メンタルヘルス不調による休職者を復職させたものの、数ヶ月後に再び体調を崩して再休職してしまった――。こうした経験を持つ中小企業の人事担当者は少なくありません。「また繰り返すのではないか」という不安を抱えながら、どう対応すればよいか分からないまま日々の業務をこなしているケースも多く見受けられます。
復職はゴールではなく、支援の新たなスタートラインです。特に復職後6ヶ月間は再発リスクが高い時期とされており、この期間をいかにサポートするかが再休職の防止に直結します。その中核を担うのが「フォローアップ面談」です。
本記事では、中小企業の経営者・人事担当者が実践できる、フォローアップ面談の具体的な進め方と再発防止のポイントを解説します。
なぜ復職後のフォローアップ面談が必要なのか
復職後の再発・再休職は、決して珍しいことではありません。メンタルヘルス不調による休職者のなかには復職後6ヶ月以内に再休職するケースが一定数存在しており、「一度復職できたから大丈夫」と安心してフォローを怠ると、取り返しのつかない事態につながる可能性があります。
法律面からも、フォローアップ面談は企業の義務として位置付けられる側面があります。労働契約法第5条は、使用者が労働者の生命・身体・健康を危険から保護する「安全配慮義務」を規定しています。復職後に過重な業務負荷をかけたり、状態悪化のサインを見逃したりして再発を招いた場合、安全配慮義務違反を問われる可能性も否定できません。
また、厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援を5つのステップで整理しており、その最終段階である「第5ステップ」として「職場復帰後のフォローアップ」が明確に位置付けられています。具体的には、症状の再燃・再発の確認、勤務状況の評価、職場環境の改善、支援計画の見直しがフォローアップの内容として示されています。
中小企業では専任の産業保健スタッフを置くことが難しい場合もありますが、だからこそ「仕組み」として面談を制度化しておくことが重要です。担当者が変わっても継続できる体制を整えておきましょう。
フォローアップ面談のタイミングと頻度
フォローアップ面談を「なんとなく月1回やっている」という企業もありますが、タイミングを意識することで再発の予兆を的確にキャッチできます。以下のスケジュールを参考に、計画的に実施してください。
復職直後(1〜2週間以内)の面談
最初の面談が最も重要です。職場に戻ったばかりの時期は、環境の変化に対する緊張や不安が最も高まります。「思っていたより疲れる」「周囲の目が気になる」といった心理的ストレスが急増するのもこの時期です。早い段階で本人の状態を確認し、必要な調整を行うことで、その後の経過が大きく変わります。
復職後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の節目面談
節目ごとの定期面談は必ず実施しましょう。特に3ヶ月目・6ヶ月目は再発リスクが高まりやすい時期であり、業務量が徐々に増えてきた頃と重なります。「もう大丈夫だろう」と思い込んでフォローを薄くしてしまうことで、状態悪化を見逃すケースが少なくありません。
業務量・役割が変わるタイミング
時短勤務から通常勤務への移行、担当業務の追加、部署異動など、環境や役割が変化する前後は必ず面談を実施してください。変化はストレスの増大につながりやすく、再発の引き金になることがあります。変化の前に「今の体調で対応できそうか」を本人と確認し、必要に応じて調整する姿勢が大切です。
本人から相談があったとき
定期面談のスケジュールとは別に、本人がいつでも相談できる窓口を明確にしておくことも重要です。「しんどくなったら誰に連絡すればよいか」を本人が把握していないケースは意外に多く、困ったときのSOSが出せずに悪化してしまうことがあります。連絡先と対応の流れをあらかじめ共有しておきましょう。
面談で確認すべきチェック項目
「とりあえず話を聞く」だけで終わってしまい、何をチェックすればよいか分からないという声をよく聞きます。面談の質を高めるために、以下の5つの視点を参考にしてください。
①身体面のサイン:睡眠・食欲・疲労感
メンタル不調の再発は、身体面に先行してサインが出ることがあります。「最近の睡眠はとれていますか?」「食欲はどうですか?」「仕事終わりの疲れはどの程度ですか?」といった具体的な質問を投げかけ、変化がないかを確認します。「眠れない日が続いている」「食欲がない」という状態が続いている場合は、早めに主治医や産業医への相談を促しましょう。
②職場環境面:業務量・人間関係のストレス
「業務量は今の体調で無理なく続けられていますか?」「職場の人間関係で気になることはありますか?」といった確認が必要です。本人が「大丈夫です」と答えた場合でも、表情や言葉のトーンに違和感があれば深掘りしてみることも大切です。
③治療継続の確認:服薬・通院状況
「通院・服薬は続けられていますか?」という確認は、治療の継続をサポートする観点から行います。復職後しばらくすると「もう薬をやめたい」「病院に行くのが面倒になってきた」と感じる方もいますが、主治医の判断なく治療を中断することは再発リスクを高める可能性があります。強制ではなく、継続を支援する姿勢で確認しましょう。なお、治療方針については必ず主治医にご相談ください。
④SOS発信の環境確認
「しんどいと感じたときに誰かに相談できていますか?」という質問は、面談のたびに確認する価値があります。困ったときに相談できる環境があるかどうかが、再発を防ぐ大きな要因の一つだからです。人事担当者への連絡先のほか、メンタルカウンセリング(EAP)などの外部相談窓口も合わせて案内しておくと、より安心な体制を整えることができます。
⑤短期・中期の業務目標の擦り合わせ
本人・上司・人事の三者で「今月はここまでを目標にする」という具体的な業務目標を共有しておくことが大切です。目標が曖昧なまま復職を続けると、本人も上司も「どこまでやってよいか」が分からず、知らず知らずのうちに過負荷になるケースがあります。
面談における姿勢とコミュニケーションの注意点
どれだけ良い質問を準備しても、面談の進め方や担当者の姿勢が適切でなければ、本人は本音を話してくれません。面談を実施する際には以下の点を意識してください。
