【2025年最新】定期健康診断は義務!パート・アルバイトも対象?費用負担から受診拒否の対応まで中小企業がやるべきことを完全解説

「うちはパートが多いから、健康診断は正社員だけやっておけば大丈夫だろう」——そう思っている経営者や人事担当者は、少なくありません。しかし、これは法律違反につながる可能性がある誤解です。

定期健康診断は、労働安全衛生法第66条に基づく事業者の義務であり、違反した場合は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。にもかかわらず、「誰が対象なのか」「費用は誰が負担するのか」「受診を拒否された場合はどうすればよいのか」など、実務上の疑問を抱えたまま対応している企業は少なくないのが実情です。

本記事では、中小企業の経営者・人事担当者が特に迷いやすいポイントに絞り、定期健康診断の義務の範囲と正しい実施方法をわかりやすく解説します。

目次

定期健康診断の対象者:パート・アルバイトも含まれる?

定期健康診断に関してもっとも多い誤解のひとつが、「正社員だけが対象」という思い込みです。実際には、雇用形態ではなく労働時間の長さによって義務の有無が判断されます。

義務の対象となる労働者の基準

労働安全衛生規則第44条に基づく一般定期健康診断(年1回)の対象は、「常時使用する労働者」です。正社員はもちろん、契約社員やパート・アルバイトであっても、以下の基準を満たす場合は実施義務が生じます。

  • 週の所定労働時間が正社員の3/4以上の場合:実施義務あり
  • 週の所定労働時間が正社員の1/2以上3/4未満の場合:実施することが望ましい(努力義務)
  • 週の所定労働時間が正社員の1/2未満の場合:義務なし

たとえば、正社員の所定労働時間が週40時間の会社であれば、週30時間以上勤務するパート従業員には実施義務があります。週20時間以上30時間未満のパートに対しては法的義務こそありませんが、できる限り受診を促すことが求められています。

派遣社員の場合はどうなる?

派遣社員については、一般定期健康診断の実施義務は派遣元(派遣会社)が負います。ただし、有害業務に関連する特殊健康診断については派遣先が実施義務を負うため、注意が必要です。自社に派遣社員を受け入れている場合、業務内容によっては対応が求められます。

雇入れ時健康診断も忘れずに

新たに従業員を採用した際には、雇入れ時健康診断(労働安全衛生規則第43条)の実施も義務付けられています。ただし、採用前3か月以内に医師による健康診断を受けており、その結果を証明する書面を提出した場合は省略が可能です。

費用負担・受診時間の取り扱い:会社はどこまで負う必要があるか

健康診断の実施にあたって、経営者・人事担当者がよく悩むのが「費用は誰が負担するのか」「受診中の時間を労働時間として扱うべきか」という点です。

費用負担は原則として事業者が行う

実は、健康診断の費用負担について、労働安全衛生法には明示的な規定がありません。しかし、厚生労働省の行政解釈(通達)では、法律で義務付けられた健康診断の費用は事業者が負担すべきとされています。従業員に一部でも費用を負担させることは、法の趣旨に反すると解釈されるため、実務上は全額会社負担が原則と理解しておいてください。

なお、従業員が会社指定以外の医療機関で受診した場合の取り扱いについては、あらかじめ会社のルールを就業規則や社内通達で明確にしておくことをおすすめします。

受診時間中の賃金はどう扱うべきか

受診時間中の賃金についても、法律上の明確な規定はありません。ただし、行政指導の方針として「受診時間は労働時間として取り扱うことが望ましい」とされています。

実態としては、受診時間を有給(通常の勤務時間扱い)とする企業が多く、特に就業時間内にまとめて集団健診を実施している場合は労働時間として扱うのが一般的です。一方、就業時間外に個人で受診する形態の場合でも、賃金の支払いを検討することで従業員の受診率向上にもつながります。

受診拒否への対応:強制できる?記録はどう残す?

「健康診断は受けたくない」という従業員に頭を悩ませている担当者も少なくありません。健康診断の受診義務と対応方法を正しく理解しておくことが重要です。

事業者には実施義務、労働者には受診義務がある

労働安全衛生法第66条第5項では、労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならないと定められています。つまり、受診は従業員の義務でもあります。これに違反した場合、従業員側にも50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(同法第120条)。

ただし、現実問題として、従業員の身体を物理的に強制することは困難であり、好ましくもありません。重要なのは、会社として適切な受診勧奨を行い、その記録を残しておくことです。

受診拒否への実務的な対応手順

  • 書面またはメールで受診を促す:口頭だけでなく、文書として記録に残る形で受診を呼びかける
  • 拒否の理由を確認する:「費用が心配」「時間が取れない」など、解決できる理由であれば対応策を講じる
  • 就業規則に受診義務を明記する:服務規律として健康診断受診を義務化し、違反した場合の対応を定めておく
  • 勧奨の記録を保管する:「受診を促したが拒否された」という経緯をメール・書面で残しておくことで、会社としての義務を果たしたことを証明できる

なお、正当な理由なく受診を拒否し続ける従業員に対しては、就業規則に基づく注意指導や懲戒処分の対象となりうる場合もあります。ただし、個別の事情に応じた対応が必要なため、労務の専門家に相談することをおすすめします。

健診結果の記録保存・報告義務:見落としがちな事務手続き

健康診断を実施して終わりではありません。結果の記録・保存・行政への報告、そして「要再検査」となった従業員へのフォローまでが、事業者の責務です。

記録の保存期間

健康診断の結果は、健康診断個人票として作成・保存する義務があります(労働安全衛生規則第51条)。保存期間は以下のとおりです。

  • 一般健康診断の結果:5年間
  • 特殊健康診断の結果:5年間(ただし、じん肺健診・電離放射線業務に係る健診は30年間

健診結果は「要配慮個人情報」(個人情報保護法)に該当します。要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見が生じるおそれがある情報のことで、特に厳重な管理が求められます。管理できる担当者を限定し、施錠できるキャビネットへの保管やアクセス権限を設定したシステムでの電子管理を徹底してください。

