【2025年最新】中小企業が「健康経営優良法人」に認定されるまでの全手順と費用を完全解説

「健康経営優良法人」という言葉を耳にしたことはあっても、「自社には関係ない」「取得するには大企業向けの話だろう」と感じている中小企業の経営者・人事担当者は少なくありません。しかし、2024年度の認定実績を見ると、中小規模法人部門の認定企業数は1万社を超えており、今や中小企業でも十分に取り組める制度として広く普及しています。

一方で、「何から手をつければよいかわからない」「申請してみたが書類が揃わなかった」「取得したはいいが社内外への活かし方が見えない」といった声も多く聞かれます。本記事では、健康経営優良法人認定制度の基本的な仕組みから、中小企業が認定を取得するための具体的なステップ、よくある失敗例とその対策まで、実務に直結する情報を整理してお伝えします。

目次

健康経営優良法人認定制度とは何か――制度の全体像を理解する

健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が推進する制度であり、従業員の健康管理を経営的な観点から戦略的に実践している法人を認定・表彰する仕組みです。認定を受けることで、社会的な信頼性の向上や採用・融資面での優遇といったメリットが期待できます。

制度は大きく2つの部門に分かれています。

  • 大規模法人部門:上場企業や大企業が対象。経済産業省が認定主体となります。
  • 中小規模法人部門:資本金3億円以下または従業員数300人以下の企業等が対象。日本健康会議が認定主体となります。

中小規模法人部門には、さらに特に優れた取り組みを行う法人を対象とした「ブライト500」という上位認定があります。通常の認定との違いは、加点項目への対応度合いや取り組みの深さにあり、取得することでさらなる差別化が図れますが、まずは通常認定の取得を目指すのが現実的な出発点です。

申請窓口は、各都道府県の健康保険組合や協会けんぽなどの保険者(ほけんしゃ:医療保険を運営する機関)を通じて行われます。多くの中小企業では、協会けんぽが運営する「健康宣言事業」への加入が申請の前提条件となっているため、まずこの点を確認することが不可欠です。

認定の評価軸は、①経営理念・方針、②組織体制、③制度・施策実行、④評価・改善、⑤法令遵守・リスクマネジメントの5カテゴリーに整理されており、必須項目を満たしたうえで加点項目の対応度が評価されます。

認定取得に向けた4つのステップ――何をいつやればよいか

STEP1:申請の1年以上前から体制を整える

健康経営優良法人の認定は、申請する年度の取り組み実績が評価されます。そのため、申請書類を準備する段階になってから慌てて施策を始めても間に合わないケースがほとんどです。認定取得を目標とするならば、少なくとも申請の1年以上前から準備を開始することを強くお勧めします。

最初に行うべきことは、健康経営推進責任者の任命です。できれば役員クラスが担当することで、社内での優先度が上がり、施策の推進力が高まります。兼任でも構いませんが、担当者の権限と責任を明確にしておくことが重要です。

次に、協会けんぽの「健康宣言事業」への加入手続きを行います。加入から一定期間が経過していないと申請要件を満たせない場合があるため、早めの対応が求められます。

さらに、現状把握として健康関連データの棚卸しを実施します。健診受診率・有給休暇取得率・月間残業時間などのデータを収集し、現状の課題を数値として把握しておくことで、取り組むべき優先課題が明確になります。

STEP2:申請年度中に具体的な施策を実施する

認定要件の中で特に注意が必要なのが、健康診断受診率100%という事実上の必須条件です。全従業員の受診が求められるため、パートタイムや契約社員も含めた受診勧奨体制を整える必要があります。就業時間内に受診できるよう会社として配慮すること、受診勧奨を文書で行うことなど、形に残る仕組みを作ることがポイントです。

メンタルヘルス対策については、従業員数50人以上の事業場では労働安全衛生法によりストレスチェックの実施が義務付けられています。50人未満の企業は義務の対象外ですが、任意で実施することが加点対象となります。さらに、ストレスチェックの実施だけで要件を満たしたと思うのは誤りで、集団分析(部署単位でのストレス傾向の把握)と職場環境改善の実施までを一連の取り組みとして評価されます。メンタルヘルス対策の充実を図るには、メンタルカウンセリング(EAP)の導入も有効な選択肢のひとつです。

