「EAP導入したのに誰も使わない」を解決する従業員への周知・プロモーション完全ガイド

EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)を契約した後、「思ったより従業員が使ってくれない」という声は、中小企業の経営者・人事担当者から非常によく聞かれます。EAPとは、従業員が仕事・家庭・健康などさまざまな問題を抱えたときに、専門家へ相談できる福利厚生サービスです。費用をかけて導入したにもかかわらず、利用されなければ投資が無駄になるだけでなく、従業員のメンタルヘルスリスクも放置されたままになってしまいます。

実際、日本におけるEAPの利用率は一般的に2〜5%程度にとどまるとされており、「導入したこと自体で満足してしまっている」企業は少なくありません。しかし、EAPは「契約して終わり」ではありません。従業員に知ってもらい、安心して使ってもらうための社内プロモーション活動こそが、EAPの真の効果を引き出す鍵です。

本記事では、EAP導入後に利用率が伸び悩む原因を整理しながら、中小企業でも実践できる具体的なプロモーション方法を段階的に解説します。メンタルカウンセリング(EAP)の導入を検討している方や、すでに契約済みで活用に課題を感じている方に、ぜひ参考にしてください。

目次

なぜEAPは「導入しただけ」では使われないのか

EAPの利用率が低い背景には、複数の構造的な課題があります。これらを正確に把握することが、効果的なプロモーション設計の第一歩となります。

スティグマ(心理的抵抗感)の壁

従業員がEAPを使わない最大の理由のひとつが、「精神的に弱い人が使うもの」というイメージです。これをスティグマと呼びます。特に日本では「我慢することが美徳」とされる文化的背景もあり、相談窓口の存在を知っていても、自ら使おうとする従業員は限られています。

このスティグマを放置したまま「EAPを導入しました」と告知するだけでは、むしろ「メンタルが弱い人向けのサービスを会社が用意した」というメッセージを発信してしまいかねません。

秘密保持への疑念

「相談した内容が会社に筒抜けになるのではないか」という不安も、利用をためらわせる大きな要因です。EAPは、個人情報保護法および労働安全衛生法上の秘密保持規定に基づき、個人の相談内容を原則として企業側に開示しない仕組みになっています。しかし、この仕組みが従業員に十分伝わっていなければ、不信感から利用されません。

存在自体を知らない・忘れている

導入時にメールを1通送っただけ、というケースは非常に多く見られます。人は1回見た情報を数日で忘れてしまいます。継続的かつ複数のチャネルで繰り返し周知しなければ、従業員の記憶には残りません。

管理職が機能していない

部下へのEAP案内において管理職は重要な役割を担いますが、管理職自身がEAPの内容や価値を理解していない場合、案内が現場に届きません。人事部門から全従業員への直接周知には限界があるため、管理職を「情報の媒介者」として育成することが欠かせません。

導入直後に行うべき「認知獲得フェーズ」の取り組み

EAPを契約した直後の数週間は、従業員への認知を広げる最も重要な時期です。この時期に適切な施策を打てるかどうかが、その後の利用率に大きく影響します。

キックオフ説明会の実施

全従業員を対象としたキックオフ説明会(オンライン併用も可)を開催しましょう。説明会で伝えるべき内容は主に以下の通りです。

  • EAPとはどのようなサービスか(利用できる相談の種類・範囲)
  • 相談内容は会社に知られない(秘密保持の仕組みの具体的な説明)
  • 利用方法・連絡先・アクセス方法(電話・チャット・オンラインなど)
  • 費用は会社が負担しており、従業員の自己負担はない

単なる制度説明に終わらせず、「どんな場面で使えるか」を具体的なシーン別事例で示すことが重要です。たとえば、「育児と仕事の両立で悩んだとき」「家族の介護について誰かに話を聞いてほしいとき」「借金・お金の問題で困ったとき」などの例を挙げると、心理的なハードルが下がります。

