【2024年最新】産後パパ育休とは?制度の概要から企業の手続きまで人事担当者が知っておくべき全知識

2022年10月、「産後パパ育休(出生時育児休業)」という新しい制度が施行されました。男性が子どもの誕生直後に休業を取りやすくすることを目的として育児・介護休業法に追加されたこの制度は、既存の育児休業とは別の仕組みとして設計されています。

しかし、「制度があることは知っているが、育児休業と何が違うのかよくわからない」「男性社員から申請があったとき、何をすればいいのか不安だ」という声は、中小企業の経営者・人事担当者から今もよく聞かれます。また、事業主には周知・意向確認の義務が課されており、対応を放置していると法令違反になるリスクもあります。

本記事では、産後パパ育休の制度概要から手続きの流れ、よくある誤解まで、企業として押さえておくべきポイントを体系的に解説します。

目次

産後パパ育休とは何か:通常の育児休業との違い

産後パパ育休の正式名称は「出生時育児休業」といいます。根拠法令は育児・介護休業法(以下「育介法」)第9条の2から第9条の5です。名称に「パパ」と入っていることからも分かるとおり、主に男性労働者が子の出生直後に取得することを想定して設けられた制度です。

既存の育児休業と混同されやすいのですが、産後パパ育休は育児休業とは独立した別の制度です。両者の主な違いを整理すると以下のようになります。

  • 取得できる期間:産後パパ育休は子の出生後8週間以内、育児休業は原則として子が1歳になるまで
  • 最大取得日数:産後パパ育休は最大28日間、育児休業は原則1年間
  • 申請期限:産後パパ育休は原則として休業開始の2週間前まで(労使協定があれば1週間前まで短縮可能)、育児休業は原則1ヶ月前まで
  • 分割取得:産後パパ育休は2回まで分割して取得できる
  • 休業中の就業:産後パパ育休は労使協定の締結と本人の同意があれば一部就業が可能(育児休業中は原則不可)

特に重要な点として、産後パパ育休と育児休業は同時期に組み合わせて取得することができます。たとえば、出生直後に産後パパ育休(最大28日)を取得したうえで、その後に育児休業に入るという使い方が可能です。男性がより柔軟に育児に参加できるよう、複数の選択肢が用意されているわけです。

企業が果たさなければならない3つの義務

産後パパ育休の施行に合わせて、事業主には新たな義務が複数課されました。「従業員が申し出てきたときに対応すればいい」と考えていると法令違反になる可能性があるため、義務の内容をしっかり確認しておく必要があります。

①制度の個別周知義務

従業員本人または配偶者が妊娠・出産を申し出た場合、事業主は当該従業員に対して産後パパ育休を含む育児休業制度の内容を個別に知らせなければなりません。周知の方法は、面談・書面交付・電子メールなど複数の方法が認められていますが、周知したという事実を記録に残しておくことが重要です。

「本人が希望しなければ教えなくてよい」という理解は誤りです。従業員側から問い合わせがない場合でも、事業主側から能動的に周知する義務がある点を認識してください。

②意向確認義務

個別周知と合わせて、事業主は育休を取得するかどうかの意向を個別に確認することも義務付けられています。これは取得を強制するためのものではなく、従業員が制度を知ったうえで自分の意思を表明できる機会を確保するための仕組みです。

意向確認は必ず記録に残してください。口頭のみで済ませてしまい、後日「そんな説明は受けていない」「確認されなかった」といったトラブルに発展するケースがあります。確認書に署名してもらうか、メールで記録を残すなど、証拠が残る方法を選ぶことを強くおすすめします。

③雇用環境整備義務

育休を取得しやすい職場環境をつくるために、事業主は以下のいずれか1つ以上の措置を実施しなければなりません。

  • 育児休業に関する研修の実施
  • 育児休業に関する相談窓口の設置
  • 育児休業取得事例の収集と提供
  • 育休取得促進に関する方針の周知

なお、常時雇用する従業員が1,000人を超える企業は、育児休業の取得率を年1回公表することも義務となっています。中小企業はこの公表義務の対象外ですが、他の3つの義務は規模にかかわらず適用されます。

給付金と社会保険料:企業が知っておくべき金銭面の仕組み

産後パパ育休中の従業員には、雇用保険から出生時育児休業給付金が支給されます。給付額は休業開始時賃金の67%相当(28日間を上限として計算)です。

この給付金を受けるためには、事業主がハローワークに申請手続きを行う必要があります(原則として事業主経由での申請)。申請期限は休業終了日の翌日から起算して2ヶ月以内です。期限を過ぎると原則として遡及申請ができないため、スケジュール管理を徹底してください。

申請に必要な主な書類として、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書があります。初めて申請する場合は、ハローワークへ早めに相談することをおすすめします。

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)については、育児休業期間中は労働者・事業主の双方の負担分が免除されます。ただし、免除を受けるためには健康保険組合または年金事務所への届出が必要です。この届出を忘れると、会社と従業員の双方が本来免除されるはずの保険料を負担し続けることになるため、見落とさないよう注意してください。

申請から職場復帰までの実務フロー

産後パパ育休に関して、企業として行うべき手続きの大まかな流れを整理します。

ステップ1:妊娠・出産の報告を受けたら周知・意向確認を実施する

従業員本人または配偶者が妊娠・出産を申し出た時点で、育児休業制度の個別周知と意向確認を速やかに行います。書式があらかじめ整備されていると、担当者の負担が軽減されます。

