「休職期間の上限は何ヶ月が正解?就業規則に必ず書くべき6つの記載事項と自動退職トラブルを防ぐ実務ポイント」

従業員が体調を崩して長期欠勤が続いた場合、「いつまで待てばいいのか」「就業規則には何を書けばいいのか」と頭を抱える経営者・人事担当者は少なくありません。特に代替要員の確保が難しい中小企業では、一人の長期休職が業務全体に与える影響は大きく、対応の遅れが経営的なダメージにつながることもあります。

一方で、対応を誤ると「不当解雇」「合理的配慮義務違反」などの法的リスクに発展するケースもあります。休職制度は法律で義務付けられた制度ではないからこそ、就業規則への明確な記載が会社と従業員双方を守る重要な手立てになります。

本記事では、休職上限期間の設定の考え方から、就業規則への必須記載事項、復職判断の実務フローまで、中小企業の現場ですぐに活用できる情報をわかりやすく解説します。

目次

休職制度は法律の義務ではない——だからこそ就業規則が命綱になる

まず大前提として確認しておきたいのは、休職制度は労働基準法上の義務ではないという点です。育児休業や介護休業とは異なり、傷病を理由とした休職制度の設置は企業の任意です。

ただし、常時10人以上の従業員を使用する事業場は、就業規則の作成・届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。そして「休職・復職に関する事項」は、定めをする場合には必ず就業規則に記載しなければならない相対的必要記載事項に該当します。つまり、休職制度を設ける以上、就業規則への明記は法的な要請です。

就業規則に休職規定がない、あるいは古い記載のまま放置している企業では、次のようなトラブルが起きやすくなります。

  • 「いつまで休んでいいか」が従業員に伝わらず、無期限の欠勤が続く
  • 「休職期間満了で退職」という根拠が就業規則にないため、退職扱いにできない
  • 復職の基準が不明確で、会社・従業員・主治医の間で認識がずれてトラブルになる
  • 精神疾患の従業員が繰り返し休職し、その都度場当たり的な対応を迫られる

これらを防ぐためにも、休職規定を今すぐ点検・整備することが急務です。

休職上限期間はどう設定すればよいか——勤続年数に応じた段階設定が主流

「休職期間を何か月に設定すればよいか」という問いに対して、法律が具体的な期間を定めているわけではありません。企業規模・業種・職種の実情に応じて合理的な範囲で設定できます。実務上よく用いられるのは、勤続年数に応じた段階設定です。

  • 勤続1年未満:1〜3か月
  • 勤続1年以上3年未満:3〜6か月
  • 勤続3年以上5年未満:6か月〜1年
  • 勤続5年以上:1年〜2年

勤続年数が長いほど会社への貢献度が高く、回復に必要な時間も確保するという考え方に基づいています。中小企業では代替要員の確保が難しいため、大企業に比べて短めに設定するケースも多く見られます。

もう一つ重要な考慮点が傷病手当金との関係です。傷病手当金は、業務外の傷病による休業に対して健康保険から支給される給付で、連続3日間の待期期間後、最長で通算1年6か月支給されます(2022年1月の法改正により、同一傷病で一度復職した後に再発した場合も、支給期間は通算して計算される仕組みに変わっています)。

この傷病手当金の支給期間に合わせて、休職上限期間を1年6か月前後に設定する企業も多くあります。手当金が切れた後も休職を認め続けると、収入のない状態が長期化して従業員の生活を圧迫するだけでなく、復職の見通しも立てにくくなるためです。

就業規則に書くべき必須事項

休職規定として就業規則に盛り込むべき項目は多岐にわたります。以下に、実務上欠かせないポイントを解説します。なお、タイトルでは「6つの記載事項」としていますが、本記事では実務上重要な項目をより網羅的に取り上げています。

① 休職事由の明確化

どのような理由で休職が認められるのかを明記します。一般的には、業務外の傷病による休職が中心ですが、精神疾患は再発・長期化しやすい特性があるため、別途規定を設ける企業も増えています。その他、刑事事件による起訴・勾留、会社命令による公職就任なども事由として明記しておくと安心です。