経営者・トップからのメッセージ発信

EAPの価値を従業員に伝える上で、経営者や役員からのメッセージは非常に効果的です。「会社として従業員の心身をサポートしていきたい」という姿勢をトップが明示することで、「利用を奨励している」という社内文化が生まれます。逆に、人事担当者だけが発信していると、「会社が形式的に導入した制度」という印象にとどまりやすくなります。

手元に残るツールの配布

説明会と同時に、以下のような手元に残るツールを配布すると認知が定着しやすくなります。

  • ポケットサイズのカード(フリーダイヤルやQRコードを記載)
  • デスクに置けるポップスタンド
  • スマートフォンの壁紙用デジタルコンテンツ
  • ステッカーやマグネットなど、目に入りやすいアイテム

「いざというときに連絡先がわからない」という状況を防ぐことが目的です。手元にカードがあれば、困ったときにすぐ手が届きます。

継続して利用率を高める「利用促進フェーズ」の施策

認知を広げた後は、継続的に利用を促す施策が必要です。1回の告知で終わらせず、定期的・複数チャネルでのアプローチを維持してください。

社内報・イントラネット・チャットツールへの定期掲載

社内報やイントラネット、SlackやTeamsなどのビジネスチャットツールに、月1回以上の頻度でEAPに関する情報を掲載することを目安にしてください。「今月のEAP活用シーン」「こんな相談もできます」といった切り口で、繰り返し目に触れる機会をつくります。

ストレスチェック結果と連動した案内

労働安全衛生法第66条の10に基づくストレスチェック制度(従業員50人以上の事業場に義務)では、高ストレスと判定された従業員への対応が求められます。この高ストレス者への個別案内にEAPの情報を同封・同時案内することは、最も効果的な導線のひとつです。「今すぐ誰かに相談できる場所がある」ことを、必要なタイミングで伝えられます。なお、ストレスチェックは49人以下の事業場には努力義務ですが、EAPとの連動活用は規模を問わず有効です。

利用実績の定期共有

「〇月は〇〇件の相談がありました」という形で、個人が特定されない集計データを社内に共有することも有効です。利用実績を見せることで、「実際に使っている人がいる」という安心感と信頼感が醸成され、利用への心理的ハードルが下がります。

管理職へのEAP研修の組み込み

管理職研修のカリキュラムに「部下へのEAP案内方法」を組み込みましょう。「部下が悩んでいそうな場合にどう声をかけるか」「EAPをどのタイミングで案内するか」をロールプレイ形式で学ぶことで、管理職が実際に現場で動けるようになります。管理職が機能することで、人事部門だけでは届かない層へのリーチが可能になります。

スティグマを下げるための表現・文脈の工夫

EAPの利用率を高めるためには、サービスの「見せ方」にも細心の注意が必要です。言葉の選び方ひとつで、従業員の受け取り方は大きく変わります。

名称・呼び方を工夫する

「メンタルヘルス相談」という名称は、スティグマを強化してしまう可能性があります。「ライフサポート窓口」「よろず相談室」「従業員サポートダイヤル」といった、ポジティブで生活全般に開かれたイメージの名称を社内での呼び方として採用することを検討してください。

心理以外の相談窓口としても前面に出す

多くのEAPサービスには、法律相談・家計・税金・育児・介護・キャリアなど、心理相談以外のメニューも含まれています。これらを前面に出して「困ったことは何でも相談できる場所」として紹介することで、「自分には関係ない」と感じる従業員への間口が広がります。

「不調時の駆け込み場所」ではなく「ウェルビーイングのためのツール」として伝える

EAPを「病気や不調になったときのための窓口」として位置づけると、健康な従業員は「自分には不要」と判断します。「より良く働くための支援ツール」「パフォーマンスを維持・向上させるための投資」という文脈で伝えることで、予防的・積極的な利用を促せます。

