【保存版】健康経営優良法人の認定を取りたい中小企業が最初にやるべき5つのステップ

「健康経営という言葉は聞いたことがあるけれど、うちのような中小企業でも取り組めるのだろうか」「申請の手続きが複雑そうで、どこから手をつければいいかわからない」──こうした悩みを抱えている経営者・人事担当者の方は少なくありません。

健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が推進する、従業員の健康管理を経営的視点で実践している法人を認定する制度です。大企業向けというイメージを持つ方も多いのですが、実際には中小規模法人部門(従業員1,000人以下が目安)が設けられており、中小企業でも十分に取り組むことができます。

本記事では、認定取得を目指す中小企業の経営者・人事担当者に向けて、現状把握から申請・取得後の維持まで、実務に即したロードマップを段階的に解説します。専任の担当者がいない、データが整っていないといった状況からでも、正しい順序で進めれば着実に認定取得へ近づくことができます。ぜひ参考にしてください。

目次

健康経営優良法人認定制度の基本を押さえる

まず制度の全体像を理解しておきましょう。健康経営優良法人認定制度は、従業員の健康保持・増進に向けた取り組みを優良な経営活動として評価・認定するものです。経済産業省が主管し、NPO法人健康経営研究会と協力して推進されています。

認定区分は大きく二つに分かれます。

  • 大規模法人部門(ホワイト500):従業員1,000人超が目安。上位500法人が「ホワイト500」として認定されます。
  • 中小規模法人部門(ブライト500):従業員1,000人以下が目安。上位500法人が「ブライト500」として認定されます。

本記事が対象とする中小企業の多くは、中小規模法人部門への申請が該当します。

申請は毎年おおむね6〜9月に受付が開始され、翌年の2〜3月に認定発表・認定証の交付が行われます。認定の有効期間は1年であるため、毎年更新申請が必要です。申請自体に費用はかかりません(外部専門家に支援を依頼する場合は別途コストが発生します)。

認定要件は5つのカテゴリで構成されています。

  • ①経営理念・方針:健康経営を経営戦略として位置づけていること
  • ②組織体制:推進担当者の設置・経営者のコミットメント
  • ③制度・施策実行:具体的な健康施策の実施
  • ④評価・改善:PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善のサイクル)の実施
  • ⑤法令遵守・リスクマネジメント:労働安全衛生法等の遵守

この5カテゴリを念頭に置きながら、以下のロードマップを参照してください。

STEP1:現状把握──申請の6〜12か月前から着手する

認定取得への第一歩は、現状の正確な把握です。いきなり施策を始めるのではなく、自社がどの要件を満たしていて、どこに課題があるかを確認するところから始めましょう。

評価シートでセルフチェックを行う

経済産業省のWebサイトでは、「健康経営優良法人認定基準」の評価シートを無料でダウンロードできます。このシートを使って、現時点での充足状況をチェックしてください。初めて確認する企業では「想定より達成できていない項目が多い」と感じるケースも多いですが、現状を正確に把握することこそが改善の出発点です。

法令遵守状況の確認

健康経営優良法人の認定要件には、労働安全衛生法に基づく法令遵守が含まれます。以下の基本的な義務の充足状況を確認してください。

  • 定期健康診断の実施(労働安全衛生法第66条):常時使用する労働者に対する年1回の実施義務
  • ストレスチェックの実施(同法第66条の10):従業員50人以上の事業場では義務、50人未満では努力義務
  • 産業医の選任(同法第13条):従業員50人以上の事業場で義務
  • 長時間労働者への面接指導(同法第66条の8):時間外・休日労働が月80時間超の労働者等が対象

特に産業医の選任が必要な事業場でまだ未対応の場合は、早急に産業医サービスの活用を検討してください。産業医の選任は法的義務であると同時に、健康経営推進の基盤となる重要な体制整備です。

保険者との連携状況を確認する

中小規模法人部門では、「協会けんぽ等の保険者と連携していること」が必須要件となっています。多くの都道府県では、協会けんぽへの「健康宣言」への参加が申請の前提条件となっています。まず自社が加入している保険者(全国健康保険協会=協会けんぽ、または健保組合)を確認し、連携・健康宣言の手続きを進めましょう。