② 休職期間・起算点の明記

期間の起算日(有給休暇消化後から始めるのか、欠勤開始日からなのか)を明確にします。曖昧にしておくと「いつから休職期間がスタートしているか」で認識のずれが生じます。また、試用期間中の従業員に休職を認めるか否かも明記しておくべきです。試用期間中は本採用が確定していないため、認めないとする規定を設ける企業もあります。

③ 休職中の手続き・義務

休職期間中に従業員が履行すべき義務を定めます。具体的には、月1回程度の病状報告義務、主治医の診断書提出義務とその提出タイミング、さらに会社指定医への受診命令権の明記が重要です。会社指定医の受診条項がないと、主治医の判断だけに依存することになり、復職の可否判断が難しくなります。

④ 復職の手続きと判定基準

復職申請の手順・必要書類(主治医の意見書など)、産業医や会社指定医の意見聴取プロセス、そして復職可否の最終決定権が会社側にあることを明記します。主治医が「復職可能」と判断しても、職場環境への適応能力や業務遂行能力が回復しているかどうかは別の問題です。会社には復職の可否を総合的に判断する権限があることを規定で裏付けておく必要があります。

また、試し出勤(リハビリ出勤)制度を設ける場合は、その法的位置付け(業務命令なのか自主的な訓練なのか)、賃金の有無、労災の取り扱いなどを明記しないとトラブルになりやすいため注意が必要です。

⑤ 期間満了時の取扱い

休職期間が満了した場合の処遇は、「自動退職」と「解雇」のどちらで規定するかが非常に重要です。解雇として扱うと解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の適用を受けるリスクがあるため、多くの企業では「休職期間満了をもって自動退職とする」と規定しています。ただし、この自動退職規定も、就業規則への明確な記載がなければ無効と判断されるリスクがあります。退職金・各種手当の算定への影響も合わせて明記しておきましょう。

⑥ 復職後の再休職への対応(通算規定)

精神疾患による休職は再発しやすく、復職後まもなく再び体調を崩すケースが少なくありません。通算規定がないと、休職→復職→再休職を繰り返すたびに休職期間がリセットされ、事実上無制限の休職が認められてしまう恐れがあります。

一般的には「復職後○か月以内に同一または類似の傷病で再度休職する場合は、前回の残余期間を適用する」または「通算○か月を上限とする」という形で通算規定を設けます。この規定の有無が、繰り返し休職への対応力を大きく左右します。

⑦ 賃金・社会保険料の取扱い

休職中の賃金について、法律は支払い義務を定めていません(ノーワーク・ノーペイの原則)。無給とする場合はその旨を明記します。一方で、社会保険(健康保険・厚生年金)の保険料は、休職中も会社・本人双方の負担が継続します。本人負担分の徴収方法(毎月振込依頼など)も就業規則またはその細則に明記しておかないと、未払いのまま退職となりトラブルになるケースがあります。賞与・退職金の算定において休職期間をどう扱うかも、事前に規定で明確にしておくことが重要です。

「主治医が復職可と言ったのに会社が拒否した」はあり得るか——復職判断の実務フロー

復職をめぐるトラブルで最も多いのが、主治医の復職可診断と会社の判断が食い違うケースです。主治医は患者の療養・回復という観点からアドバイスする立場にあり、職場環境や業務内容を詳しく把握していないことがほとんどです。そのため、主治医が「復職可能」と判断しても、実際の職場で安全に働けるかどうかは別の評価が必要です。

実務上の復職判断フローとしては、以下のステップが推奨されます。

  • ステップ1:従業員から復職申請(主治医の復職可診断書を添付)
  • ステップ2:産業医または会社指定医による面談・意見聴取
  • ステップ3:人事・管理職を交えた復職判定会議の実施
  • ステップ4:試し出勤(リハビリ出勤)の実施と観察
  • ステップ5:復職可否の最終決定と職場復帰支援プランの策定

