【人事担当者必読】二次健康診断の対象者への説明、「いつ・何を・どう伝えるか」完全マニュアル

定期健康診断(以下、一次健診)を毎年実施しているにもかかわらず、「二次健康診断の対象者への説明をどうすればいいか分からない」と悩む経営者・人事担当者は少なくありません。結果票を渡して終わりになっていたり、対象者の特定すら曖昧になっていたりするケースは、中小企業では特に多く見られます。

二次健康診断は、脳卒中や心筋梗塞などの重大疾患を未然に防ぐための重要な制度です。費用は労災保険から給付されるため、会社にも従業員にも金銭的な負担はほぼありません。にもかかわらず、説明不足や手続きの煩雑さから受診率が低いままの企業が多いのが現状です。

この記事では、二次健康診断の対象者をどう特定し、いつ・誰が・どのように説明すべきかを、実務ですぐに使えるかたちで解説します。産業医や保健師が不在の中小企業でも取り組める具体的な手順を中心にまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

二次健康診断とは何か――制度の基本と法的根拠

二次健康診断とは、一次健診の結果において特定の条件を満たした従業員が、より詳しい検査や保健指導を受けられる制度です。労働安全衛生法第66条の2を根拠とし、労働者災害補償保険法第26条に基づき「二次健康診断等給付」として労災保険から現物給付されます。つまり、費用は原則として会社も従業員も負担しません(年1回限り)。

二次健診では血圧・血中脂質・血糖・腹囲などを詳しく調べ、続けて「特定保健指導」(栄養指導・運動指導など)を受けることができます。この一連の流れを通じて、メタボリックシンドロームに起因する脳血管疾患や心臓疾患のリスクを早期に把握し、予防につなげることが目的です。

受診できる医療機関は、労働局や労働基準監督署が指定した「二次健康診断等給付指定医療機関」に限られます。また、受診申請は一次健診を受けた日から3か月以内に行う必要があるため、結果が届いてからの対応スピードが重要になります。

対象者の特定方法――4項目すべての異常が条件

二次健康診断の対象者を正しく特定することが、説明の第一歩です。以下の3つの条件をすべて満たす従業員が対象になります。

  • 直近の定期健康診断(一次健診)を受診していること
  • 血圧・血中脂質・血糖・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに異常所見があること
  • すでに脳血管疾患・心臓疾患を発症していないこと(発症済みの場合は対象外)

ここで最も多い誤解は、「4項目のうち1つでも異常があれば対象」という思い込みです。正しくは4項目すべてに異常がある場合のみ対象となります。1〜3項目の異常にとどまる従業員には、通常の医療機関への受診勧奨が適切な対応です。

各項目の判定目安(一例)は以下のとおりです。なお、具体的な判定は健診機関や産業医の判断を優先してください。

  • 血圧:収縮期130mmHg以上、または拡張期85mmHg以上
  • 血中脂質:LDLコレステロール140mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満、中性脂肪150mg/dL以上のいずれか
  • 血糖:空腹時血糖110mg/dL以上
  • 腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上、またはBMI25以上

健診機関から届く結果票には「要精密検査」「要医療」「医師の意見欄」などの記載があります。これらを参照しながら4項目の数値を確認しますが、判断が難しい場合は産業医や健診機関に問い合わせるのが確実です。産業医サービスを活用することで、対象者の特定や事後措置の判断をスムーズに進めることができます。

説明のタイミングと流れ――いつ・誰が・どのように行うか

対象者が特定できたら、次は説明の段階に移ります。説明が遅れると申請期限(3か月以内)を過ぎてしまうため、結果票が届いてから速やかに動くことが重要です。実務上の標準的な流れは以下のとおりです。

  • 一次健診の結果票を受領する
  • 産業医・保健師と連携して対象者を特定する
  • 対象者に個別面談または文書で説明を行う
  • 受診申請書類を交付し、記載をサポートする
  • 受診の確認とフォローアップを行う
  • 記録を保存する(健診結果は5年間保存が義務)

説明を行う担当者は、人事・総務担当者でも構いませんが、産業医や保健師が関与すると受診率が高まるとされています。専門職から「健康上のリスクがある」と伝えられることで、従業員が真剣に受け止めやすくなるためです。産業医が選任されていない企業では、メンタルカウンセリング(EAP)や健診機関の保健師に相談する方法も検討に値します。

説明の場は個別面談が原則です。他の従業員に対象者であることが分からないよう、プライバシーに十分配慮してください。呼び出し方や場所の設定にも気を配ることで、従業員の不安感を軽減できます。

説明時に伝えるべき内容――チェックリストで漏れをなくす

説明の内容が不十分だと、従業員が制度を正しく理解できず受診につながりません。以下の項目を漏れなく伝えることを意識してください。

  • 対象になった理由:どの数値が基準に該当したかを具体的に示す。「血圧・血糖・脂質・腹囲の4つの数値に異常が見られました」と明確に伝える
  • 二次健診・特定保健指導の内容:何を調べ、どんな指導が受けられるかを説明する
  • 費用が無料であること:労災保険から給付されるため、会社も本人も原則として費用負担がないことを伝える(費用を理由に受診をためらわせないための重要ポイント)
  • 受診できる医療機関の案内:所轄の労働基準監督署や労働局のウェブサイトで指定医療機関を確認できることを伝え、可能であれば一覧を印刷して渡す
  • 受診申請の手続き方法:所轄の労働基準監督署に申請書を提出する流れを説明する
  • 受診期限:一次健診日から3か月以内であることを明示する
  • 受診は任意であること:強制ではないが、健康管理上、強く受診を勧める旨を伝える
  • プライバシーの取り扱い:結果を第三者に漏らさない旨を伝え、安心して受診できる環境を示す

