【2025年最新】健康経営銘柄の選定基準を完全解説|中小企業が今すぐ始めるべき具体的対策とは

「健康経営銘柄という言葉は聞いたことがあるけれど、うちのような中小企業には関係ない話だろう」。そう思っている経営者・人事担当者は少なくありません。しかし、それは大きな誤解です。健康経営銘柄の選定基準を理解することは、上場企業を目指す会社だけでなく、中小企業が取り組むべき健康経営の羅針盤として活用できます。また、中小企業が直接申請できる「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」は、同じ評価軸をもとに設計されています。

本記事では、健康経営銘柄の選定基準を正確に解説するとともに、中小企業の経営者・人事担当者が今日から実践できる具体的な対策をわかりやすくご紹介します。

目次

健康経営銘柄と健康経営優良法人の違いを整理する

まず、混同されやすい二つの制度を整理しておきましょう。

健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所(JPX)が共同で実施する選定制度です。対象は東証上場企業(プライム・スタンダード・グロース市場)に限られており、業種ごとに原則1社、年間で約50社前後が選定されます。投資家に対して「従業員の健康管理を経営戦略として実践している企業」を可視化する目的があります。

一方、健康経営優良法人は同じく経済産業省が推進する認定制度ですが、こちらは上場・非上場を問わず申請できます。大規模法人部門(約2,000法人)と中小規模法人部門(約17,000法人)に分かれており、中小企業はこちらを目指すことが現実的な目標となります。

重要なのは、どちらも「健康経営度調査」という同じ評価フレームワークを土台にしている点です。つまり、健康経営銘柄の選定基準を学ぶことは、中小企業が健康経営優良法人を取得するための学習にも直結します。「上場企業の話」と切り捨てず、自社の健康経営レベルを測るものさしとして積極的に活用してください。

健康経営銘柄の選定基準:5つの評価領域を理解する

健康経営度調査は100項目を超える設問で構成されており、初めて向き合うと圧倒されます。しかし、評価の骨格は大きく5つの領域に整理されています。それぞれを理解することで、何を優先すべきかが見えてきます。

①経営理念・方針(トップコミットメント)

健康経営の第一歩は、経営トップが「従業員の健康は経営課題である」と明確に宣言することです。具体的には以下の要素が評価されます。

  • 健康経営の方針を経営計画・事業計画の中に明文化しているか
  • CEOや役員が健康経営に関するメッセージを社内外に発信しているか
  • 健康経営を推進する専任組織や担当役員を設置しているか

「うちの社長はそういったことに関心がない」という声もよく聞きます。しかし、この領域は全体評価の出発点であり、ここが弱いと他の施策がいくら充実していても得点が伸びません。まずは経営層への働きかけが不可欠です。

②組織体制の整備

健康経営を「掛け声だけ」で終わらせないために、推進する組織体制が整っているかが問われます。

  • 推進担当者の設置(人事・総務部門との連携体制)
  • 産業医サービスを活用した産業医・保健師・管理栄養士等の専門人材の関与
  • 健康保険組合または協会けんぽとのコラボヘルス(企業と保険者が連携して健康増進に取り組む仕組み)体制の整備

特に中小企業の場合、産業医の選任がネックになりがちです。労働安全衛生法では、常時50人以上の従業員を使用する事業場に産業医の選任が義務づけられています。50人未満の企業は義務こそありませんが、健康経営の観点からは産業医や保健師との連携体制を整えることが評価向上につながります。

③制度・施策の実行

実際にどのような健康施策を行っているかが、評価の中核部分です。主な評価項目は以下の通りです。

  • 健診関連:定期健康診断の受診率100%の達成、有所見者(検査で異常値が出た従業員)への保健指導の実施
  • メンタルヘルス対策:ストレスチェックの実施(常時50人以上の事業場では義務)、集団分析の実施、職場環境改善への活用
  • 生活習慣病予防:運動促進・食環境整備・禁煙支援などの施策実施
  • 過重労働対策:時間外労働の適切な管理、長時間労働者への医師による面接指導の実施
  • 女性の健康支援:婦人科系検診の促進、更年期への対応など女性特有の健康課題への取り組み
  • 感染症予防:インフルエンザ予防接種費用の補助など

