外国人労働者の採用を検討している、あるいはすでに雇用している中小企業の経営者・人事担当者の方から、「何をどこまで確認すればよいのかわからない」「手続きを間違えて罰則を受けないか不安」といった声を多く聞きます。
外国人労働者の雇用は、人手不足が深刻な業種にとって有力な選択肢である一方、日本人の採用とは異なる法的手続きや確認義務が多数存在します。知らなかったでは済まされない罰則規定もあり、コンプライアンス上のリスクを正しく理解することが経営者・人事担当者の責務といえます。
本記事では、外国人労働者を雇用する際に必ず押さえておくべき法的注意点を、実務の流れに沿って解説します。
在留資格の確認は「原本を目で見て確認」が大原則
外国人労働者を採用する際、最初に行うべきことが在留資格の確認です。在留資格とは、外国人が日本に滞在し、一定の活動を行うために国から与えられた許可のことです。この確認を怠ったり、確認が不十分だったりすると、雇用する側が重大な法的責任を負うことになります。
確認すべき書類は在留カードの原本です。コピーや写真データでの確認は不十分とされており、必ず採用前に原本を手に取って以下の3点を確認してください。
- 在留資格の種類:どのような活動が許可されているか
- 在留期限:有効期限が切れていないか
- 就労制限の有無:カード裏面に「就労不可」のスタンプがないか
留学生をアルバイトとして雇用する場合は、在留カードに加えて資格外活動許可証の確認も必須です。留学ビザで就労するには、入管(出入国在留管理庁)から資格外活動の許可を得る必要があります。
また、在留資格の種類によって就労できる職種・業務範囲が異なります。主な在留資格と就労条件の関係は以下のとおりです。
- 技術・人文知識・国際業務:専門的な職種のみ可。単純労働は認められません
- 特定技能1号・2号:介護・建設・農業など特定の産業分野の業務のみ可
- 技能実習1号・2号・3号:技能実習計画に定めた業務のみ可
- 永住者・定住者・日本人の配偶者等:職種制限なし。フルタイムで就労可能
- 留学:週28時間以内(長期休暇中は週40時間まで)
- 短期滞在・観光ビザ:就労は一切不可
「在留カードを持っているから働いてもらえる」と考えるのは危険です。在留資格の種類と担当させる業務が合致しているかを、採用前に必ず確認してください。判断に迷う場合は、行政書士や社会保険労務士などの専門家に事前相談することを強くおすすめします。
不法就労助長罪のリスクを過小評価してはいけない
外国人の雇用に関して特に重要なのが、不法就労助長罪(出入国管理及び難民認定法違反)のリスクです。不法就労助長罪とは、不法就労者であることを知りながら雇用した場合などに問われる罪で、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。これは法人にも適用されます。
「知らなかったから大丈夫」と思う方もいるかもしれませんが、在留カードの確認を怠った場合や、確認が形式的に過ぎた場合は「知らなかった」という主張が認められないケースもあります。採用時の確認記録を残しておくことも、万が一の際の対策として有効です。
不法就労が発生しやすい典型的なパターンとして、以下のケースが挙げられます。
- 在留期限が切れているにもかかわらず雇用を継続した
- 留学生に週28時間を超えて働かせた
- 在留資格に定められた職種以外の業務に従事させた
- 「短期滞在」ビザで入国した外国人をそのまま採用した
これらは悪意がなくとも発生しうるケースです。特に在留期限の管理は見落としやすく、採用時に期限をシステムやカレンダーに登録し、期限の3カ月前にはリマインドが届く仕組みを作っておくことが現実的な対策となります。在留資格の更新申請は期限の3カ月前から行うことができますので、企業側からも本人に早めに声をかけることが大切です。
ハローワークへの届出は全事業主の義務
外国人労働者を雇い入れた場合、または離職した場合には、ハローワーク(公共職業安定所)への届出が全事業主に義務付けられています。根拠法は雇用対策法(現:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)です。
届出の概要は以下のとおりです。
- 届出先:ハローワーク
- 届出期限:雇入れまたは離職の翌月10日まで
