「月額3万円から始められる?中小企業のオンラインカウンセリング導入を助成金活用でコストを抑えて進める方法」

従業員のメンタルヘルス不調による休職・離職は、中小企業にとって事業継続に直結するリスクです。厚生労働省の調査によれば、メンタルヘルスを理由とした休業者を抱える企業は年々増加傾向にあり、その影響は大企業よりも人員の余裕が少ない中小企業に、より深刻な形で現れます。

そうした背景から近年、注目を集めているのがオンラインカウンセリングの職場導入です。対面相談と比べて従業員が利用しやすく、事業所の所在地を問わずサービスを提供できる点で、人事・労務体制が手薄になりがちな中小企業にとって親和性の高い施策といえます。

しかし「導入したいが、何から手をつければよいかわからない」「コストや法的な責任の範囲が不明確で踏み出せない」という声も多く聞かれます。本記事では、法的根拠や実務上の注意点を踏まえながら、中小企業が実際にオンラインカウンセリングを職場に取り入れるための具体的なステップを解説します。

目次

そもそもオンラインカウンセリングは法的にどう位置づけられるのか

導入を検討する前に、法律上の整理を確認しておくことが重要です。混同されやすいいくつかの概念を区別して理解しましょう。

安全配慮義務との関係

労働契約法第5条は、使用者(企業)が従業員の心身の健康に配慮する「安全配慮義務」を負うことを定めています。メンタルヘルス対策が不十分だったことを理由に訴訟に発展した事例も存在することから、相談窓口の整備はリスク管理の観点からも重要な取り組みです。オンラインカウンセリングの導入は、この安全配慮義務を履行する手段の一つとして位置づけることができます。

ストレスチェック・産業医との違い

労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、年1回のストレスチェックの実施と、高ストレス者に対する医師(産業医)による「面接指導」の実施が義務づけられています。50人未満の事業場については、ストレスチェックは努力義務にとどまります。

ここで注意が必要なのは、オンラインカウンセリングはこの「面接指導」の代替にはならないという点です。面接指導は医師が行う医療行為に準じた対応であり、公認心理師や産業カウンセラーが行うカウンセリングとは法的に異なります。両者は補完的な関係にありますが、混同しないようにしましょう。

メンタルヘルス指針における位置づけ

厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」は、職場のメンタルヘルス対策を「セルフケア」「ラインケア」「事業場内産業保健スタッフによるケア」「事業場外資源によるケア」という4つの柱で整理しています。外部のオンラインカウンセリングサービスやEAP(従業員支援プログラム:Employee Assistance Program)は、この枠組みの中で「事業場外資源」として位置づけられます。国が推奨するメンタルヘルス対策の体系に沿った取り組みであることを、社内外に説明する際の根拠にできます。

導入前に押さえるべき準備ステップ

サービスを選ぶ前に、社内の実態把握と目的の明確化を行うことが、導入後の効果を左右します。

ステップ1:従業員のニーズと課題を把握する

まず、従業員アンケートやストレスチェックの集計結果を活用し、どの部署・層に課題が集中しているかを確認します。「相談したいことがあっても相手がいない」という声が多いのか、「仕事の負担が過重で疲弊している」という声が多いのかによって、導入すべきサービスの種類や重点対象が変わってきます。

ステップ2:予防レベルの目的を決める

メンタルヘルス対策には、大きく3つの予防レベルがあります。

  • 一次予防(未然防止):ストレスを抱える前の段階で、全従業員を対象に相談しやすい環境をつくる
  • 二次予防(早期発見・早期対処):ストレス反応が出始めた従業員を早期に支援し、休職を防ぐ
  • 三次予防(復職支援):休職中・復職後の従業員を継続的にサポートする

中小企業の多くは、まず一次・二次予防を主眼に置いた相談窓口の整備から着手するケースが実態に即しています。目的を絞ることで、サービス選定の基準も明確になります。

ステップ3:情報セキュリティの要件を確認する

カウンセリングの記録は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当します。センシティブ(機微)な情報として、通常の個人情報より厳格な取り扱いが求められます。事業者を選ぶ際には、SSL通信(暗号化された通信)の採用、データ保管サーバーの所在と管理体制、情報セキュリティの国際規格であるISO27001の取得有無などを確認することが重要です。