ステップ2:従業員が休業開始の2週間前までに申出を行う

取得の意思がある従業員は、休業を開始する日の2週間前までに書面で申し出ます(労使協定があれば1週間前まで短縮可)。申出書の様式を社内で事前に準備しておくとスムーズです。

ステップ3:社会保険料免除の届出を行う

休業が始まったら、速やかに健康保険組合または年金事務所に社会保険料免除の届出を行います。

ステップ4:給付金の申請を行う

休業終了後、2ヶ月以内にハローワークへ出生時育児休業給付金の申請を行います。必要書類の収集に時間がかかる場合もあるため、早めに準備を始めることが大切です。

ステップ5:職場復帰の準備を整える

休業から戻る従業員が円滑に業務に復帰できるよう、上司や同僚との事前の情報共有、業務の引継ぎ計画の作成などを行います。復帰後に孤立感を生まないよう、配慮ある対応が求められます。

中小企業がとくに注意したい誤解と失敗パターン

産後パパ育休に関しては、企業側の誤解や準備不足から生じるトラブルが報告されています。代表的なものを確認しておきましょう。

「有期雇用社員は取得できない」という誤解

有期雇用の従業員であっても、申出時点で子が1歳6ヶ月になるまでに労働契約が満了することが明らかでない場合は、産後パパ育休を取得できます。パートタイムや契約社員の申請を一律に断ることは法令違反となる場合があります。

「業務が忙しいから取得を控えてほしい」という発言

育介法は、育児休業の取得を理由とする不利益取扱いを明確に禁止しています。「繁忙期だから」「あなたの代わりがいないから」といった理由で取得を妨げる言動は、不利益取扱いに該当する可能性があり、行政指導や訴訟リスクにつながります。上司・管理職にもこの点を周知することが重要です。

就業規則・育児介護休業規程の未整備

産後パパ育休を適切に運用するためには、就業規則および育児介護休業規程に制度の内容を明記することが必要です。規程を整備しないまま運用することは法令違反となるほか、従業員からの信頼を損なうリスクもあります。まだ改定が済んでいない場合は、社会保険労務士等の専門家に相談しながら早期に対応することをおすすめします。

休業中の就業に関するルール不備

産後パパ育休中に一部就業を認める場合は、労使協定の締結が必須です。また、就業させる際には毎回本人の同意を書面で取得する必要があります。就業できる日数の上限は休業期間の半分以下と定められています。このルールを守らずに就業させると、産後パパ育休としての扱いが認められなくなる場合があります。

実践ポイント:今すぐ取り組むべき対応

制度の理解を深めたうえで、企業として優先的に取り組むべきアクションを整理します。

  • 就業規則・育児介護休業規程の改定:産後パパ育休について明記されているか確認し、未対応であれば速やかに整備する。社会保険労務士への相談も有効です。
  • 周知・意向確認の書式と運用フローの整備:妊娠・出産の報告があった際に、誰が・いつ・どのように周知と意向確認を行うかを社内ルールとして明確にしておく。
  • 記録の徹底:周知・意向確認を行った日時・方法・内容を必ず記録に残す。トラブル防止に直結します。
  • 管理職への研修:現場マネージャーが制度を正しく理解し、取得を阻む言動をとらないよう、定期的な研修や情報共有の場を設ける。
  • 代替要員・業務分担の検討:休業中の業務をあらかじめ整理し、特定の社員への過剰な負担集中を避けるための計画を立てておく。
  • 手続きのスケジュール管理:給付金の申請期限(休業終了翌日から2ヶ月以内)、社会保険料免除の届出など、期限のある手続きをリスト化して管理する。

まとめ

産後パパ育休(出生時育児休業)は、2022年10月から施行された制度で、子の出生後8週間以内に最大28日間取得できる育児休業とは別の仕組みです。申請期限が短く(原則2週間前)、休業中の一部就業も条件付きで認められるなど、柔軟な取得が可能な点が特徴です。

企業には個別周知・意向確認・雇用環境整備という3つの義務が課されており、対応を怠ることは法令違反に該当します。また、就業規則の未整備や意向確認記録の不備、給付金申請の期限超過など、実務上の落とし穴も少なくありません。

中小企業では代替要員の確保や業務調整に困難を感じるケースも多いですが、従業員が安心して制度を利用できる職場環境の整備は、長期的な人材確保や職場への信頼形成につながります。まず就業規則の確認と周知・意向確認フローの整備から着手し、不明点があれば社会保険労務士やハローワークへの相談を活用することをおすすめします。

よくある質問

Q1: 産後パパ育休と通常の育児休業は、結局どちらを取得すればよいのですか?

両者は独立した別の制度で、同時期に組み合わせて取得することができます。例えば、出生直後に産後パパ育休(最大28日)を取得した後に育児休業に入るなど、より柔軟に育児に参加できるよう複数の選択肢が用意されています。

Q2: 従業員から育休申請がない場合でも、企業側から説明する必要があるのですか?

はい、企業側から能動的に説明する義務があります。従業員本人または配偶者の妊娠・出産申し出時に、事業主は産後パパ育休を含む育児休業制度の内容を個別に周知する必要があり、周知したという事実を記録に残さなければなりません。

Q3: 産後パパ育休の給付金申請はいつまでにすればよいのですか?

事業主がハローワークに行う申請の期限は、休業終了日の翌日から起算して2ヶ月以内です。期限を過ぎると原則として遡及申請ができないため、スケジュール管理が重要です。

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