注意すべきは、「施策を実施していること」だけでなく、「実施した記録・エビデンスが残っているか」が問われる点です。実際に取り組んでいても、記録がなければ調査票に回答できません。日常的に記録を残す習慣の構築が重要です。

④評価・改善(PDCAの実践)

健康経営の質を継続的に高めるために、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)が機能しているかが問われます。

  • 健康関連の数値目標を設定し、達成状況を定期的に評価しているか
  • 施策の費用対効果を分析しているか
  • アブセンティーイズム(病気等による欠勤・休職)とプレゼンティーイズム(健康問題を抱えながら出勤しているが生産性が低下している状態)を測定・把握しているか

特にプレゼンティーイズムの測定は、近年の調査で加点評価の対象となっており、SPQ(スタンフォード・プレゼンティーイズム質問票)や東大1項目版などの測定ツールの導入が有効です。

⑤法令遵守・リスクマネジメント

健康経営の前提として、労働関係法令の遵守は不可欠です。労働基準法・労働安全衛生法上の重大な違反がある場合、他の評価が高くても選定・認定の対象から外れる可能性があります。近年では重大な労働災害や労務問題の有無も確認されています。

中小企業が特に注力すべき実践ポイント

限られたリソースの中で最大の成果を出すために、中小企業が優先して取り組むべきポイントを整理します。

まずデータの「見える化」から始める

健康経営度調査の回答には、健康診断の受診率・ストレスチェックの実施率・時間外労働時間などの数値データが必要です。これらが散在・未整理の状態では、調査票に答えることすらできません。

最初のステップとして、以下のデータを一元管理できる仕組みを整えましょう。

  • 従業員ごとの健康診断受診状況・有所見の有無
  • ストレスチェックの実施率・高ストレス者の割合
  • 月別の残業時間・有給休暇取得率
  • 過去1〜2年の休職・離職状況

エクセルで管理している企業も多いと思いますが、協会けんぽのデータヘルス計画(保険者が保有する医療費・健診データを活用した健康管理計画)と連携することで、より深いデータ分析が可能になります。まずは協会けんぽの担当窓口に相談することをお勧めします。

「やっていること」を記録・言語化する習慣をつける

多くの中小企業が陥るのが「実はいろんな施策をやっているが、記録がなくて回答できない」という状況です。例えば、社員食堂のメニュー改善、朝のラジオ体操の実施、インフルエンザ予防接種費用の補助など、すでに行っている取り組みが健康経営の施策として評価される場合があります。

施策を実施したら、必ず以下を記録してください。

  • 実施日・実施内容・対象者数
  • 担当者・承認した役員名
  • 参加率・アンケート結果など効果測定の記録

会議の議事録や社内通知のメールなども証跡として活用できます。「記録を残す文化」を根付かせることが、長期的な健康経営の底上げにつながります。

メンタルヘルス対策を早期に整備する

ストレスチェック制度は常時50人以上の事業場に義務づけられていますが、50人未満の中小企業でも実施することが健康経営の評価向上に有効です。また、ストレスチェックの結果を「集団分析」(職場単位での結果集計・分析)に活用し、職場環境の改善に結びつけることが評価のポイントになります。

相談窓口の設置やカウンセリングサービスの提供も重要な施策です。外部のメンタルカウンセリング(EAP)を活用することで、社内に専門スタッフがいなくても従業員のメンタルヘルス支援体制を整えることができます。EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)は、コストを抑えながらメンタルヘルス体制を構築できる中小企業に適した手段のひとつです。

経営層を巻き込むための「数字」を用意する

健康経営への投資を経営層に納得させるには、感情論ではなくデータが必要です。以下の数字を試算・提示することで、経営層の関心を引きやすくなります。

  • 欠勤・休職のコスト試算:1名が1ヶ月休職した場合の代替コスト・生産性損失の概算
  • 離職コスト:採用・育成コストを含めた離職1名あたりの損失額(一般的に年収の50〜100%程度とされることがある)
  • 健康経営優良法人認定の採用広報効果:求人掲載において認定マークが応募率に与える影響の事例