多様な従業員への配慮

外国籍従業員がいる場合は、対応言語を明示して周知しましょう。テレワーク勤務者には、チャットやオンライン相談のアクセス方法を強調します。非正規雇用の従業員にも利用資格があることを明確に伝えることが重要です。

実践ポイント:プロモーション活動を継続するための仕組みづくり

EAPのプロモーションは単発の取り組みではなく、継続的な活動として組織に根付かせることが求められます。以下の実践ポイントを参考に、仕組みとして整備してください。

  • 年間プロモーション計画を作成する:キックオフ説明会・ストレスチェック連動案内・季節ごとのテーマ告知(繁忙期前、年度変わりなど)を年間スケジュールに落とし込む
  • 担当者を明確にする:プロモーション活動の主担当を人事部門に設置し、EAP会社との窓口も一本化する
  • EAP会社からのサポートを最大限活用する:多くのEAP会社はポスター・リーフレット・説明会実施などの支援ツールを提供している。自社での再作成の手間を省きつつ、社内文化に合わせてカスタマイズする
  • 利用率データを定期的に確認し、施策を見直す:四半期ごとに利用状況を確認し、利用が少ない部署や層へのアプローチを調整する
  • 管理職を巻き込んだPDCAサイクルを回す:管理職会議でEAPの活用状況を定期的に共有し、現場からのフィードバックを施策改善に活かす

また、過労死等防止対策推進法では、相談窓口の設置と周知が事業主の責務として明示されています。EAPを導入するだけでなく、その存在を従業員に知らせることは、法的な観点からも求められています。

まとめ

EAPは、契約するだけでは機能しません。従業員が安心して使えるようにするための継続的な社内プロモーション活動こそが、投資対効果を最大化する唯一の方法です。

特に中小企業では、人事担当者の人数が限られる中で、管理職を巻き込んだ役割分担と、EAP会社のサポートを上手に活用する仕組みが重要です。「メール1通で終わり」「契約したから安心」という状態から抜け出し、年間計画に基づいた複数チャネルでの継続的な周知活動を実践してください。

スティグマへの配慮、秘密保持の明確な説明、身近な相談テーマからの切り口など、従業員の心理的なハードルを丁寧に取り除く工夫の積み重ねが、利用率の向上につながります。EAPを「使われるサービス」として機能させることで、従業員のウェルビーイング向上と組織の生産性維持・向上の両立が可能になります。

EAPの導入や活用促進について専門家のサポートが必要な場合は、ぜひメンタルカウンセリング(EAP)のサービスをご確認ください。また、従業員のメンタルヘルス対策を総合的に強化したい場合は、産業医サービスとの連携も効果的な選択肢のひとつです。

よくある質問(FAQ)

EAPを導入したばかりですが、まず何から始めればよいですか?

最初に行うべきは、全従業員を対象としたキックオフ説明会の開催です。EAPの概要・利用方法・秘密保持の仕組みを丁寧に説明し、手元に残る連絡先カードを配布することが認知獲得の基本となります。同時に、経営者からのトップメッセージを発信することで、会社がEAP利用を奨励しているというメッセージを明確に伝えましょう。

「相談内容が会社にバレる」という従業員の不安にどう対応すればよいですか?

EAPでは、個人情報保護法および労働安全衛生法上の秘密保持規定に基づき、個人の相談内容は原則として企業側に開示されません。この仕組みを、説明会や配布資料で具体的に説明することが重要です。「誰が相談したか、何を相談したかは会社には伝わらない」と明言し、安心感を与えることが利用促進の大前提になります。

小規模な会社でも継続的なプロモーション活動は可能ですか?

可能です。多くのEAP会社はポスター・リーフレット・社内向け案内文のテンプレートなど、プロモーション支援ツールを提供しています。これらを活用すれば、人事担当者が少ない中小企業でも負担を抑えながら継続的な周知活動が行えます。社内チャットへの月1回の投稿や、管理職を通じた口頭での案内を組み合わせるだけでも、認知度の維持・向上に大きな効果があります。

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