- 問い詰めない・評価しない:「なぜこれができないの?」「まだ本調子じゃないの?」といった言葉は、本人に強いプレッシャーを与えます。「今の状況を教えてください」という姿勢を基本としましょう。
- 傾聴を優先する:面談の冒頭10分程度は、こちらから情報を引き出そうとするよりも、本人が話したいことを話せる空間を作ることを意識してください。
- 「普通に戻ること」を急がせない:「早く元気になってね」「もう大丈夫でしょ」という言葉は、善意であっても本人には焦りやプレッシャーとして伝わることがあります。回復のペースは人それぞれであることを前提に接しましょう。
- 今日の状態を基準にする:昨日・先週と比較して一喜一憂するのではなく、「今日はどうですか」という視点で現状を確認することが重要です。
- 記録を必ず残す:面談の日付・話した内容・確認した課題・次回の面談予定を文書として記録しておきましょう。記録の蓄積が、状態の変化を把握するうえで非常に役立ちます。また、トラブル発生時の記録としても有用です。
上司・現場管理職との連携と情報共有のバランス
中小企業において、復職支援でよく生じる課題の一つが「人事はフォローしたいが、現場管理職がどう接すればよいか分からない」という温度差です。現場管理職が「特別扱いはできない」と感じてしまうと、業務負荷の調整が進まず、本人が無理をしてしまうことになりかねません。
こうした連携を円滑にするためには、次のような取り組みが有効です。
- 面談前に上司からも状況をヒアリングする:人事担当者が本人と面談する前に、直属の上司から業務上の変化や気になる言動がないかを確認しておくと、面談の質が高まります。
- 情報共有の範囲をあらかじめ決めておく:健康情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、本人の同意なく病名や診断内容を上司に開示することは原則できません。「体調管理のための配慮が必要である」という事実と、具体的な配慮内容(業務量の制限、残業の禁止など)を共有する範囲に留め、詳細な病状は本人の同意を得てから共有するという原則を社内で徹底しましょう。
- 管理職向けの簡単な案内資料を用意する:「復職した社員への接し方」を一枚の資料にまとめておくと、現場管理職の不安や戸惑いを軽減できます。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任が義務付けられており、産業医サービスを活用することで、医療的な観点から復職支援や面談の内容をサポートしてもらうことが可能です。50人未満の事業場でも、地域産業保健センター(産業保健総合支援センターの窓口)を活用する方法があります。医療と職場が連携した支援体制を整えることが、再発防止の根幹となります。
実践ポイントまとめ:小さく始めて継続する仕組みを作る
フォローアップ面談を「完璧にやろう」とすると、担当者の負担が大きくなり結果的に続かなくなってしまいます。まずは以下のポイントを意識して、小さく始めることを優先してください。
- 面談のスケジュールをあらかじめ決めておく:復職時に「1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後に面談する」と本人と合意しておくことで、実施率が上がります。
- 簡単な面談シートを用意する:睡眠・疲労感・通院状況など基本項目を記載したシートを使えば、担当者が変わっても一定の質を保てます。
- 上司・人事・産業医(または外部EAP)の役割分担を明確にする:誰が何をするかを決めておくことで、連携がスムーズになります。
- 再発のサインを知っておく:遅刻・早退の増加、ミスの増加、表情の変化、返信の遅れなど、具体的なサインを管理職と共有しておきましょう。
- 「相談できる雰囲気」を日頃から作っておく:面談だけでなく、日常のコミュニケーションが本人にとっての安全網になります。
まとめ
復職後のフォローアップ面談は、再発防止のための最も重要な取り組みの一つです。厚生労働省のガイドラインでも明確に位置付けられており、安全配慮義務の観点からも、企業として真剣に取り組む必要があります。
「何を確認すればよいか分からない」という方は、まず本記事で紹介した5つの確認項目(睡眠・疲労感、業務ストレス、治療継続、SOS発信、業務目標)を面談で使ってみてください。記録を残しながら継続することで、状態の変化を早期に察知できる体制が整っていきます。
中小企業だからこそ、一人ひとりの従業員の状態に目が届きやすいという強みがあります。その強みを生かしながら、仕組みとして復職支援を定着させることが、職場全体のメンタルヘルス向上にもつながります。
よくあるご質問(FAQ)
復職後のフォローアップ面談は、誰が実施すべきですか?
人事担当者や直属の上司が実施するケースが多いですが、産業医や外部のEAP(従業員支援プログラム)カウンセラーが関与することで、より専門的な視点からのサポートが可能になります。常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の関与が望ましく、50人未満の場合は地域産業保健センターや外部の産業医サービスの活用も検討してください。
本人が「大丈夫です」と言うのに、どこまで踏み込んで聞いてよいですか?
「大丈夫です」という言葉は、本人が気を遣っていたり、弱音を言えない状況にある場合もあります。「具体的に睡眠はとれていますか?」「食欲はどうですか?」のように、答えやすい具体的な質問を重ねることで、状態をより正確に把握できます。問い詰めるのではなく、「もし気になることがあれば何でも話してください」という雰囲気作りを優先しましょう。
フォローアップ面談の記録は、どのように管理すればよいですか?
面談記録には日付・確認項目・本人の回答内容・決定事項・次回面談の予定などを記載し、鍵のかかる場所やアクセス制限されたシステムで保管してください。健康情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当するため、閲覧できる担当者を限定し、不必要な共有を避けることが求められます。
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