【社労士監修】離職票の作成方法と提出期限まで、中小企業が迷わず進める完全手順ガイド

退職者が出るたびに「離職票の手続きって、どうするんだったっけ?」と感じる人事担当者は少なくありません。年に数回しか行わない手続きだからこそ、手順を忘れてしまいがちです。しかし、離職票の遅延や記載ミスは、退職者の失業給付申請に直接影響し、会社へのクレームや信頼失墜につながるリスクがあります。

この記事では、離職票の作成手順から提出期限、よくある失敗例まで、中小企業の経営者・人事担当者が実務で迷いやすいポイントを整理してお伝えします。

目次

離職票とは何か|書類の種類と役割を整理する

まず「離職票」という言葉が指す書類の全体像を整理しておきましょう。実務では複数の書類が登場するため、それぞれの役割を理解しておくことが重要です。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届:雇用保険の被保険者資格が消滅したことをハローワークへ届け出る書類です。これが手続きのスタートとなります。
  • 離職証明書(3枚複写):ハローワークが離職票を発行するための根拠書類です。賃金額や離職理由を会社が記載します。
  • 離職票-1(被保険者資格喪失確認通知書):雇用保険番号・氏名などを確認するための書類で、退職者本人へ交付されます。
  • 離職票-2(離職証明書の本人控):賃金額や離職理由が記載された書類で、退職者が失業給付申請の際に使用します。

退職者が「離職票をください」と言う場合、求めているのは主に「離職票-1」と「離職票-2」の2枚です。会社はこれらをハローワークから受け取り、退職者へ渡す橋渡し役を担っています。

なお、離職票の作成・提出義務は雇用保険法第7条・第8条および雇用保険法施行規則第7条に基づいており、法律上の義務であることを改めて認識しておく必要があります。

離職票が必要なケース・不要なケース|59歳以上は義務

「本人が不要と言っているので作らなかった」という対応は、場合によっては法令違反になります。離職票の要否判断は、以下の基準に沿って行ってください。

離職票が必要なケース

  • 退職者が失業給付(基本手当)を受給する予定がある場合
  • 退職者が59歳以上の場合(本人の意思にかかわらず作成・交付が義務)

離職票が不要なケース

  • 退職者に次の就職先が既に決まっており、本人から離職票不要の意思表示がある場合
  • 雇用保険の被保険者でない場合(週所定労働時間が20時間未満など)

注意すべきは、退職時点では不要と言っていた退職者が、後になって「やはり必要になった」と申し出てくるケースが実務上よくあることです。そのため、離職票の要否については書面で確認・保管しておく習慣をつけることを強くおすすめします。

パートやアルバイトであっても、雇用保険の被保険者(週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある場合に加入)であれば、同様のルールが適用されます。短期雇用者や有期契約者の場合も、被保険者であれば手続きが必要です。

離職票の作成手順|退職日から10日以内に提出する

手続きの全体の流れを把握することで、作業漏れや期限超過を防ぐことができます。標準的なケースでは、以下の順序で進めます。

STEP1:必要書類の準備

離職証明書(離職票-2の原本)を記載するにあたって、以下の書類を手元に用意します。

  • 賃金台帳(直近6か月分):月ごとの賃金額を正確に記載するために必要です。
  • 出勤簿またはタイムカード(直近6か月分):賃金支払いの基礎となった日数の確認に使います。
  • 雇用保険被保険者証:被保険者番号の確認のために使用します。

STEP2:雇用保険被保険者資格喪失届の作成

退職者の氏名・被保険者番号・離職年月日・離職理由などを記載します。離職理由の区分(後述)は給付内容に直結するため、正確に記載してください。

STEP3:離職証明書の作成

離職前6か月分の賃金を月ごとに記入します。賃金は税や社会保険料を控除する前の総支給額を記載してください。残業代や通勤手当も含みます。欠勤控除がある場合は「賃金支払の基礎となった日数」を正確に記入することが求められます。

STEP4:ハローワークへの提出(退職日の翌日から10日以内)

提出期限は退職日の翌日から起算して10日以内です(雇用保険法施行規則第7条)。提出方法は以下の3通りです。

  • 窓口持参:書類の不備をその場で確認・修正できるため、確実性が最も高い方法です。
  • 郵送:書類に不備があると差し戻しとなり、期限超過につながるリスクがあります。
  • 電子申請(e-Gov):大企業では義務化されており、中小企業にも推奨されています。一度慣れると効率が上がります。

STEP5:離職票の受け取りと退職者への交付

ハローワークが審査・受理した後、離職票-1と離職票-2が会社に返送されます。受け取り次第、速やかに退職者へ郵送または手渡ししてください。退職者は離職票を受け取ってから、ハローワークで失業給付の申請手続きができるようになります。

離職理由の書き方|会社都合・自己都合の判断が給付内容を左右する

離職票の作成において最も慎重を要するのが、離職理由の区分です。この区分によって、退職者が受け取れる失業給付の内容が大きく変わります。

主な離職理由の区分と特徴

  • 特定受給資格者(会社都合):倒産・解雇・退職勧奨などが該当します。給付制限期間なしで、給付日数も多くなります。
  • 特定理由離職者:有期契約の雇い止めや、介護・疾病などやむを得ない理由による自己都合退職が該当します。給付制限が緩和されます。
  • 一般の自己都合:個人的な転職・結婚・引越しなどが該当します。原則として給付制限期間が設けられます。