STEP2:体制構築──申請の4〜6か月前に整備する

現状把握が完了したら、取り組みを推進するための社内体制を整えます。「誰が何をするか」を明確にしないまま進めると、施策が中途半端に終わりやすいため、この段階を丁寧に行うことが重要です。

健康経営推進担当者を選任する

認定要件では、健康経営を推進する担当者の設置が求められます。専任スタッフがいない中小企業の場合、経営者自身が担当者を兼務することも認められています。重要なのは「誰が責任を持って推進するか」を明確にすることです。

経営者が方針を明文化・表明する

健康経営は「経営者のコミットメント(関与・約束)」が評価の核心にあります。口頭での宣言だけではなく、健康経営に関する方針を文書として明文化し、社内に掲示したり就業規則に組み込んだりする形で従業員に示すことが求められます。

この方針表明文書は、後の申請でエビデンス(証拠・根拠となる記録)としても活用できるため、必ず作成・保存しておきましょう。

協会けんぽへの健康宣言を登録する

先述の通り、協会けんぽへの健康宣言への参加は多くの場合必須要件です。各都道府県の協会けんぽ支部に申し込むことで、健康宣言事業所として登録されます。登録後は協会けんぽから健康施策に関する情報提供や支援を受けられる場合もあるため、積極的に活用しましょう。

STEP3:施策の実行──申請の2〜4か月前に取り組む

体制が整ったら、具体的な健康施策を実施します。認定基準には「必須施策」と「加点施策」がありますので、まず必須施策をクリアしたうえで、自社の状況に合った加点施策を選んで実施します。

必須施策の確実な対応

中小規模法人部門で特に重要な必須対応事項は以下の通りです。

  • 定期健康診断受診率100%の達成:認定基準では受診率100%が求められます。未受診者が発生しないよう、受診勧奨の記録も含めて丁寧に管理してください。
  • 長時間労働対策:36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の締結と、時間外労働の適正管理が必要です。
  • ストレスチェックの実施:従業員50人未満の事業場では義務ではありませんが、実施することで評価が加点されます。積極的に取り組むことをお勧めします。

加点施策の選択と実施

加点施策は多岐にわたりますが、自社の従業員構成や課題に合わせて取り組みやすいものから始めましょう。代表的な加点施策には以下のようなものがあります。

  • 食生活改善:社食・仕出し弁当での栄養バランス配慮、食堂への栄養情報掲示など
  • 運動習慣化支援:ウォーキングイベントの開催、フィットネス費用の補助など
  • 禁煙対策:就業時間内禁煙・敷地内禁煙の推進、禁煙外来費用の補助など
  • メンタルヘルス対策:社内相談窓口の設置、外部EAP(従業員支援プログラム)の導入など
  • 女性の健康支援:婦人科検診費用の補助、更年期や産前産後に関する啓発活動など
  • 感染症予防:インフルエンザ予防接種費用の補助、手指衛生の促進など

特にメンタルヘルス対策については、メンタルカウンセリング(EAP)の導入が有効です。外部の専門機関によるカウンセリング窓口を設けることで、従業員が相談しやすい環境をつくりながら、健康経営の評価項目にも対応できます。

STEP4:記録・エビデンスの整備と申請書の作成

どれだけ優れた施策を実施していても、それを証明する記録がなければ申請時に評価されません。「記録・エビデンスの整備」は、実務上もっとも重要なポイントの一つです。

必ず残すべき記録の種類

  • 健康診断受診率の集計データ:従業員ごとの受診記録と全体の受診率を集計したもの
  • 各施策の実施記録:案内メール・社内掲示物・参加者名簿・実施写真など
  • 健康経営に関する社内会議の議事録:経営会議や推進担当者の打ち合わせ記録
  • 経営者の方針表明文書:健康経営方針の原本と掲示・周知の記録
  • 受診勧奨の実施記録:未受診者への個別フォローのメール・連絡履歴など

これらのデータは過去1年分を整理しておく必要があります。施策を実施するたびにリアルタイムで記録を保存する習慣をつけておくと、申請時の作業が大幅に軽減されます。

申請書の提出

記録が整ったら、経済産業省の「健康経営オンライン申請システム」から申請書を作成・提出します。申請には保険者(協会けんぽ等)による確認・承認のプロセスがあるため、保険者との連携を早期に済ませておくことが重要です。申請期限に余裕を持って準備を進めましょう。

