「24時間電話相談サービスを導入する前に知っておきたい、中小企業の失敗しない選び方と運用のポイント」

従業員が深夜に突然「もう限界かもしれない」と感じたとき、あなたの会社には相談できる場所がありますか。日中であれば人事担当者や上司に相談することもできますが、不調のピークは必ずしも就業時間内に訪れるとは限りません。夜間や休日、あるいは「誰かに話したいけれど、会社の人には知られたくない」という状況で、従業員の悩みを受け止める仕組みを持つ企業はまだ少ないのが現実です。

特に中小企業では、専任の産業医や保健師を配置することが難しく、メンタルヘルス対応の多くが人事担当者や管理職の個人的な努力に委ねられています。しかしそれは担当者にとっても大きな負担であり、対応を誤ればハラスメントと認定されるリスクすら生じます。こうした課題を解決する手段として注目されているのが、24時間電話相談サービスです。

本記事では、24時間電話相談サービスが持つ実際の効果と、導入・運用にあたって押さえておくべき注意点を、法律の背景も含めてわかりやすく解説します。

目次

24時間電話相談サービスとは何か:EAPとの関係

24時間電話相談サービスは、従業員がいつでも専門家に相談できるよう、外部機関が電話窓口を提供するサービスです。相談内容はメンタルヘルスにとどまらず、育児・介護、職場の人間関係、健康上の不安、法律的な問題など、生活全般にわたるケースが多くあります。

このようなサービスは、EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)の一部として提供されることが一般的です。EAPとは、従業員の個人的な問題や職場上の問題を早期に発見・解決するための組織的支援の枠組みを指します。企業がEAPベンダーと契約し、従業員は無料で相談窓口を利用できる仕組みです。

厚生労働省が2006年(2015年改正)に定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルスケアを4つの層で推進することが求められています。具体的には、従業員自身が行う「セルフケア」、上司・管理職が行う「ラインによるケア」、産業医・保健師などが行う「事業場内産業保健スタッフによるケア」、そして外部機関を活用した「事業場外資源によるケア」の4つです。

24時間電話相談サービスは、この4つ目の「事業場外資源によるケア」に明確に位置づけられており、外部機関の積極的な活用が国の指針においても推奨されています。産業医や保健師を自社に配置することが難しい中小企業にとって、外部リソースの活用は現実的かつ効果的な選択肢といえます。

また、労働安全衛生法第66条の10により、50人以上の事業場ではストレスチェックの実施が義務づけられています。ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された従業員への対応として、24時間相談窓口を整備しておくことは補完的な機能として有効です。なお、50人未満の事業場については現時点でストレスチェックは努力義務にとどまりますが、労働安全衛生法第69条では、事業者が従業員の健康保持増進のための措置を講じる努力義務が定められており、規模を問わず相談体制の整備は経営上の重要課題です。

24時間電話相談サービスが中小企業にもたらす効果

早期介入による深刻化の防止

メンタルヘルス不調の多くは、初期段階では「少し眠れない」「なんとなく気力がわかない」といった軽度の症状として現れます。しかしこの段階で適切なサポートを受けられないと、うつ病などの疾患に発展し、休職や離職につながるケースが少なくありません。

24時間電話相談サービスがあれば、従業員は症状が軽いうちに、気が向いたタイミングで相談することができます。「夜中に眠れなくて、誰かに話したい」という瞬間に対応できる窓口は、不調の深刻化を防ぐ上で重要な役割を果たします。早期介入ができれば、企業にとっても休職者を出すリスクを下げることにつながります。

社内相談の心理的ハードルを補完する

社内に相談窓口があっても、「上司に知られたくない」「人事に記録が残ると思うと話しにくい」という心理的障壁を感じる従業員は少なくありません。外部の匿名相談窓口は、こうした心理的ハードルを下げる効果があります。

相談内容が会社に報告されないという安心感があってこそ、従業員は本音を話せます。社内窓口と外部窓口を組み合わせることで、相談へのアクセスを広げることができます。

人事・管理職の負担軽減

専門知識のない人事担当者や管理職が、メンタル不調の従業員の相談を一人で引き受けることには限界があります。誤った対応がかえって状況を悪化させたり、担当者自身が疲弊するケースもあります。

24時間電話相談サービスを導入することで、初期対応を専門家に委ねることができ、人事・管理職は「まずこちらに相談してください」と案内する役割に徹することができます。管理職自身が悩みを抱えた際にも利用できる点も見逃せません。

自殺・過労死防止に向けた社会的責任への対応

自殺対策基本法や過労死等防止対策推進法において、事業者は自殺・過労死防止への取り組みを求められています。相談窓口の設置は、こうした法的・社会的責任を果たす取り組みの一環として評価されます。万が一トラブルが発生した際にも、相談体制を整備していたかどうかは、企業の安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点から重要な判断材料になりえます。

自社のメンタルヘルス対応体制をより包括的に整えたい場合は、メンタルカウンセリング(EAP)の活用も検討する価値があります。

導入前に必ず確認すべきポイント

相談員の専門性とエスカレーション体制

電話相談サービスの質を左右するのは、相談員の専門性です。臨床心理士や公認心理師(国家資格)、社会保険労務士など、相談内容に応じた専門家が対応できるかを確認してください。特に重要なのは、緊急時のエスカレーション手順が整備されているかどうかです。

自殺リスクが感じられる相談を受けた場合、相談員はどのような対応をとるのか。本人の同意なく会社や家族に連絡が行くケースはあるのか。こうした点を契約前に確認し、従業員にも事前に説明しておくことが大切です。