サービス事業者の選び方と導入形態の選択肢

オンラインカウンセリングを企業向けに提供する事業者は増えていますが、サービスの質や体制には差があります。比較検討の際に確認すべきポイントを整理します。

カウンセラーの資格・経験を確認する

「カウンセリング」という名称の使用自体に法的規制はないため、資格を持たない事業者がサービスを提供することも理論上は可能です。そのため、カウンセラーの資格を必ず確認する必要があります。

主な資格の概要は以下の通りです。

  • 公認心理師:2018年に施行された公認心理師法に基づく国家資格。心理に関する支援を行う唯一の国家資格
  • 臨床心理士:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格。実績と知名度が高い
  • 産業カウンセラー:一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格。職場領域に特化した専門性を持つ

職場のメンタルヘルス支援には、産業領域の知識と経験を持つカウンセラーが対応しているかどうかを重視して選びましょう。

緊急時の対応プロトコルを確認する

カウンセリング中に利用者から自殺念慮(自分を傷つけたいという気持ち)が示されるケースは、実際に起こりえます。こうした緊急事態に対して、事業者側がどのような対応手順(プロトコル)を持っているかは必ず確認してください。適切な対応体制がない事業者を選ぶことは、企業にとっての安全配慮義務の観点からもリスクになります。

企業規模・用途別の導入形態

導入形態にはいくつかの選択肢があります。中小企業に多い形態は以下の2つです。

  • EAPサービス(パッケージ型):外部の専門事業者が相談窓口の運営を丸ごと請け負う形態。社内にカウンセラーを置けない企業や、運用管理の負担を外部に委託したい企業に適しています。月額の定額制が多く、費用の見通しが立てやすい点もメリットです。
  • 単発セッション型(チケット制):1回ごとに利用料を支払う形態。試験的に導入したい場合や、コストを利用実績に連動させたい場合に向いています。初期費用を抑えて始められる反面、1件あたりのコストが割高になる場合もあります。

健康保険組合に加入している企業であれば、健保組合が提供するEAPプログラムを活用できる場合もあります。まず健保組合に問い合わせてみることをお勧めします。

プライバシー保護と情報管理のルールづくり

従業員がオンラインカウンセリングを利用するかどうかの判断に大きく影響するのが、「相談内容が会社に知られるのではないか」という不安です。この懸念に丁寧に対処することが、利用率を高める上で欠かせません。

守秘義務の範囲を明文化する

原則として、個人の相談内容は会社に開示しないことを就業規則やガイドラインに明記します。会社側に報告されるのは、利用件数や利用率などの統計データに限定するのが一般的な運用方法です。

一方で、本人や他者に重大な危険が及ぶと判断される場合(たとえば自殺の危機が切迫しているケースなど)については、守秘義務の例外として会社や家族への連絡が行われる可能性があることも、事前に明示しておく必要があります。この「例外ルール」を明確にしておくことは、従業員と企業の双方を守るために重要です。

個人情報保護法上の対応

カウンセリングサービスの利用に際しては、利用目的の明示と本人の同意取得が必要です。特に、カウンセリング記録を会社側が取得・閲覧するような仕組みにする場合は、要配慮個人情報の取得として本人の明示的な同意が必要になります。多くの場合、統計データのみを会社が受け取る形にすることで、こうした法的な複雑さを回避できます。

利用率を高め、効果を測定するための実践ポイント

制度を整えても使われなければ意味がありません。従業員に実際に活用してもらうための工夫と、経営層に成果を示すための指標設定について解説します。

スティグマ(偏見)を取り除く周知の工夫

カウンセリングを利用することへの心理的なハードルの一因として、「利用しているとメンタルが弱いと思われる」「出世に影響するかもしれない」といった偏見があります。これを「スティグマ」と呼びます。