認定取得後の維持・更新に向けた実践ポイント

健康経営優良法人の認定は1年ごとに更新が必要です。一度取得して終わりではなく、継続的にPDCAを回すことが求められます。以下の点を意識した運用体制を整えてください。

  • 年間スケジュールの策定:健康診断の実施月、ストレスチェックの実施時期、施策ごとの実施時期を年度初めに計画し、担当者を決めておく
  • データの定期的な集計・分析:健診結果の経年変化、ストレスチェックの集団分析結果などを定期的に確認し、課題を把握する
  • 施策の評価と見直し:実施した施策の参加率や効果を振り返り、次年度の計画に反映する
  • 従業員への情報共有:取り組みの結果や認定の状況を社内報・掲示板などで従業員に伝え、健康への関心を高める
  • 経営会議での定期的な報告:健康経営の推進状況を経営者に定期的に報告し、継続的なコミットメントを確保する

なお、認定を維持するためには前年度よりも高い水準が求められるケースもあります。認定取得はゴールではなく、従業員の健康と会社の持続的な成長を支える取り組みの出発点として位置づけることが大切です。

まとめ

健康経営優良法人認定の取得は、専任担当者がいない中小企業でも、正しい手順で段階的に進めれば十分に実現できます。本記事で紹介したロードマップを改めて整理すると、以下の流れになります。

  • 申請6〜12か月前:評価シートによる現状把握・法令遵守状況の確認・保険者との連携確認
  • 申請4〜6か月前:推進担当者の選任・経営者による方針表明・協会けんぽへの健康宣言登録
  • 申請2〜4か月前:必須施策の対応(健診受診率100%・長時間労働対策)と加点施策の実施
  • 申請直前〜申請時:エビデンスの整備・オンライン申請システムからの提出
  • 認定取得後:PDCAサイクルの継続・翌年の更新申請に向けた体制維持

「何から手をつければいいかわからない」という状況から抜け出すためには、まず評価シートをダウンロードして自社の現状をチェックすることから始めてみてください。一つひとつのステップを着実に積み重ねることが、認定取得への確実な道筋となります。

従業員の健康は企業の最大の資本です。健康経営への取り組みは、認定取得という形を超えて、人材の定着・生産性の向上・企業ブランドの向上など、さまざまな形で経営に貢献します。ぜひ今日から第一歩を踏み出してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 従業員が10人未満の小規模企業でも健康経営優良法人の認定を取得できますか?

はい、取得できます。中小規模法人部門には従業員数の下限は設けられていません。ただし、従業員規模が小さいほど「組織体制」の要件(推進担当者の選任など)を経営者が兼務で対応する形になることが多く、またストレスチェックが義務ではない(50人未満は努力義務)ため、加点施策での対応が重要になります。まず協会けんぽへの健康宣言への参加と、評価シートによる現状確認から始めることをお勧めします。

Q2. 健康診断の受診率100%を達成するために、特に注意すべき点はありますか?

受診率100%の達成には、受診案内の徹底と未受診者への個別フォローが鍵になります。特に、パートタイマーや契約社員など正社員以外の労働者も、一定の条件(週30時間以上勤務など)を満たす場合は健康診断の対象となります。対象者の範囲を正確に把握したうえで、受診期限が迫った従業員への個別連絡の記録を残しておくことが申請時のエビデンスにもなります。また、受診機会を確保するために健診機関の予約をまとめて行う、受診に要した時間を勤務時間として扱うなどの環境整備も有効です。

Q3. 申請にあたって社労士や外部専門家に依頼する必要がありますか?

必須ではありません。申請自体は経済産業省のオンライン申請システムから行うことができ、評価シートや記入例も公開されているため、内部の担当者だけで対応することも可能です。ただし、法令遵守状況の確認(労働安全衛生法上の義務への対応)や施策設計については、社会保険労務士や産業医などの専門家のサポートを受けることで、漏れや誤りのリスクを減らすことができます。特に健康診断の管理体制や産業医との連携が未整備の場合は、専門家への相談が有効です。

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監修・運営:INTERMIND株式会社

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