- 届出方法:雇用保険の被保険者である場合は資格取得届・喪失届と兼用。被保険者でない場合は専用の外国人雇用状況届出書を提出
- 罰則:未届出または虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金
この届出を「小さな手続き」と軽視する事業主も少なくありませんが、罰則規定がある以上、必ず対応が必要です。特にパートタイムや短期雇用の外国人労働者を雇う場合でも届出義務は発生しますので、注意してください。
また、在留カードに記載された在留資格・在留期限・国籍・氏名などの情報も届出内容に含まれます。採用時に正確な情報を記録しておくことが、スムーズな届出につながります。
労働関係法令・社会保険は日本人と同等に適用される
外国人労働者であっても、日本の労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法などの労働関係法令はすべて適用されます。国籍を理由に賃金を低く設定したり、労働条件を不利にしたりすることは、労働基準法第3条(均等待遇)に違反します。
具体的には以下の点に注意が必要です。
- 最低賃金:都道府県別の最低賃金を下回ることは認められません
- 時間外労働・休日労働の割増賃金:日本人と同様の計算・支払いが必要
- 有給休暇:所定の要件を満たせば付与義務があります
- 安全衛生教育・健康診断:日本人と同様に実施する義務があります
就業規則の外国語翻訳については、法律上の義務はありませんが、労働者が理解できる方法で周知することが強く推奨されています。言語の壁によるトラブルを防ぐためにも、雇用契約書の主要事項については母国語での説明を行い、可能であれば翻訳版も交付することが望ましいといえます。
社会保険・労働保険への加入
社会保険(健康保険・厚生年金)および労働保険(雇用保険・労災保険)についても、原則として日本人と同様の加入義務があります。
- 健康保険・厚生年金:週所定労働時間が30時間以上の場合は加入義務あり。また、2024年10月以降は常時51人以上の従業員を使用する企業において、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上等の要件を満たす場合も加入義務の対象となります(詳細は最新の法令・行政通達をご確認ください)
- 雇用保険:週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入義務あり
- 労災保険:労働者であれば国籍を問わず適用
なお、日本と社会保障協定を締結している国(ドイツ・韓国・アメリカなど)の出身者については、一定の条件のもとで年金保険料等の二重払いが免除される場合があります。対象国・対象要件は国によって異なりますので、個別に確認が必要です。
また、短期間の在留で帰国する外国人労働者については、脱退一時金制度という仕組みがあります。これは、帰国後に年金保険料の一部の還付を請求できる制度で、本人への事前の説明があると丁寧な対応につながります。
技能実習・特定技能制度の最新動向を把握しておく
外国人労働者の受け入れにおいて特に注目すべき制度が、技能実習制度と特定技能制度です。それぞれの仕組みと最新の動向を整理します。
技能実習制度と育成就労制度への移行
技能実習制度は、発展途上国の人材が日本の技術・技能を習得して母国の発展に役立てるという目的で設けられた制度です。技能実習生は技能実習計画に定められた業務のみを行うことができ、計画外の業務に従事させることは認められていません。
受け入れ企業(実習実施者)は外国人技能実習機構(OTIT)への計画認定や定期報告の義務があり、定期的な監査も行われます。
2024年6月に入管法等の改正法が成立し、技能実習制度は「育成就労制度」へ移行することが決定しました(法律の公布から3年以内に施行予定)。主な変更点は以下のとおりです。
- 転籍制限の緩和:一定の条件のもとで、外国人労働者が受け入れ企業を変えることが可能になります
- 人権保護の強化:強制労働やハラスメントに対する規制が厳格化されます
- 監理団体の適正化:監理団体(受け入れをサポートする組織)への管理・審査が強化されます
技能実習生を受け入れている企業は、この制度変更の内容と施行スケジュールを注視し、必要な社内体制の見直しを検討しておくことが求められます。