このフローを確立するうえで、産業医サービスの活用は非常に有効です。産業医は医学的な観点から職場環境や業務内容を考慮した意見を提供できるため、主治医の診断書だけでは得られない「職場復帰の可否」に関する客観的な判断材料を会社側に提供することができます。特に精神疾患の復職判断では、産業医の関与が再発防止にも直結します。

また、メンタルヘルス不調者が休職に至る前の早期支援として、メンタルカウンセリング(EAP)の導入も検討に値します。従業員が気軽に相談できる外部相談窓口があることで、不調の早期発見・早期対応につながり、休職そのものを予防する効果が期待できます。

実践ポイント——今日から始める就業規則整備のチェックリスト

以下のポイントを確認し、自社の就業規則に抜け漏れがないかチェックしてみてください。

  • 休職事由が明確に列挙されているか(精神疾患を含む)
  • 休職期間の上限と起算点が明記されているか
  • 勤続年数に応じた段階的な期間設定がされているか
  • 試用期間中の休職可否が規定されているか
  • 休職中の病状報告義務・診断書提出義務が明記されているか
  • 会社指定医への受診命令権が規定されているか
  • 復職申請の手順・産業医の関与プロセスが明記されているか
  • 復職可否の最終決定権が会社にあることが明記されているか
  • 試し出勤(リハビリ出勤)の取扱いが規定されているか
  • 期間満了時の自動退職規定が明記されているか
  • 復職後の再休職に対する通算規定があるか
  • 休職中の賃金・社会保険料の取扱いが明記されているか
  • 就業規則が従業員に周知されているか(掲示・配布・イントラネット等)

これらの項目が一つでも欠けている場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談しながら早急に規定を整備することをお勧めします。就業規則は一度作ればよいものではなく、法改正や自社の状況変化に応じて定期的な見直しが必要です。

まとめ

休職制度は法律上の義務ではありませんが、それだけに就業規則への明確な規定が会社と従業員双方を守る重要な根拠となります。休職上限期間は勤続年数や傷病手当金の期間を参考に合理的に設定し、休職事由・起算点・復職手続き・期間満了時の取扱い・通算規定・賃金と社会保険料の処理といった必須事項を漏れなく記載することが求められます。

特に精神疾患による休職・復職は、主治医任せにせず産業医が関与する復職判断プロセスを構築することが再発防止の鍵です。また、休職者が出てから対策を講じるのではなく、従業員が不調のサインを早期に相談できる環境を整えておくことが、企業としての長期的なリスク管理につながります。就業規則の整備と、専門家を活用した支援体制の構築を、ぜひ今日から始めてください。

よくある質問

休職期間満了で自動退職とする規定は本当に有効ですか?

就業規則に明確に規定されており、従業員に周知されていることが前提となります。規定がない場合や、形式的には自動退職でも実質的に解雇と評価される場合は、労働契約法第16条の解雇権濫用法理が適用されて無効とされるリスクがあります。規定の有無と内容の適切さについては、社会保険労務士や弁護士に確認することをお勧めします。

主治医が「復職可能」と言っているのに、会社が復職を拒否できますか?

復職可否の最終決定権は会社側にあります。主治医は患者の回復状況を医学的に評価しますが、職場の業務内容や環境を十分に把握していない場合がほとんどです。産業医や会社指定医の意見も踏まえたうえで、会社が総合的に判断することが認められています。ただし、合理的な理由なく復職を拒否し続けると、安全配慮義務違反として問題になる場合もあるため、プロセスの記録と文書化が重要です。個別の事案については、専門家にご相談ください。

10人未満の小規模企業でも就業規則に休職規定を設けるべきですか?

常時10人未満の事業場は就業規則の作成・届出義務はありませんが、休職規定がないまま対応すると「いつまで休めるか」「期間満了でどうなるか」について労使間で認識の食い違いが生じやすくなります。規模にかかわらず、休職制度を設ける場合は就業規則や雇用契約書に明記しておくことが、トラブル防止の観点から強くお勧めできます。

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