労働基準監督署への報告義務

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断を実施した後、遅滞なく「定期健康診断結果報告書(様式第6号)」を所轄の労働基準監督署に提出する義務があります。50人未満の事業場には報告義務はありませんが、記録の保存義務は変わらず存在します。

「要再検査」「要治療」への事後措置が義務

健診結果に異常所見があった従業員への対応は、単なる「声かけ」では不十分です。労働安全衛生法第66条の4・5に基づき、事業者には以下の対応が義務付けられています。

  • 医師(産業医等)の意見を聴く:就業上の措置が必要かどうかの判断を仰ぐ
  • 必要に応じた就業措置を講じる:就業場所の変更・労働時間の短縮・業務内容の見直しなど
  • 保健指導の実施:努力義務として、従業員に保健指導を行うことが求められる

「要再検査」の通知を受けた従業員を放置した結果、病状が悪化した場合、企業は安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクがあります。二次健診の受診勧奨を行い、その記録を残すことが重要です。

有害業務・深夜業従事者への特別対応:年2回の実施が必要なケースも

業種・業務内容によっては、通常の年1回の定期健康診断だけでは不十分な場合があります。特に製造業、建設業、運送業などでは注意が必要です。

特定業務従事者健診(年2回)

労働安全衛生規則第45条に基づき、以下の業務に従事する労働者は年2回の健康診断が義務付けられています。

  • 深夜業(午後10時〜午前5時の時間帯の業務)に常時従事する者
  • 粉じん・放射線・騒音など有害な環境での業務に従事する者
  • 著しく暑熱・寒冷な場所での業務に従事する者 など

深夜勤務のあるコンビニ・飲食店・工場・医療機関なども対象となりうるため、自社の勤務体制を確認してください。

特殊健康診断(業務別の専門健診)

有機溶剤・鉛・じん肺・電離放射線などの特定の有害因子にさらされる業務に従事する場合は、それぞれの規則(有機溶剤中毒予防規則、電離放射線障害防止規則など)に基づく特殊健康診断が必要です。一般的に6か月以内ごとに1回の実施が求められます。

「うちには関係ない」と思いがちですが、清掃業や印刷業、塗装業など身近な業種でも対象になるケースがあります。業務内容をあらためて確認し、産業保健の専門家や所轄の労働基準監督署に相談することをおすすめします。

実践ポイント:中小企業がすぐに取り組めること

ここまでの内容を踏まえ、中小企業の経営者・人事担当者が今日から実践できるポイントを整理します。

  • 対象者リストを見直す
    全従業員(正社員・契約社員・パート・アルバイト)の所定労働時間を確認し、健診義務の有無を整理する。週の所定労働時間が正社員の3/4以上の非正規社員が漏れていないかチェックする。
  • 健診機関と早めに調整する
    年1回の実施タイミングを決め、健診機関や産業医とスケジュール・費用を事前に取り決める。受診率を上げるため、就業時間内での集団健診を検討する。
  • 受診勧奨の仕組みを整備する
    受診案内を書面・メールで行い、記録を残す習慣をつける。受診拒否が発生した場合の対応フローを就業規則に定めておく。
  • 健診結果の管理ルールを決める
    結果を保管する担当者と保管場所(紙・電子)を明確にし、アクセス権限を限定する。5年間(特殊健診は種類によってより長期間)の保存義務を守る体制を整える。
  • 「要再検査」への対応フローをつくる
    健診結果を受け取ったら、異常所見のある従業員に対して速やかに二次健診を勧奨し、その経緯を記録する。産業医が選任されていない場合は、地域産業保健センター(各都道府県に設置)の無料相談を活用する。
  • 50人以上なら報告書の提出を忘れない
    常時50人以上を使用する事業場は、健診終了後に速やかに労働基準監督署へ報告書(様式第6号)を提出する。

まとめ

定期健康診断は、従業員の健康を守るだけでなく、企業が安全配慮義務を果たすための重要な制度です。「正社員だけが対象」「費用は折半でよい」「受診後は保管しておくだけ」——こうした誤解は、気づかないうちに法令違反や労務リスクにつながる可能性があります。

まずは自社の従業員構成と業務内容を確認し、対象者の洗い出しから始めてみてください。制度の理解と適切な運用が、従業員の信頼と健全な職場環境の構築につながります。疑問点については、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士、地域産業保健センターへの相談も積極的に活用してください。

よくある質問

Q1: パート従業員に健康診断を実施する義務はあるのでしょうか?

雇用形態ではなく労働時間で判断され、週の所定労働時間が正社員の3/4以上であれば実施義務があります。例えば正社員が週40時間の場合、週30時間以上勤務するパートは対象となります。

Q2: 健康診断の費用は従業員に一部負担させることはできますか?

いいえ、法律で義務付けられた健康診断の費用は原則として事業者が全額負担すべきとされています。厚生労働省の行政解釈でも、従業員に一部でも費用を負担させることは法の趣旨に反すると解釈されています。

Q3: 健康診断の受診を拒否する従業員に対して、何かペナルティを与えられますか?

従業員には受診義務があり、違反した場合は50万円以下の罰金が科せられる可能性がありますが、身体を物理的に強制することはできません。会社として書面やメールで適切に受診勧奨を行い、その記録を残しておくことが重要です。

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