その他の施策例として、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 運動促進:ウォーキングイベントの実施、健康アプリの導入(低コストで始めやすい)
  • 禁煙対策:就業時間中の禁煙ルールの明文化、敷地内禁煙の検討
  • 食生活改善:仕出し弁当での栄養バランスへの配慮、健康情報の提供
  • 長時間労働の是正:残業時間の把握と削減目標の設定(評価項目に含まれる)

重要なのは、施策の「内容」よりも「記録」です。いくら取り組みを行っても、記録が残っていなければ申請上で評価されません。議事録・参加者名簿・回覧記録・写真など、エビデンス(証拠)を残す習慣を徹底してください。

STEP3:申請書類とエビデンスの整備

施策を実施しながら、並行して申請に必要な書類の準備を進めます。申請は法人申請サポートシステムへのオンライン入力で行われますが、入力項目は多岐にわたるため、余裕をもって着手することが不可欠です。

数値目標と実績の対比を整理しておくと、申請時の記入がスムーズになるほか、翌年度の取り組み計画にも活用できます。「何を目標に」「どんな施策を」「どんな結果が出たか」という流れを一覧で管理するシートを作成しておくことを推奨します。

申請にあたっては、産業医や保健師などの専門職のサポートがあると、取り組みの質が高まり申請書類の精度も向上します。社内に専門職がいない場合でも、産業医サービスを活用することで、健診結果の分析やストレスチェック後の対応まで体制を整えることが可能です。

STEP4:認定取得後の活用戦略を考える

認定は取得してからが本当のスタートです。認定ロゴを求人票・会社ホームページ・名刺に掲載することで、採用活動における差別化が期待できます。特に近年は、求職者が企業の健康への取り組みを重視する傾向が高まっており、認定の有無が応募者数に影響するケースも出てきています。

また、日本政策金融公庫などの金融機関では、健康経営優良法人認定を受けた企業への融資優遇制度を設けている場合があります。取引先や顧客へのアピール材料としても活用でき、企業ブランドの向上に貢献します。融資優遇の詳細な条件・内容は金融機関によって異なるため、利用を検討する際は各金融機関に直接ご確認ください。

見落としがちな法令上の義務と認定要件の関係

健康経営優良法人の認定要件は、関連する法令の遵守を前提として設計されています。以下の法令上の義務については、特に確認が必要です。

  • 労働安全衛生法:常時10人以上の事業場では衛生推進者の選任が義務。常時50人以上では産業医の選任とストレスチェックの実施が義務となります。
  • 高齢者の医療の確保に関する法律:特定健康診査・特定保健指導の実施が保険者に求められており、従業員の受診率向上への取り組みが評価対象となります。
  • 個人情報保護法:健康情報は要配慮個人情報(特に慎重な取り扱いが必要な個人情報)に該当するため、適切な管理体制を整えることが必須です。
  • 女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法:女性の健康課題への対応や育児支援に関する取り組みが、認定要件の一部に関連します。

これらの法令を遵守したうえで健康経営の取り組みを進めることが、認定の基盤となります。「健康経営=従業員への福利厚生の充実」と捉えている経営者も多いですが、実態は法令遵守・リスクマネジメントの側面が強く、経営戦略として位置付ける視点が重要です。各法令の自社への適用可否については、社会保険労務士や弁護士などの専門家にご相談ください。

中小企業が陥りやすい5つの失敗パターンとその対策

失敗①「認定さえ取れれば終わり」と考えてしまう

健康経営優良法人の認定は毎年申請・更新が必要です。取り組みの継続性が問われるため、「取得目的」で施策を形骸化させると翌年に維持できなくなります。認定取得はゴールではなく、継続的な健康経営の「通過点」と位置付けることが長続きの秘訣です。

失敗②パートタイム・契約社員の受診を見落とす

健康診断受診率100%という要件では、正社員だけでなく一定の要件を満たすパートタイム・契約社員も対象となる場合があります。「正社員は全員受診しているから問題ない」と思っていたら、非正規雇用者の未受診が発覚して要件を満たせなかった、というケースは珍しくありません。全従業員のリストを作成し、受診状況を個別に管理する仕組みが必要です。