口頭での説明だけでなく、書面も必ず渡してください。後から「説明を受けていない」というトラブルを防ぐためでもありますが、従業員自身が自宅でゆっくり内容を確認できる点でも有効です。説明書には二次健診の概要・手続き手順・期限・相談窓口をまとめておくと親切です。

受診拒否への対応と事業主の義務範囲

従業員が受診を拒否した場合、事業主はどう対応すればよいのでしょうか。まず前提として、二次健康診断の受診は従業員の権利であり、義務ではありません。事業主が強制的に受診させることは法的に認められていないことを理解しておく必要があります。

一方で、事業主には受診を「勧奨」する努力義務が課せられています。つまり、受診を促す説明をきちんと行ったかどうかが、後々問われることになります。

受診を拒否された場合は、以下の対応をとることが望ましいとされています。

  • 拒否の意思を確認した日時・内容を記録として残す
  • 「受診を勧奨した事実」を文書化しておく(メールや書面での記録が有効)
  • 後日改めて受診の意向を確認する機会を設ける
  • 拒否しても健康相談や保健指導などの代替支援を提案する

健診結果の記録は5年間保存する義務があります(労働安全衛生規則第51条による)。「勧奨した記録がない」という状況は、万一労災が発生した際に事業主の安全配慮義務違反を問われるリスクにつながりかねないため、記録管理は徹底してください。具体的な対応方針については、労働基準監督署や社会保険労務士など専門家にご相談ください。

中小企業が取り組むための実践ポイント

産業医や保健師が常駐しない中小企業では、人事担当者一人に対応が集中しがちです。以下の実践ポイントを参考に、無理なく継続できる仕組みを整えましょう。

対象者特定を仕組み化する

健診機関によっては、結果票に「二次健診対象者」と明記してくれる場合があります。契約している健診機関に確認し、対象者リストを受け取れるよう依頼しておくと効率的です。

説明書テンプレートを用意する

毎回ゼロから資料を作るのは非効率です。制度概要・手続きフロー・指定医療機関の案内を盛り込んだ説明書テンプレートをあらかじめ作成し、対象者に合わせて数値などを差し込むだけで対応できる体制を整えましょう。

就業時間中の受診を認める

受診を業務扱い(または有給扱い)にすることで、受診のハードルが大きく下がります。「仕事を休んで受診するのが申し訳ない」と感じる従業員は少なくないため、会社としての姿勢を明確に示すことが受診率向上につながります。

制度を全社周知する

対象者だけに個別連絡する前に、全従業員に向けて「二次健診という制度がある」ことを社内通知・メールなどで周知しておくと、個別説明の際に「聞いたことがある制度」として受け入れられやすくなります。

産業医・外部専門家と連携する

人事担当者だけで対応が難しい場合は、産業医や外部の保健師・健康経営支援サービスを活用することを検討してください。専門職が関与することで説明の質が上がり、従業員の受診意欲も高まりやすくなります。

まとめ

二次健康診断は、従業員の脳卒中や心筋梗塞を予防するうえで非常に重要な制度です。費用は労災保険から給付されるため、会社にも従業員にも金銭的な負担はほとんどありません。しかし、対象者の特定方法や説明手順が分からなければ、せっかくの制度も活かされません。

今回解説したポイントを整理すると、まず4項目すべての異常という対象要件を正しく理解すること、次に一次健診後速やかに個別説明を行うこと、そして費用・手続き・期限を漏れなく伝えることが基本となります。受診を強制することはできませんが、説明した記録を残すことは事業主にとっても重要な自衛策です。

中小企業だからこそ、一人ひとりの従業員の健康が会社全体のパフォーマンスに直結します。この機会に自社の対応フローを見直し、二次健康診断の受診勧奨を実効性のある取り組みとして定着させてください。

よくある質問(FAQ)

二次健康診断の対象者は4項目のうち1つでも異常があれば該当しますか?

いいえ、4項目(血圧・血中脂質・血糖・腹囲またはBMI)すべてに異常所見がある場合のみ対象となります。1〜3項目の異常にとどまる場合は、通常の医療機関への受診勧奨が適切な対応です。

二次健康診断の費用は会社が負担しなければなりませんか?

原則として会社も従業員も費用を負担する必要はありません。二次健康診断と特定保健指導は労災保険からの現物給付として提供されます(年1回限り)。ただし、指定医療機関以外での受診は給付対象外となる点にご注意ください。

従業員が受診を拒否した場合、どう対応すればよいですか?

二次健康診断の受診は従業員の権利であり、強制させることはできません。ただし事業主には受診を勧奨する努力義務があります。拒否された場合は、勧奨した日時・内容を書面や記録として残しておくことが重要です。後日改めて受診の意向を確認することも有効です。

産業医がいない中小企業でも対応できますか?

対応可能です。対象者の特定は健診機関に確認する方法がありますし、説明自体は人事担当者が書面と口頭で行うことができます。より専門的な関与が必要な場合は、産業医サービスの活用や外部の保健師・健康支援サービスへの相談も選択肢の一つです。

受診申請の期限はいつまでですか?

一次健康診断を受けた日から3か月以内に、所轄の労働基準監督署へ申請する必要があります。健診結果が届いてから対応が遅れると期限を過ぎてしまうため、結果受領後できるだけ早く対象者に説明を行うことが重要です。

監修・運営:INTERMIND株式会社

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