守秘義務と個人情報の取り扱い

相談内容は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当しうる性質のものです。サービス提供事業者が相談データをどのように管理しているか、第三者への提供はどのような場合に行われるかを、契約書で必ず確認してください。

また、企業側が受け取る利用レポートの内容にも注意が必要です。個人が特定されない集計データの提供が一般的ですが、契約内容によって異なる場合があります。「守秘義務があるから会社には何も伝わらない」と従業員に説明する場合も、緊急時の例外があることを正直に周知しておくことがトラブル防止につながります。

対応範囲と費用体系の適合性

サービスによって、対応できる相談の範囲は大きく異なります。メンタルヘルスに特化したものから、法律・育児・介護・健康相談まで幅広く対応するものまでさまざまです。自社の従業員構成(外国人労働者が多い場合は多言語対応の有無も確認)やニーズに合ったサービスを選ぶことが重要です。

費用面では、月額定額型と従量課金型(相談件数に応じて課金)の2種類が一般的です。中小企業では利用人数が少ないため、定額型のほうがコストを試算しやすい面がありますが、最低利用期間や解約条件も含めて比較検討してください。

運用を成功させるための実践ポイント

「導入したら終わり」ではない:継続的な周知活動の重要性

24時間電話相談サービスの導入に関してよくある失敗は、導入したにもかかわらず利用率が極めて低いというケースです。実際、利用率が1〜3%程度にとどまる企業は珍しくないとされています。サービスを導入するだけで自動的に利用されることはなく、継続的な周知活動が欠かせません。

具体的には、入社時オリエンテーションでの案内、社内メールやイントラネットでの定期告知、休憩室や更衣室へのポスター掲示などが有効です。年2〜3回以上の定期的なアナウンスを行っている企業では、利用率が高まる傾向があります。

「弱い人が使うもの」というイメージを払拭する

「相談窓口を使う=メンタルが弱い」というイメージが残ると、本当に必要な人ほど利用をためらいます。経営者や管理職が「自分も使ったことがある」「私からも使うよう勧めている」と発信することで、利用への心理的ハードルを大きく下げることができます。

メンタルヘルスの相談だけでなく、育児の悩みや法律的な疑問など、日常的なテーマでも利用できることを伝えると、「普段使いできる相談窓口」として定着しやすくなります。

管理職研修と組み合わせる

部下から相談を受けた管理職が適切に外部窓口を案内できるよう、管理職研修のカリキュラムに24時間相談サービスの紹介を組み込むことをおすすめします。「自分で抱え込まず、専門家につなぐ」という行動を管理職が自然にとれるようになると、組織全体のメンタルヘルスマネジメントが機能しやすくなります。

また、管理職自身が職場の人間関係や業務上のプレッシャーを誰にも相談できずに孤立するケースも見受けられます。「管理職も使える窓口」として明示することが重要です。

効果測定を継続する

導入後は、利用率や相談件数を月次・四半期単位でモニタリングしてください。ストレスチェックの結果の経年変化や、休職者数・離職率の推移と組み合わせることで、サービスの効果を中長期的に検証することができます。効果が見えにくいと感じた場合は、周知方法の改善やサービス内容の見直しを検討する契機にもなります。

総合的なメンタルヘルス対応体制を構築したい場合は、産業医サービスとの連携も合わせて検討することで、より実効性の高い仕組みを整えることができます。

まとめ

24時間電話相談サービスは、専任の産業医や保健師を配置することが難しい中小企業にとって、現実的かつ効果的なメンタルヘルス対策の一つです。従業員の不調を早期に把握し、深刻化する前に介入できる仕組みは、休職・離職のリスク低減にも直結します。

ただし、導入して終わりではありません。守秘義務の範囲や緊急時の対応ルールを事前に確認・従業員へ説明すること、継続的な周知活動を行うこと、そして管理職研修と組み合わせて活用することが、サービスの効果を最大化する鍵です。

「うちの会社には関係ない」と感じている経営者・人事担当者ほど、従業員の深刻なサインを見逃しているリスクがあります。まずは自社の相談体制を見直すところから始めてみてください。

よくある質問

24時間電話相談サービスの費用はどのくらいかかりますか?

サービスの内容や提供事業者によって異なりますが、一般的には月額定額型と従量課金型の2種類があります。従業員数が少ない中小企業では月額定額型のほうが費用を見通しやすい場合が多いです。具体的な金額は事業者への問い合わせが必要ですが、導入の際は費用だけでなく、相談員の専門性や対応範囲、守秘義務の体制なども合わせて比較することをおすすめします。

相談内容は本当に会社に知られないのでしょうか?

原則として、相談内容は守秘義務により会社には伝わりません。ただし、自殺リスクが高いなど緊急性が認められる場合には、本人の同意なく関係機関に連絡が取られることがあります。これは相談員が従うべき倫理的・法的な対応として定められているものです。従業員に周知する際は、こうした例外があることも含めて正確に伝えることがトラブルを防ぐ上で重要です。

従業員が50人未満の会社でも導入する意味はありますか?

あります。ストレスチェックの実施義務は50人以上の事業場に課されていますが、労働安全衛生法第69条では規模を問わず、事業者が従業員の健康保持増進のための措置を講じる努力義務が定められています。また、従業員数が少ない職場ほど「社内では話しにくい」という心理的障壁が高くなりやすく、外部の匿名相談窓口の効果が発揮されやすいともいえます。

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