特定技能制度の概要
2019年に創設された特定技能制度は、即戦力となる外国人労働者を受け入れることを目的とした制度です。2024年時点で介護・建設・農業・外食業など16分野が対象となっています。
特定技能1号は技能試験と日本語試験の合格が必要で、特定技能2号は熟練した技能を持つ労働者が対象となります。受け入れ企業には支援計画の策定・実施義務があり、住居確保の支援や日本語学習の機会提供なども求められます。対応が難しい場合は、登録支援機関に委託することも可能です。
実践ポイント:今日から取り組める管理体制の整備
法的な知識を理解したうえで、実際の業務に落とし込むための具体的なポイントをまとめます。
採用前の確認事項
- 在留カード原本を確認し、在留資格・在留期限・就労制限の有無を記録する
- 担当させる業務と在留資格が整合しているかを確認する。判断に迷う場合は専門家に相談する
- 留学生には資格外活動許可の有無を確認し、週28時間ルールを厳守する管理体制を整える
- 雇用契約書は可能な限り母国語での説明を実施し、労働条件を正確に伝える
雇用中の管理事項
- 在留期限をシステムやカレンダーに登録し、期限の3カ月前にアラートが届く仕組みを作る
- 職種変更を伴う異動の場合は、事前に入管へ在留資格変更の申請が必要かどうかを確認する
- 安全衛生教育・健康診断を日本人と同様に実施し、言語の壁がある場合は通訳を手配するなど工夫する
- パスポートや在留カードを会社が預かったり取り上げたりすることは、強制労働等に該当するリスクがあるため絶対に行わない
- 定期的な面談を実施し、孤立・ハラスメント・労働問題の早期発見に努める
離職時の対応事項
- ハローワークへの外国人雇用状況離職届を翌月10日までに提出する
- 雇用保険の被保険者である場合は、資格喪失届と兼ねて手続きを行う
- 帰国を予定している労働者には脱退一時金制度について案内することも丁寧な対応につながる
まとめ
外国人労働者の雇用は、適切な法的対応を行えば企業にとって大きな戦力となります。一方で、在留資格の確認不備や届出の怠慢、労働条件の不備は、企業が刑事罰や行政指導を受けるリスクに直結します。
最も重要な点を改めて整理します。
- 在留カードの原本確認:採用前に必ず実施し、在留資格・在留期限・就労制限を確認する
- 業務と在留資格の整合性確認:担当させる仕事が在留資格の範囲内かを専門家も交えて判断する
- ハローワークへの届出:雇入れ・離職のたびに翌月10日までに届け出る
- 在留期限の管理:システムでのアラート設定など仕組み化して管理する
- 労働関係法令の遵守:日本人と同等の待遇・手続きを徹底する
- 制度変更への対応:技能実習から育成就労制度への移行など最新情報を継続的に把握する
外国人労働者の雇用に不安がある場合は、社会保険労務士や行政書士などの専門家に相談することを検討してください。初期投資として専門家のアドバイスを受けることで、後々の大きなリスクを回避することができます。適切な法的対応と丁寧な労務管理が、外国人労働者との良好な関係と企業の持続的成長につながります。
よくある質問
Q1: 在留カードのコピーや写真では確認として不足なのはなぜですか?
在留カードの原本確認が大原則とされているのは、改ざんや偽造カードを見極めるためです。原本を手に取って確認することで、視覚的な質感や色、セキュリティ機能などを確認でき、偽造品の防止につながります。
Q2: 在留カードを持っていれば、どんな仕事をさせてもよいのですか?
いいえ、在留資格の種類によって就労可能な職種や時間に制限があります。例えば留学生は週28時間以内、特定技能は指定産業分野のみなど、担当させる業務が在留資格の条件と合致しているかを必ず採用前に確認する必要があります。
Q3: 不法就労助長罪で「知らなかった」という言い訳は通用しますか?
在留カードの確認を怠ったり形式的に済ませたりした場合、「知らなかった」という主張が認められないケースがあります。採用時の確認記録を残しておくことが、万が一の際の対策として重要です。
労務管理の課題を抱える企業様には、INTERMINDの産業医サービスをご検討ください。産業医と連携した従業員の健康管理体制を構築できます。