健康施策の費用対効果は短期的に数値化しにくい面もありますが、こうした間接的なコスト削減効果を示すことが経営層を動かすカギになります。

外部専門家・認定制度を戦略的に活用する

健康経営優良法人(中小規模法人部門)の申請は、協会けんぽ等の保険者を経由して行います。協会けんぽでは健康経営アドバイザーの紹介や、申請書類の作成支援を行っている地域もあります。まずは自社が加入する保険者(協会けんぽや健康保険組合)に相談してみましょう。

また、地域の商工会議所や中小企業支援機関が健康経営セミナーや個別相談会を開催しているケースもあります。こうした無料・低コストの外部リソースを積極的に活用することで、専任スタッフがいなくても推進体制を補完できます。

健康経営銘柄選定基準から学ぶ「加点評価」のポイント

上位評価(健康経営銘柄や健康経営優良法人の上位認定「ブライト500」)を目指すためには、基準を満たすだけでなく、差別化できる取り組みが必要です。

近年の選定基準では、「施策を実施しているか(インプット)」よりも「施策の結果として健康指標が改善されているか(アウトカム)」を重視する傾向が強まっています。例えば、定期健診の受診率を単に100%にするだけでなく、有所見率の年次推移を追跡し、保健指導によって改善が見られたかどうかまで評価する、という姿勢です。

また、データ活用の高度化も加点ポイントです。レセプトデータ(医療機関への請求データ)と健診データを連携させ、生活習慣病リスクの高い従業員を早期に特定して介入するといった取り組みは、大企業でも一部しか実践できていません。健康保険組合や協会けんぽとのコラボヘルス体制を構築し、データに基づいた施策設計ができる企業は高い評価を得やすい状況にあります。

まとめ:健康経営は「制度取得」ではなく「経営変革」

健康経営銘柄の選定基準を一通り解説しましたが、最も重要なことは「認定・選定を取ることが目的ではない」という認識です。健康経営の本質は、従業員が健康で活き活きと働ける環境を整えることで、企業の生産性・競争力・持続可能性を高めることにあります。

中小企業にとって、従業員一人ひとりの存在は大企業以上に経営に直結します。一人の休職・離職が事業運営に大きなダメージを与えるからこそ、従業員の健康管理は経営リスクマネジメントそのものです。

まずは健康診断受診率の把握、ストレスチェックの実施、時間外労働データの整理という基本3点から着手してください。小さな一歩の積み重ねが、3年後・5年後の健康経営優良法人認定、さらにはその先の企業価値向上につながっていきます。制度の詳細や自社の現状把握に不安がある場合は、産業医や保健師などの専門家に早めに相談することをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q. 従業員が50人未満の中小企業でも健康経営優良法人に申請できますか?

はい、申請できます。健康経営優良法人(中小規模法人部門)は従業員数の上限・下限に関わらず申請可能です。ただし、申請は直接経済産業省に行うのではなく、協会けんぽや健康保険組合などの保険者を経由する形になります。まずは自社が加入している保険者に問い合わせてみましょう。

Q. ストレスチェックは50人未満の事業場では義務がないと聞きましたが、実施した方がいいですか?

労働安全衛生法上、ストレスチェックの実施義務は常時50人以上の労働者を使用する事業場に課されており、50人未満は努力義務にとどまります。ただし、健康経営優良法人の評価においてはメンタルヘルス施策の充実が評価されるため、50人未満であっても実施することが認定取得・評価向上に有利に働きます。外部のEAPサービスなどを活用することで、比較的低コストで導入できます。

Q. 健康経営に取り組むと採用に有利になると聞きますが、本当ですか?

健康経営優良法人の認定を受けることで、求人票や会社案内に認定ロゴを使用でき、求職者に対して「従業員の健康を大切にする企業」であることをアピールできます。特に若い世代や転職者はワークライフバランスや職場環境を重視する傾向があり、認定の有無が応募動機に影響するという声は実務の現場でも多く聞かれます。定量的な効果は企業ごとに異なりますが、採用ブランディングの一つとして活用できる手段です。

監修・運営:INTERMIND株式会社

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