この偏見を軽減するために有効なのは、管理職や経営者自身がメンタルヘルスケアの必要性を積極的に発信することです。「つらい時に相談することは当然のことであり、組織としてそれを支援する」というメッセージを繰り返し伝えることが、長期的な利用文化の醸成につながります。また、制度の存在を入社時のオリエンテーションや社内報などで定期的に周知し、「知ってはいたが使うタイミングを逃した」という状況を防ぐことも重要です。

KPIの設定と経営層への説明

導入効果を測定する指標(KPI)として、以下のような項目が活用されています。

  • カウンセリングサービスの利用率(全従業員に対する利用者の割合)
  • メンタルヘルス不調を理由とした休職者数・休職期間の変化
  • ストレスチェックの高ストレス者比率の推移
  • 従業員エンゲージメント調査での「会社への信頼感」スコアの変化

短期間で劇的な数値変化が現れるものではありませんが、1〜2年単位での傾向を追うことで効果を検証できます。休職1件あたりにかかるコスト(代替人員の確保、業務停滞のロス等)と比較する形で費用対効果を示すことも、経営層への説明として有効なアプローチです。

助成金・補助金の活用も検討する

導入コストの負担を軽減する手段として、公的支援の活用も検討に値します。厚生労働省の「職場環境改善計画助成金」のメニューや、各都道府県に設置されている「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」が提供する無料の専門家相談・支援などを活用することで、費用面・情報面の両方でサポートを受けることができます。さんぽセンターは中小企業のメンタルヘルス対策に特化した無料支援を行っており、まずここへの相談から始める方法も選択肢の一つです。助成金は制度の改廃が頻繁にあるため、最新情報は厚生労働省の公式ウェブサイトや都道府県労働局で確認するようにしてください。

まとめ

オンラインカウンセリングの職場導入は、従業員のメンタルヘルスを守るための実効性の高い手段であると同時に、企業の安全配慮義務を果たす取り組みとしても意義があります。特に専門人材や運用体制を持ちにくい中小企業にとって、外部のEAPサービスやオンライン相談窓口を活用することは、現実的かつ効率的なアプローチです。

導入に向けた要点を改めて整理すると、以下のようになります。

  • オンラインカウンセリングはストレスチェックや産業医による面接指導の代替ではなく補完として位置づける
  • サービス選定ではカウンセラーの資格・緊急時対応・セキュリティ体制を必ず確認する
  • 個人の相談内容は会社に開示しない原則を明文化し、従業員に丁寧に説明する
  • 管理職が率先してメンタルヘルスケアの重要性を発信し、利用しやすい職場文化をつくる
  • 利用率や休職者数などの指標で効果を追跡し、継続的な改善につなげる

まず小さく始めることをためらう必要はありません。トライアル期間を設けているサービス事業者を活用したり、産業保健総合支援センターに相談したりしながら、自社の実情に合った形で一歩を踏み出すことが、従業員と組織双方の健全な成長に寄与するはずです。

よくある質問

Q1: オンラインカウンセリングはストレスチェックや産業医の面接指導の代わりになりますか?

いいえ、代わりになりません。産業医による面接指導は医療行為に準じた対応であり、公認心理師や産業カウンセラーによるカウンセリングとは法的に異なります。両者は補完的な関係にありますが、混同しないことが重要です。

Q2: 50人未満の中小企業はストレスチェックを実施する必要がありますか?

法的には努力義務です。常時50人以上の企業と異なり、50人未満の事業場ではストレスチェックの実施が努力義務にとどまります。ただしオンラインカウンセリングは安全配慮義務の履行手段として導入は有効です。

Q3: カウンセリングの記録をサーバーに保管する際に特に注意すべき点は何ですか?

カウンセリング記録は個人情報保護法上の『要配慮個人情報』に該当するため、通常より厳格な取り扱いが必要です。SSL通信の採用、サーバー管理体制の確認、ISO27001などの情報セキュリティ規格の取得有無を事業者選定時に確認することが重要です。

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