道府県労働局へ届け出る必要があります。「一度作れば更新不要」という誤解が多いため、計画期間中に次期計画の策定スケジュールをあらかじめ設定しておくことを推奨します。

従業員100人以下の中小企業はくるみん認定を申請できますか?

はい、くるみん認定の申請に企業規模の制限はありません。行動計画の策定義務は常時雇用101人以上の企業に課されていますが、100人以下の企業も行動計画を自主的に策定・届出することでくるみん認定の申請要件を満たすことができます。採用力の強化やブランディングの観点から、中小企業こそ積極的に活用いただきたい制度です。

2024年改正でくるみん認定の男性育休取得率要件はどう変わりましたか?

くるみん認定の男性育休取得率要件は改正前の7%から10%以上に、プラチナくるみん認定は改正前の13%から30%以上に引き上げられました。改正前の基準で認定取得を目指していた企業は計画を見直す必要があります。また、女性の育休復帰率や継続就業に関する指標も追加・見直しされているため、最新の認定基準を厚生労働省の公式情報で確認することをお勧めします。

労働法改正への対応や安全衛生管理体制の整備には、INTERMINDの産業医サービスが力になります。専門家による継続的なサポートで法令対応を進められます。

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