失敗③施策を実施したが記録がない

「健康に関するセミナーを実施した」「ウォーキングイベントを開催した」という取り組みが、記録のないまま申請に臨むと評価されません。実施した施策は必ず証拠を残してください。写真・参加者名簿・実施案内の文書・議事録など、後から見返せる形での記録管理を習慣化することが重要です。

失敗④ストレスチェックの実施で満足してしまう

ストレスチェックを実施することは大切ですが、それだけでは評価は高くなりません。実施後の集団分析(部署・チーム単位でのストレス傾向の把握)、さらにその結果を踏まえた職場環境改善策の実施まで、一連のサイクルとして取り組むことが求められます。

失敗⑤協会けんぽへの加入が遅れる

協会けんぽの健康宣言事業への加入から申請要件を満たすまでに一定期間が必要なケースがあります。「申請の直前に加入すればよい」と考えていると間に合わなくなります。認定取得を検討した時点で、まず加入状況を確認することを最初のアクションとして実行してください。

実践ポイント――中小企業が無理なく取り組むための考え方

健康経営の取り組みは、大がかりな投資がなくても始められるものが多くあります。まず取り組みやすいのは、代表者による健康経営宣言の策定と公表です。費用はほぼかからず、認定の必須要件でもあります。次に、健康診断受診率の把握と未受診者へのフォロー体制の整備を優先することで、必須要件の土台が整います。

専任担当者がいない場合は、外部の専門家を活用することが現実的な解決策です。産業医や保健師との連携、EAPサービスの導入などを組み合わせることで、少ない人的リソースでも取り組みの質を担保できます。

施策のコストが気になる場合は、まず無料・低コストで始められる取り組み(健康情報の社内共有・ウォーキングイベント・禁煙ルールの明文化など)から着手し、段階的に拡充していく方法をお勧めします。重要なのは、施策の豪華さではなく、継続的な取り組みと記録の積み重ねです。

また、取り組みを「会社からの管理」と従業員が感じないよう、健康施策の目的と意義を丁寧に伝えることも欠かせません。健康経営は従業員の健康を守ることと会社の持続可能な成長を両立させる取り組みであるというメッセージを、経営者自らが発信することが重要です。

まとめ――健康経営は「投資」として捉える

健康経営優良法人認定の取得は、手続きや準備に一定の労力を要しますが、得られるメリットは採用力の向上・融資優遇・取引先への信頼性アップなど多岐にわたります。中小企業であっても、正しい手順で計画的に取り組めば十分に達成可能な目標です。

大切なのは、認定取得を「目的」にするのではなく、従業員の健康を守り生産性を高めるという「経営上の投資」として捉えることです。従業員が健康で働き続けられる環境を整えることは、離職率の低下・医療費の抑制・業務効率の向上という形で、中長期的に企業の競争力につながります。

まず今日できることは、協会けんぽへの加入状況の確認と、健康診断受診率の現状把握です。小さな一歩を踏み出すことが、認定取得への最短ルートとなります。

よくあるご質問

健康経営優良法人の認定申請はいつ行えばよいですか?

申請時期は毎年秋頃(例年10〜11月頃)に設定されていますが、年度によって変更される場合があります。経済産業省や日本健康会議の公式サイトで最新のスケジュールを確認してください。申請の準備自体は1年以上前から始めることが推奨されます。

従業員数が少ない企業でも認定を取得できますか?

はい、取得可能です。中小規模法人部門は従業員数の下限が設けられておらず、小規模な企業でも申請できます。ただし、従業員数50人未満の場合はストレスチェックの実施義務がないため、任意実施が加点対象となる点を踏まえて取り組みを検討してください。

産業医がいない中小企業はどうすればよいですか?

常時50人以上の従業員がいる事業場では産業医の選任が法律上の義務です。それ未満の事業場では義務の対象外ですが、健康経営の取り組みを充実させるうえで産業医の活用は有効です。外部の産業医サービスを利用することで、選任義務への対応から健康経営のアドバイスまでサポートを受けることができます。

監修・運営:INTERMIND株式会社

産業医紹介・EAPサービス(外部メンタルカウンセリング)を提供する産業保健の専門会社。精神科専門医・心理士・保健師からなるスペシャリストチームが、中小企業の職場メンタルヘルス課題を支援しています。

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