2025年4月1日施行の改正雇用保険法により、自己都合退職の給付制限期間は原則2か月に短縮されました。ただし、5年以内に2回以上の自己都合退職がある場合は3か月となります。適用される制度の詳細については、管轄のハローワークまたは社会保険労務士にご確認ください。

実務上のトラブルとして多いのが、会社側と退職者の離職理由の認識がずれているケースです。ハローワークは双方の主張が異なる場合、事実確認を行います。会社としては、退職届・合意書・面談記録・関連するメールなどの証拠書類を保管しておくことが不可欠です。

特に注意が必要なのが退職勧奨のケースです。「会社から退職を勧められ、本人が了承した」という場合、実態は会社都合に該当する可能性が高く、自己都合として処理してしまうと不正記載とみなされるリスクがあります。

また、懲戒解雇の場合も所定のコードで記載する必要があります。会社として「問題行為があった」と判断しているからといって、コードを誤って記載すると後日修正を求められることがあります。不明な場合はハローワークに事前相談することをおすすめします。

実践ポイント|中小企業が今すぐ取り組める体制づくり

離職票の手続きは、頻度が低いからこそ仕組み化しておくことが重要です。以下のポイントを参考に、社内の体制を整えてみてください。

チェックリストを作成・更新する

退職者が出るたびに「何をいつまでにやるか」を確認できるチェックリストを作成しておきましょう。退職日の決定→必要書類の準備→提出→離職票の交付という流れを、日付とともに管理すると期限超過を防ぎやすくなります。

59歳以上の退職者を必ず把握する

59歳以上の退職者については、本人の意思にかかわらず離職票の作成・交付が義務です。年齢確認のフローを退職手続きに組み込んでおくと、見落としを防げます。

離職票の要否確認を書面で行う

退職者から「離職票は不要」と口頭で言われた場合でも、書面で確認し保管しておきましょう。後日のトラブル防止に有効です。

電子申請への移行を検討する

e-Govを活用した電子申請は、窓口に出向く手間が省け、書類の郵送リスクもありません。初期設定に多少の手間はかかりますが、長期的には業務効率の向上につながります。中小企業でも積極的に導入を検討する価値があります。

専門家への相談も選択肢に入れる

社会保険労務士がいない場合、離職票作成から雇用保険手続き全般まで自社対応する必要があり、担当者の負担が大きくなりがちです。特殊なケース(懲戒解雇・退職勧奨・雇い止めなど)が発生した場合は、専門家への相談を早めに行うことが、誤った処理を防ぐ近道です。

また、退職者の中にはメンタルヘルス上の問題を抱えているケースもあります。そうした社員が安心して離職後の生活に移行できるよう、在職中からメンタルカウンセリング(EAP)などの支援を整えておくことも、会社としての重要な配慮のひとつです。

まとめ

離職票の作成と提出は、法律上の義務であるとともに、退職者の生活保障に直結する重要な手続きです。主なポイントを以下に整理します。

  • 提出期限は退職日の翌日から10日以内(雇用保険法施行規則第7条)
  • 59歳以上の退職者は本人の意思にかかわらず作成・交付が義務
  • 離職理由の区分は給付内容に直結するため、実態に基づいて正確に記載する
  • 退職勧奨や懲戒解雇など特殊ケースは、事前にハローワークへ相談することが安全
  • 離職票の要否確認は書面で行い保管する
  • 社内チェックリストを活用し、期限超過を防ぐ体制を整える

離職票手続きの精度を高めることは、退職者との信頼関係を守ることにもつながります。また、退職に至る過程で従業員の心身の健康が課題になっているケースも少なくありません。在職中から産業医サービスを活用し、健康管理体制を整えておくことが、離職リスクの低減にも役立ちます。日頃から仕組みを整えておくことで、いざというときに慌てずに対応できる会社づくりを進めてください。

よくある質問

離職票の提出期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

提出が遅れた場合でも、ハローワークへの提出自体は可能です。ただし、退職者の失業給付申請が遅れることになり、退職者から苦情が入ったり、場合によっては損害賠償を求められるリスクもゼロではありません。期限超過が判明した時点で速やかにハローワークへ連絡・提出し、退職者にも事情を説明することが大切です。再発防止のために、退職日決定時点でスケジュール管理表に提出期限を明記する習慣をつけましょう。

退職者が「離職票は不要」と言っていたのに、後から「やはり欲しい」と連絡してきました。どう対応すればよいですか?

退職後であっても、離職証明書の提出と離職票の発行手続きを行うことは可能です。ハローワークへ連絡し、対応方法を確認してください。なお、離職票の作成義務が生じるのは原則として退職時ですが、退職者から請求があった場合には速やかに対応する姿勢が求められます。こうしたトラブルを防ぐためにも、退職時には離職票の要否を書面で確認・保管しておくことを強くおすすめします。

パートタイム従業員が退職する際も離職票は必要ですか?

パートタイム従業員であっても、雇用保険の被保険者(週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある方)であれば、正社員と同様に離職票の手続きが必要です。週20時間未満で雇用保険に加入していない場合は対象外となりますが、雇用保険の加入状況を確認したうえで判断してください。不明な場合は管轄のハローワークに問い合わせると確実です。

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